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少数精鋭主義で世界を変える!信越化学(SHINETSU)への長期投資を考える

こんにちは!TAKAです。

今回は世界有数の化学素材メーカー、信越化学(SHINETSU)への長期投資について考えてみました。

信越化学は2024年1月8日現在で、株価5637円。時価総額11兆4100億円。(化学業界で日本一)

PER21.6倍。PBR2.66倍。配当利回り1.77%。ROE19.68%。ROA16.13%。自己資本比率81.8%です。

【この記事を読んで得するポイント】

  • 信越化学とは何だ?という疑問を解決。

  • 信越化学の事業について詳しくなる。

  • 信越化学が製造している製品について詳しくなる。

  • 信越化学の業績について詳しくなる。

  • 信越化学の今後の成長性について詳しくなる。

  • 信越化学の競合他社との比較について詳しくなる。


化学素材メーカー中で圧倒的な収益力!世界のSHINETSU

信越化学は日本の化学メーカーの中で売上高こそ、2兆8000億円で3位ですが、営業利益率が他メーカーに比べて群を抜いています。

2023年3月期の営業利益9982億円、売り上げ高営業利益率35.5%、当期純利益が7082億円。

総合化学業界 売上高ランキング

こちらの表を見ると一目瞭然。

時価総額は売上高1位の三菱ケミカルGに比べて1桁大きく、11兆円。

日本の化学素材メーカーの中で頭一つ抜け出た存在です。

信越化学は総資産5兆円、利益剰余金3兆5000億円と「財務力が強い上場企業」300社ランキングでキーエンスと並んで5位に入ったほどの実力。(※参考 https://toyokeizai.net/articles/-/647411?page=2)

2023年に1000億規模の自社株買いを2回行った事からも、株主還元に積極的で財務力の高い企業だという事が伺えます。

世界の総合化学ランキング

今度は世界に目を向けて、総合化学メーカーの売り上げ高上位ランキング(2022年)を見てみましょう。

  1. BASF(ドイツ)・・・13兆5,690億円

  2. 中国石油化工・・・9兆7,343億円

  3. ダウ(ダウ・ケミカル)・・・8兆2,594億円

  4. サウジ基礎産業公社・・・7兆795億円

  5. エクソンモービル・・・6兆9,320億円

【世界の時価総額(2024年)】

  1. BASF(ドイツ)・・・約6兆4000億円

  2. 中国石油化工・・・約12兆6500億円

  3. ダウ・ケミカル・・・約5兆5200億円

  4. サウジ基礎産業公社・・・9兆3800億円

  5. エクソンモービル・・・57兆円

なお、5番目のエクソン・モービルはアメリカ最大手のエネルギー関連企業で,石油メジャーの筆頭です。

世界の総合化学メーカーの時価総額と比べても、信越化学の11兆円はかなり高い水準。

その収益力の高さは今や世界の化学メーカーたちが羨むほどです。

信越化学の取り扱っている製品は何か?

信越化学の事業

信越化学には大きく分けて4つの事業があります。

  1. 生活環境基礎材料

  2. 電子材料

  3. 機能材料

  4. 加工・商事・技術サービス

①の生活環境基礎材料は上下水道のインフラ、住宅、農業、生活用品など生活を支えるのに欠かせない「塩ビ(塩化ビニール)」を製造しています。
塩ビの最大手として世界の需要を満たしています。

②の電子材料は半導体の基幹材料であるシリコン・ウェハーを始め、半導体の製造に欠かせない「フォトレジスト」「フォトレストブランクス」「封止材料」などを作っています。
シリコン・ウェハーのシェアは世界1位。2位はこれも日本のSUMCO。

③機能材料は幅広い産業で使われるシリコーン、医薬品などで使われる「セルロース誘導体」などを作っています。

④加工・商事・技術サービス塩ビ・シリコーンなどの加工技術とエンジニアリングの活用で課題解決に応えています。

有名なのは塩ビとシリコンウェハーですね。

世界で活躍するSHINETSU

信越化学

1960年代に他社に先駆けて海外に進出、今日では売上の7割超を海外が占めています。
とりわけ塩ビ事業では、1974年に操業を開始した米国子会社のシンテックが生産能力を創業時の30倍にまで拡大。世界最大の塩ビメーカーに成長しています。

https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/individual/about/#global

