2022年6月四週・7月一週の体操ニュース


また前回から間が空いてしまいました。
私の仕事が忙しく、慌ただしい日々を過ごしているうちに、体操界では大きな大会が目白押しでした。


▼徳洲会・武田一志が引退

武田一志選手が自身のnoteを投稿し、6月の全日本種目別選手権のつり輪決勝の演技をもって競技を引退した事を報告しました。

武田一志「引退報告」

今年4月の全日本では個人総合を完遂。5月のNHK杯からはつり輪1本に絞って出場していました。
武田選手といえば、日本では数少ないつり輪が得意なオールラウンダーとして、世界選手権やオリンピックの代表候補に何度も名前が挙がっていた存在でした。

2014年のアジア大会では初の団体金メダル、種目別つり輪で銀メダルを獲得しています。
2016年には全日本種目別選手権のつり輪で初優勝。
各地で行われるワールドカップにも出場し、日本にもつり輪ができる選手がいる事を示してくれました。

動画は最後の演技となった全日本種目別つり輪決勝の演技
動画の前半に演技しているのが武田選手です。


▼東京五輪団体金メダリスト ロシアのアハイモワが引退

東京五輪団体金メダリスト、ロシアのリリア・アハイモワ選手が引退するとロシア代表チームのコーチであるロディオネンコ氏がロシアのメディアに伝えたものです。

Rspot:五輪代表のアハイモワ、腰痛のため引退

オリンピック公式:五輪団体金メダリスト、リリア・アハイモワ引退

もともと背中に痛みをを患っており、東京五輪に向けて痛みと戦いながら準備していたという事です。
競技を続ければ背中の怪我を完治できないとし、競技から離れて背中の治療に専念するそうです。

東京五輪団体決勝では跳馬で見事な跳躍を披露し、金メダル獲得に貢献しました。



▼北アイルランド代表選手のコモンウェルスゲームズへの出場が認められる

先日ここでも取り上げていた、コモンウェルスゲームズに北アイルランド代表選手が出場禁止勧告を言い渡された件についての続報です。
アイルランド代表としてほかの国際大会に出場していて、今大会で北アイルランド代表で出場予定の選手3人について、FIG(国際体操連盟)は一転、北アイルランド代表選手としての出場を許可すると発表しました。

inside games:北アイルランドの体操選手、コモンウェルスゲームズへの出場を許可される

1998年にイギリスとアイルランド間結ばれた「ベルファスト合意」、別名「聖金曜日協定」というものがあります。
アイルランド島の北部にある英領北アイルランドの住民は、この合意に基づき、自身を英国籍かアイルランド国籍か選ぶ権利があります。
アイルランド代表として世界選手権で銅メダルを獲得経験のあるリース・マクレナガンを含む3選手は、従来コモンウェルス・ゲームズでのみ北アイルランドを代表して出場していました。前回2018年大会では、マクレナガンは北アイルランド代表として種目別あん馬で金メダルを獲得しています。

英連邦加盟国間で競う今大会、アイルランドは英連邦加盟国ではないので、マクレナガンはこの大会に出場するために北アイルランド代表を自認しています。

これが「大会によって都合よく自分の国籍を変えている」と問題になり、FIGにより今回2022年大会への出場禁止勧告が出されていました。
それが覆され、マクレナガンらは北アイルランド代表としてのコモンウェルスゲームズ出場が認められた形になります。

マクレナガンはSNSでこの決定について喜びの投稿をしています。

コモンウェルスゲームズは7月29日から始まります。


▼地中海大会 男子はトルコ勢、女子はイタリア勢が活躍

6月~7月にかけて、アルジェリアのオランで地中海大会が開催されました。
地中海に面した国々で競う大会。西欧、バルカン地域、中東、北アフリカの国々が一堂に会す珍しい大会です。
主にヨーロッパの選手が活躍しましたが、それにエジプトの選手も混じって大変な盛り上がりを見せました。

大会結果はこちらを参考

男子は東京五輪で団体出場を果たしているスペインを尻目に、団体出場権を取れなかったトルコ、イタリア、フランスが表彰台に上ります。
種目別では3種目をトルコが制覇し、躍進ぶりが伺えます。

