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スペイン巡礼

二回ほど歩いた。

フランス国境からスペイン北西部にあるキリスト12使徒のひとりのお墓があるサンチャゴ・デ・コンポステーラとその先の海岸まで。

二回目の巡礼のことだった。

歩き疲れて松林の陰で小一時間お昼寝をとった後だった。

ふと思った。

なんでぼくはこんなにあくせくと歩いているのか?目的地にたどりつくことだけに目を奪われて。

全部自由にしていいはずなのに。もっと景色や食事や巡礼ですれ違う人たちとの会話を楽しめばいいのに。

そして、はたと気づいた。ぼくのこの脅迫的巡礼の仕方は、ぼくのこれまでの生き方の縮図なんだと。

それは、今まであることにさえ気づいていなかった瘡蓋(かさぶた)がぱらっととれたような奇妙な体験だった。

自分を労る。人生を楽しむ。

すっかり忘れていた。

この気づきを得て、それまで知らず知らずのうちに繰り返していた脅迫的生き方は徐々に消えていった。

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