信越化学の海外売上高は実に80%超。

特に塩ビを製造・販売する米国子会社のシンテックが有名です。

米国シンテック社に関しては、信越化学のHPのこちらを参考にしてください。

1973年の創業からやがて半世紀を迎える米国シンテック社。
塩ビという汎用品(コモディティ)の世界で、創業時米国第13位から世界1位に

https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/individual/special-class1/

シンテックが設立されたのが1973年。

当時、米国ロビンテック社と信越化学の50対50出資の合弁企業でした。

設立から2年後の1975年、信越化学の取締役に就任したばかりだった金川千尋氏が信越化学の全権を委任され、米国ロビンテック社と買収交渉に臨みます。

(※この買収劇の詳細は「利益力世界一を作ったM&A-企業価値最大化に賭けた男たち-」という本にくわしいです。)

金川千尋氏は後に信越化学の名経営者と呼ばれた人ですが、このシンテック社買収が金川氏の経営者としての栄光の始まりとなりました。

金川千尋の最強の経営哲学

金川千尋氏は1990年から2010年まで社長を務め、信越化学の今日の躍進の原動力となりました。

金川氏の特徴は、現場の需要から得たニーズや情報による迅速な意思決定と、潤沢な資金による設備投資や企業買収、また、徹底した合理化や少数精鋭主義にあった。合理化においては中期計画や組織改革、コーポレート・アイデンティティー活動などを「ムダである」として廃止。社長就任当時はバブルの頃で新卒を600人ほど採用していたが、それもゼロした。会議も3分の1に減らし、役員会議の回数も時間も減らした。まさに「大改革」といえる金川時代の始まりである。

https://compass.labbase.jp/articles/262

その金川氏の経営哲学の極意と言えるキーワードが2つあります。

  1. フル生産・フル販売

  2. 少数精鋭主義

フル生産・フル販売

好不況に関わらず、つくったものは全て売り切って、つねに工場を100パーセント稼働させます。

フル販売ですから在庫はゼロです。

少数精鋭主義

あるお客さまから、「シンテックからは営業マンが1人しか来ない。他社は営業担当以外にマーケティング担当副社長だとか、5人も6人も連れて来る。あなたの会社は、顧客である当社を軽く見ているのか」と。

確かに、シンテックでは営業マンが1人でお客さまを訪問します。それに加え、価格交渉から契約書の締結まで、1人がなんでもやります。だからこそ、担当者がお客さまのことを隅々まで知ることができ、対応のスピードも速い。案件や用件が下から上に話が伝わるのに3日かかるとか、そういう時間のロスは一切ありません。
この御不満には、「営業に5人も6人も連れて来る、その経費をあなたの会社は負担したくないはず」と申し上げました。どちらがお客さまのメリットになるのか。そういうことを相手にご理解いただき、関係を築いてきました。

https://froggy.smbcnikko.co.jp/9660/

『シンテックの主力製品である塩ビは、汎用品で製品に差がつけにくいため、コスト競争力が売上増大のカギになります。そこで、シンテックでは「合理的な経営」を徹底的に追求しました。合理的な経営の基本は「少数精鋭主義」にあります。シンテックの営業担当者は必要最小限の人員で、経理及び財務社員はたった2人で、工場長は人事、購買、総務などを1人で担当しています。また、いわゆる「ジョブローテーション」もあまり行いません。一つの仕事をできるだけ長くやらせることで、専門知識のみならず、経営において大事な判断力や執行能力などが身につくようになるからです。』

