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夏の雪国


夏の札幌はそこそこに暑く、かといって関西のような狂った蒸し暑さは皆無で、昼間部屋の中にいるとクーラーを付けようかつけまいか、そんな狭間で揺れる。


これからさらに気温は上がっていきそうである。でも暑いばかりでもないのが札幌。不意に長袖が欲しくなるほどに強風の時もある。曇り空の、湿気のない夏はこれまで一度も経験したことのないもので、半袖に短パンの自分は、むき出しにした脱毛の知らない四肢を思わず庇うばかりだったりする。そんな生活を早くも3ヶ月目にしてむかえることとなる。


去年はリゾートバイトに明け暮れる一年であった。馴染み深い関西を飛び出して、何が楽しいのかあちらこちらに移動して、たどり着いた先で仕事して、馴染んできた頃にまた別のエリアへ移動してまた仕事して、そんなことの繰り返しでおよそ一年間を過ごしたのだ。その経緯の果てに、自分は気づいたら札幌に移住していたのだった。



・・・いや、気づいたら、は流石に言い過ぎかもしれない。ちゃんと自分の脳で考えて、考えあぐねて、北海道札幌市に移住しようと決めたのだった。札幌に決めた理由としては、過去に一度旅行で行ったことのあるという、たったそれだけの経験のみである。なんとも浅はかで薄いペラペラな理由である。しかし理由なんてものはどうだっていい。問題は自分の中に存在している理念を実行に移せるかどうかである。


リゾートバイトの派遣契約も無事終了したのを皮切りに、仕事もないままに自分は新千歳空港にたどり着いたのだった。繁忙期であるゴールデンウイークが終わってすぐの行動だったこともあって、その時を振り返るとあまりにも目まぐるしすぎて時系列をうまく追うことができない。だからまともな神経で思考できていなかった気がする。


しかし、肌寒いこの北海道に来てしまったことに後悔はない。ただあまりにも自分ごととして捉えるのが難しすぎる。まるで他人事のようで、誰か自分と全く関係のない人の話を書いているような感覚に陥る。しかし自分は紛れもなく札幌市中央区のマンスリーマンションに一室でこれを書いている。そして無事仕事を見つけることができて、とりあえずは首の回らないガチガチの首を皮一枚で保ちながら生活を続けている。そして札幌生活が3ヶ月目を迎えようとし、あと一週間でマンスリーマンションから本格的な賃貸のマンションへ引っ越す予定となっている。


札幌へ来たはいいものの、自分には金がない。金がなければどこにも行けない。見知らぬ土地で、ただ仕事をして暮らす毎日が続いていくことへの漠然とした不安がある。それを取り除くためにこれを書くことにした。これは自分が狂うことなく健全に札幌生活を全うしていくための記録のようなものだ。週2回は書いていきたいと思っている。


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