見出し画像

儲け過ぎたらいけない?〜会話が噛み合わない音楽業界とIT業界の話〜

ITなんだか、ギョーカイなんだかいつも立ち位置がわからなくなるたじまるです。

前の2つの記事があまりにも、セミナーみたいな内容だったので(講演資料作るみたいに時間が結構かかっちゃいました)ここからは、ゆるーい感じでやっていきたいと思います。

音楽業界のDXが急速に進んでいる話は、前の記事でも、先日のclubhouseでもお話しましたが、今回は、DXとは切っても切れない、IT業界と音楽業界・芸能界との文化の違いについてです。

よくIT会社の方と、取引先のギョーカイの方がイマイチ噛み合っておらず、トラブルになっているのを目にします。

IT会社側から、儲かるための施策提案をしたのに、ギョーカイ側がそれを実施しようとしないので、なんで協力してくれないんだ?いやいや、そんなことできないでしょ?となっているケースです。

どちらもそれぞれの業界の中での正論を話しているのですが、それぞれの業界の常識というか、言語が異なるので、うまく噛み合わないのです。

IT業界とギョーカイは、そもそも言葉が違います。死語になりつつある、ラーメンをメンラー、タクシーをシータクといういわゆるギョーカイ用語の話ではありません。文化の話です。

これも、もしかしたら、数十年後には、なくなっているかもしれませんが、少なくとも今は、ギョーカイは、義理と人情で成り立っています。

対して、IT業界は非常にロジカルです。経済合理性、効率がモノを言う世界です。いわゆるカネの論理。カネの論理が悪いと言っているわけではありません。どっちがいいとか悪いとか、白黒の話ではなく、主義の問題だと僕は思っています。

僕もギョーカイで仕事をするまでは、完全なリバタリアンでした。今は、リバタリアンとコミュニタリアンのハイブリッドになっています。これこそが、僕らの会社がITでありながら、ギョーカイと仕事ができている最大の理由だと思います。

ITのみならず、ほとんどの業界が「カネの論理」であるとすれば、ギョーカイは「ヒトの論理」で動く業界です。それは、ギョーカイの中心に位置するアーティストやタレントが、モノでも情報でもなく、血の通った、僕たちと同じ、人間であるということが大きな理由だと思います。

IT業界の方々が揉めるとき、大抵は、「儲かるからいいじゃないですか?なんで、やらないんですか?やりましょうよ」が原因です。

ギョーカイは、ときに、経済合理性とは違う論理で動きます。

儲かるかもしれないけど、かっこ悪いからやらない。

儲かるかもしれないけど、ファンが疲れてしまうからやらない。

経済合理性から考えたら、ありえないんです。多くのフリーミアムのゲームがそうであるように、顧客のお金が枯渇するまで、ガチャを回し続けさせることが経済合理性から考えたら正解に決まっているんです。

コンサートの最前列は、オークションにして、一番高い金額を出した人が落札したらいい。

でも、それをやらないのが、(将来どうなるかわかりませんが、少なくとも今は)ギョーカイなんです。

昔、今でも、すごくお世話になっているプロダクションの社長と話していたときに、「今回のツアーは全部チケットが売れても赤字なんです。」と言われて、思わず、「だったらチケット代を値上げしたらいいじゃないですか」と言ったことがあります。

僕もそのツアーにご招待いただいて、拝見させていただいたのですが、すごく豪華な演出で、これをこの価格で観れるのはうれしいけど、採算合うのかな、もっと高くてもいいと思ったので、反射的に言葉が出てしまったのですが、それに対する社長の返事は

「今回のツアーは、彼女(うちのアーティスト)がやりたい表現、ファンに伝えたいことを全部実現させてやりたいと思ってやったものなんです。だから、それでいい。

ただ、チケット代を上げることはできない。

彼女のファンは、中高生が中心なんです。中高生がお小遣いで観に来られるツアーでなければ、だめなんです。だから、赤字でも、チケット代を上げることはできない。」

経済合理性から考えたら、ありえない話です。ですが、これがギョーカイのい論理なんです。(あくまでも僕の私見です)

そして、この論理が僕にとっては非常に納得感のあるものでした。

もう一つ、経済合理性の欠く判断として、ギョーカイで大切なもの。

それは、かっこよさ。

儲かるかもしれないけど、かっこ悪いじゃん。

かっこ悪いから、やらない。

これって、ロックでしょ?音楽としてのロックかどうか別として、これってロックじゃないですか?

ここで、この記事を読んで頂いているみなさんに質問です。

僕らが考える、ダフ屋がダメな理由なんだと思いますか?

僕は、ずっとダメな明確な理由がわからなかったのですが、その答を(これは僕の答ですが)マイケル・サンデルの本で見つけました。

僕の答えはこれです。
「ダフ行為によって、本来の公演の質そのものを変えてしまうから」

みなさんはどう思われますか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?