【男子】
◆団体
1,トルコ 251.250
2,イタリア 246.100
3,フランス 242.900

◆個人総合
1,アデム・アジル(トルコ) 84.700
2,ジョエル・プラタ(スペイン) 81.950
3,マリオス・ゲオルギウ(キプロス) 81.800

◆種目別
ゆか:二コラ・バルトリニ(イタリア) 14.850
あん馬:マテオ・ズゲッチ(クロアチア) 14.250
つり輪:イブラヒム・チョラック(トルコ) 14.850
跳馬:アデム・アジル(トルコ) 15.075
平行棒:フェルハト・アリカン(トルコ) 15.100
鉄棒:マリオス・ゲオルギウ(キプロス) 14.300

女子はイタリアが強さを見せました。
団体・個人総合・種目別と、すべての競技でにおいてイタリアが金メダルをかっさらうという偉業をやってのけました。

【女子】
◆団体
1,イタリア 161.950
2,フランス 156.600
3,スペイン 148.450

◆個人総合
1,マルティナ・マギオ(イタリア) 54.864
2,アジア・ダマート(イタリア) 54.065
3,カロラン・ヘデュイット(フランス) 53.065

◆種目別
跳馬:アジア・ダマート(イタリア) 13.875
段違い平行棒:ジョルジア・ヴィラ(イタリア) 14.000
平均台:マルティナ・マギオ(イタリア) 13.550
ゆか:アジア・ダマート(イタリア) 13.550


▼北欧選手権

7月2日~3日にアイスランドのコーパヴォグルで北欧選手権が開催されました。
参加国は、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、デンマーク、フェロー諸島(デンマーク領)の北欧地域の国々。

男子はノルウェーのソファス、スウェーデンのルンブティスといった東京五輪出場選手が活躍、女子は種目別で双子の姉妹が段違い平行棒と平均台をそれぞれ勝ち取りました。

結果はこちらから確認できます。

【男子】
◆団体
1,スウェーデン 239.747
2,ノルウェー 238.495
3,フィンランド 234.195

◆個人総合
1,ソファス・ヘゲムスネス(ノルウェー) 81.148
2,ダビド・ルンブティス(スウェーデン) 79.231
3,ヨアキム・レンベルグ(スウェーデン) 78.183

◆種目別
ゆか:タルモ・カネルヴァ(フィンランド) 13.866
あん馬:ソファス・ヘゲムスネス(ノルウェー) 13.200
つり輪:ヤコブ・カールセン(ノルウェー) 13.333
跳馬:ハラルド・ウィビエ(ノルウェー) 14.050
平行棒:ダビド・ルンブティス(スウェーデン) 13.566
鉄棒:ソファス・ヘゲムスネス(ノルウェー) 13.900

【女子】
◆団体
1,スウェーデン 148.929
2,ノルウェー 148.295
3,アイスランド 143.462

◆個人総合
1,ジュリエ・ロエッタム(ノルウェー) 50.531
2,カミル・ラスムセン(デンマーク) 49.833
3,マリア・トロンラッド(ノルウェー) 49.565

◆種目別
跳馬:カミル・ラスムセン(デンマーク) 13.150
段違い平行棒:ナタリー・ウェストランド(スウェーデン) 13.700
平均台:テルマ・アダルステインドティア(アイスランド) 12.250
ゆか:アルヴァ・エリクソン(スウェーデン) 12.400


▼中南米ボリバリアン大会 パナマ女子が歴史的メダル

6月25日から28日にかけて、コロンビアの都市バエドゥパルでボリバリアン大会という大会が開催されました。
ボリバリアンとは、シモン=ボリバルの事で、ベネズエラに生まれた彼がスペインからの独立運動に関わった国々の事をボリバル諸国というそうです。
この大会に出場した国は、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、ペルー、ボリビア、パラグアイ、パナマ、チリ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、といった中南米の国々。
パナマ女子が団体で銅メダルを獲得、ペルー男子が団体銀メダルなど、サプライズの多い大会になったようです。

