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山田洋次監督とインテリの所作

キャンプ場で使って持ち帰った、100均の容器に入れた調味料セットが見つからない。まあ20mlずつしかないからいいんだけど、なんか気持ち悪い。

こんなプチトラブルが起こった時、血気盛んな30代の頃なら『んだよちくしょー。どこ行ったんだよコラ』と辺りの段ボールを蹴りまくってたんだろう。

最近はそんな時、山田洋次監督に乗り移ってもらうことにしています。

山田洋次監督は、普段の心情も違和感であっても、平易な言葉なんだけど、その組み立て方と『間』で知性をジャブジャブ溢れさせる。倉本聰が放っているような威圧感をあんま感じなくて、なまら憧れる。

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(左頬を左手で覆いながら)

『うーん。何というかね、あれら(調味料セット)があるということが、どれだけ僕の人生に影響を与えるかというと、それはほとんど無いのかもしれないんですよね。

いま不意に見つけたとして、僕は次に、多分、だけれども、あれら(調味料セット)をどう今後の料理に使っていくか、そういったことを考え始めるんだろうと思いますね。

僕はですね、あれらをキャンプで使って、残りを持って帰ってきたということは、わりかしはっきりと覚えているんですよね。でも、そこからどこに置いたのかということを、いくら辿っても思い出すことができない。

いや、あるいは僕は、こう、辿るということがどういうものであるかということを、今までちゃんと考えて来なかったのかもしれませんね。

今回改めて思ったことは、どれだけ必要かということと、それの喪失感の大きさは必ずしも同じではない。そんなことを、考えたわけなんですけども。

ともあれ、このことは、僕の心の大部分を、占めているということは、まあひとつ、言えるとは思いますね。』

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こうやって心を落ち着かせると、いい感じに生きていけそうです。たのむ。出てきてくれ。部屋の隅っこで発酵してるとか、ナシの方向で。

〈FINE〉

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