 一般的には、ジョブローテーションをあまり行わず、同じ仕事を同一の人間が長く続けることは、効率的ではあるでしょうが、ガバナンス的には好ましくないとされます。中枢の人間が病気や事故で欠けると、業務の持続可能性に懸念が生じますし、特定の人間に仕事や権限を集中させると、相互牽制が効かなくなり、不祥事の温床になりやすいからです。そうした弊害を防止するためには、経営トップの監視・管理能力がよほどしっかりしていなくてはなりません。わずかの異変も見逃さないトップが存在すれば、弊害を除去しながら効率性を徹底的に追求することが可能です。中小企業ならトップが経営の隅から隅まで把握して、管理するということはあるでしょうが、信越化学のような大企業でそれを行うのは至難の業です。それができるというところが金川氏のカリスマの、カリスマたるゆえんなのでしょう。

https://www.ag-tax.or.jp/insight/detail.html?id=0862

米国流の徹底した合理主義と、「誠実でなければどれほど仕事ができてもどこかで破綻するし、温かな心がなければ人はついてこない」という信念。

金川千尋氏の経営哲学は今もなお受け継がれています。
(※金川千尋さんは2023年1月1日に肺炎のため永眠。)

金川千尋氏の自著「常在戦場-金川千尋の100の実践録-」も今の信越化学を知る上で良い本です。

信越化学の業績

信越化学の業績

信越化学の業績は2023年が突出して高いですが、今期は若干の減益を見込んでいます。

しかし、長期的にみれば右肩上がりの成長曲線を描いてる典型的なグロース企業です。

信越化学の利益率

突出して高いのは営業利益率。

直近では30%を超えており、こちらの化学メーカーの営業利益率ランキング上位に入っています。

信越化学の財務

貸借対照表

一目で目を引くのはその純資産(自己資本)の比率の高さ。

直近の自己資本比率は81.8%と非常に安定しています。

キャッシュフローの推移

信越化学のキャッシュフロー

順調に営業キャッシュフローが伸びているのが分かります。

現金も2023年3月期で1兆2473億円と積み上がってます。

信越化学の競合他社比較

競合他社としては、三菱ケミカルホールディングス、三井化学、住友化学、旭化成、東レなどが挙げられます

https://iroots.jp/research/9316/

売り上げ高比較(2023年度)

  1. 三菱ケミカルグループ・・・4兆,6345億円

  2. 住友化学・・・2兆8953億円

  3. 信越化学工業・・・2兆8088億円

  4. 旭化成・・・2兆8220億円

  5. 東レ・・・2兆4893億円

  6. 三井化学・・・1兆8795億円

営業利益比較(2023年度)

  1. 信越化学工業・・・9982億円

  2. 旭化成・・・2,095億円

  3. 三菱ケミカルグループ・・・1827億円

  4. 東レ・・・1,090億円

  5. 三井化学・・・780億円

  6. 住友化学・・・マイナス309億円

時価総額比較(2024年1月15日)

  1. 信越化学工業・・・11兆9000億円

  2. 旭化成・・・1兆5500億円

  3. 三菱ケミカルグループ・・・1兆3600億円

  4. 東レ・・・1兆2200億円

  5. 三井化学・・・8919億円

  6. 住友化学・・・5941億円

日本の化学業界では、信越化学が飛びぬけて利益率が高く、有望です。

しかし、売り上げ高では他の国内5社とも拮抗していて、とくに三菱や住友など旧財閥系が強いところが特徴として挙げられます。

信越化学の強み

信越化学

信越化学の最大の強みは何と言っても、少数精鋭主義です。

上記の国内化学5社と従業員数を比較してみましょう。

従業員数(連結)

  1. 信越化学工業・・・25,717人

  2. 三菱ケミカルグループ・・・68,639人

  3. 住友化学・・・33,572人

  4. 旭化成・・・48,897人

  5. 東レ・・・48,682人

  6. 三井化学・・・18,933人

一番従業員数が少ないのは三井化学ですが、三井化学の売り上げ高は信越化学の約66%なので、従業員一人あたりの売り上げ高は信越化学の方が高いです。

従業員一人あたりの売り上げ高

  1. 信越化学工業・・・1憶921万円

  2. 三菱ケミカルグループ・・・6751万円

  3. 住友化学・・・8624万円

  4. 旭化成・・・5796万円

  5. 東レ・・・5113万円

  6. 三井化学・・・9895万円

次に営業利益ではどうでしょうか?