【男子】
◆団体
1,コロンビア 306.300
2,ベル― 299.900
3,エクアドル 292.400

◆個人総合
1,アンドレス・マーティンズ・モレノ(コロンビア) 78.800

◆種目別
ゆか:アンドレス・マーティンズ・モレノ(コロンビア) 13.500
あん馬:アンドレス・マーティンズ・モレノ(コロンビア) 12.700
つり輪:クリストファー・ボルケス・カンター(コロンビア) 14.067
跳馬:エドワード・ゴンザレス・リバス(ペルー) 14.000
平行棒:ヴィクトル・ビタンコート・キンタナ(ベネズエラ) 13.733
鉄棒:アンドレス・マーティンズ・モレノ(コロンビア) 13.567

【女子】
◆団体
1,コロンビア 187.450
2,ベル― 183.300
3,パナマ 176.550

◆個人総合
1,アナ・メンデス・レイズ(ペルー) 48.350

◆種目別
跳馬:ヤミレット・ペンナ・アブレウ(ドミニカ共和国) 13.350
段違い平行棒:アナ・メンデス・レイズ(ペルー) 11.667
平均台:アライス・ペレア・ポンセ(エクアドル) 12.067
ゆか:フランチェスカ・サンティ・ミュノス(チリ) 12.767


▼ロシアカップにベラルーシ、アルメニアの選手が参加

7月4日~10日にかけて、ロシア西部カル―ガでロシアカップが行われました。
ロシアと共に国際大会への出場が禁止されているベラルーシと、新ロシアであるアルメニアの選手も参加する国際的な大会となりました。
ベラルーシ、アルメニアのほかにもロシアカップに招待された国がいくつかあったそうですが、参加した事による自国への制裁を懸念して拒否した形です。
ロシアは国際大会に出場できない代わりに自国で国際大会を開けば良いじゃないといった考えを崩しません。

さて、試合結果ですが、東京オリンピック金メダリストたちが大活躍。
男子個人総合ではナゴルニーが王者の座を死守、新生も誕生しました。
女子はメルニコワ、リスツノワなどが圧巻の強さを見せます。

【男子】
◆個人総合(予選と決勝の合計点数)
1,ニキータ・ナゴルニー 168.763
2,ダニエル・マリノフ 168.164
3,ダビド・ベルヤフスキー 165.963

◆種目別
ゆか:イェゴール・シャラムコフ(ベラルーシ) 14.400
あん馬:ダビド・ベルヤフスキー 14.633
つり輪:デニス・アブリャジン 14.366
跳馬:デニス・アブリャジン 14.566
平行棒:ダニエル・マリノフ 14.866
鉄棒:アレクセイ・ロストフ 13.400

【女子】
◆個人総合(予選と決勝の合計点数)
1,アンゲリーナ・メルニコワ 110.431
2,ヴラジスラワ・ウラゾワ 109.397
3,マリア・ミナエワ 106.431

◆種目別
跳馬:,アンゲリーナ・メルニコワ 13.683
段違い平行棒:ヴィクトリア・リスツノワ 15.233
平均台:ヤナ・ヴォローナ 14.533
ゆか:,アンゲリーナ・メルニコワ 14.433


▼クリアクがロシアカップ欠場

そのロシアカップですが、大会前にひと悶着あったようです。

ジムノヴォースチ:制裁を避けるため、クリアクがロシアカップの出場選手名簿から外される

ロシアカップにも出場予定だった渦中のイワン・クリアクが、直前に欠場となりました。
国内大会とはいえ、クリアクを出場させることでロシア体操連盟全体に影響が及ぶ可能性を考慮しての決断だったという事です。

クリアク自身、またロシア代表コーチであるロディオネンコ氏は、「国内大会への出場禁止措置は取られていない」「FIGが国内事情にまで干渉する権利はない」と、ロシアカップに出場させる気満々でしたが、連盟トップはまだ自制心があったようです。

クリアクは1年間の国際大会出場禁止措置を取られた体操倫理財団に対し不服を申し立て、上訴しています。


今年は中規模・大規模な国際大会が目白押しなので、今後も大会結果を逐一伝えていきます。



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