従業員一人あたりの営業利益

  1. 信越化学工業・・・3881万円

  2. 三菱ケミカルグループ・・・266万円

  3. 住友化学・・・マイナス92万円

  4. 旭化成・・・428万円

  5. 東レ・・・223万円

  6. 三井化学・・・411万円

信越化学の圧倒的な収益力の高さが伺い知れるのではないでしょうか。

信越化学は上述したようにフル生産・フル販売で在庫を持たない事。

それから少数精鋭主義という徹底した合理化によって際立った利益体質の企業へと変貌しました。

それはシンテック買収から始まった金川千尋氏の経営改革があっての事です。

その金川イズムが結実したのが2023年3月度の決算。

実に35.54%もの売り上げ高営業利益率を達成したのです。

信越化学の弱み

これほど強い事業構造を持つ信越化学といえども、弱みといえるものがあります。

それは技術イノベーションによる産業構造の変化に対応できないケースです。

例えば、シリコンウェハーの世界シェアは現在、信越化学が1位で31.0%(2020年)、2位がSUMCOで23.8%ですが、次の半導体の主力といわれる次世代パワー半導体に使われる新素材についてはどうでしょう?

新しい半導体材料として、SiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)の2種類が「次世代パワー半導体」として有力視されています。

次世代パワー半導体の材料として有力視されているのはSiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)ですが、信越化学は現在、GaN(窒化ガリウム)を用いたパワー半導体に使われる新素材をOKI(沖電気工業株式会社)と協同で開発しています。

省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとして注目されるGaN(窒化ガリウム)を用いたパワー半導体。その本格的な普及のための課題解決を実現する新技術を、日本企業2社のタッグが実現した――。OKIと信越化学工業は、従来比9割減の低コストで「縦型GaN」パワーデバイスを実現することが可能となる新技術を開発。2023年10月5日、共同開催した記者会見で、その技術の詳細や開発の経緯、今後の展望を語った。

https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2310/18/news057.html

富士経済が発表した「2023年版次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来」によると、従来のシリコンパワー半導体の耐圧性や低損失性の限界を超えた次世代パワー半導体の世界市場は2035年、2022年比で31.1倍と大きく成長し、5兆4485億円に達する見込みだという。この次世代パワー半導体で現在実用化が進んでいるのが、SiC(炭化ケイ素)とGaNで、市場の拡大をけん引する車載分野では、高電圧/大電流に対応可能なSiCが主流となっていて、GaNはモバイルの急速充電器をはじめとした民生分野が中心となっている。

https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2310/18/news057.html

次世代パワー半導体の市場は非常に大きく、今後成長する見込みなので注目したいところ。

信越化学はシリコンウェハーを製造しつつも、新素材の開発にも着手しています。

技術イノベーションによる、シェアの変動リスクこそありますが、信越化学の化学素材メーカーとしての実力は高く評価されています。

また、沖電気のような電気メーカーや台湾のITRI(財団法人工業技術研究院)、住友林業などと協同で素材の開発を行っており、今後も目を離せません。

信越化学の株価

信越化学の株価

テクニカル指標は上段が単純移動平均線(3本)、下段がMACDです。

10年間の長期チャート(月足)では現在の株価はかなり高値の水準にあると言えますが、株価は「高い高い」と言いながらスルスルとどこまでも上がっていくものです。

株価がどこまで上がるかは誰にも分かりません。

折しも日経平均株価がバブル時最高値の3万8915円を更新するのではないか、と言われている最中。

そんな中、信越化学を推す理由としては、

  1. 利益率が非常に高く、成長のための設備投資をしっかり行っている。

  2. 半導体材料や住宅向け材料など長期的に安定的な需要がある製品を作っている。

  3. 財務が強く、株主還元のための自社株買いに積極的。

  4. 増配傾向にあり、しっかりと株主に向き合っている。

  5. 経営哲学がしっかりしており、揺るがない経営方針を持っている。

今後、利益確定売りで株価が押す場面もあると思うので、押し目で買いつつ、長期で積み立てていく投資スタンスをお勧めいたします。

以上が僕の投資判断です。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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ではまた、株式関連の記事でお会いしましょう!


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