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サミール・アイト・サイード(フランス)のつり輪/2019年世界選手権予選の演技


アルジェリアにルーツを持つフランス代表のつり輪っ子、サミール・アイト・サイード。ニックネームは「サム」

世界選手権の種目別つり輪決勝の常連で、2013年,2014年,2015年,2017年,2019年と決勝に進み、2019年にやっと銅メダルを獲得。同時に東京オリンピック出場権を勝ち取りました。

さて、前回は力技に「後ろ振り上がり」の要素を加えた技を3つ紹介しました。
今回は、さらにもうひとつ、【後ろ振り上がり上水平支持】を紹介します。
前回の記事で「後ろ振り上がり」について理解できればこの技を覚えることは難しくありません。
前回紹介した【後ろ振り上がり開脚上水平支持】に脚を閉じたものが【後ろ振り上がり上水平支持】です。

「開脚上水平」は脚を開きますが、

開脚上水平

「上水平」は脚を閉じます

上水平

「後ろ振り上がり」をして「上水平」に収める技が【後ろ振り上がり上水平支持】なのです。

振り上がり上水平

この技を構成に入れていると「つり輪が強い選手」というイメージです。
僕の勝手なイメージです。


そして今回から終末技も覚えましょう。
つり輪では終末技のグループ点を0.5獲得できるD難度の技として【後方伸身2回宙返り1回ひねり】が使われます。

この技は《伸身ムーンサルト》または《伸身月面》とも呼ばれます。
つり輪に限った話ではありませんが、
「2回宙返り1回ひねり」を「月面」または「ムーンサルト」
「2回宙返り2回ひねり」を「新月面」または「ルドルフ」
と呼びます。

この技は「2回宙返り1回ひねり」=ムーンサルトを伸身で行っているので《伸身ムーンサルト》になります。

サムは前回紹介した【後ろ振り上がり中水平】もやっていますね。
【後ろ振り上がり中水平】の後にやっているのが、【後ろ振り上がり上水平】です。
着地もきれいに1歩にまとめています。

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サムの逞しい力技は宇宙空間のよう。
十字懸垂、中水平では手で輪を握らず、パーに開いてアピールします。
つり輪の力技では輪を握る時に手首を過度に巻き込んで力技をすると減点されてしまいます。
手を開いて力技をすることは手首を巻き込んでないことのアピールになっています。


サムとオリンピックには深い因縁があります。

2012年、ロンドンオリンピックの代表に選ばれましたが、直前のヨーロッパ選手権の跳馬で足を怪我、ロンドン五輪への出場を断念します。

そして2016年リオデジャネイロオリンピックの代表にも選ばれました。
予選のつり輪で高得点を叩き出した、次の跳馬で足を骨折。
つり輪では決勝に進出していたのですが、決勝の演技は断念します。

そして2021年、彼にとって3回目のオリンピック。
2019年には、彼の父が亡くなり、父のためにオリンピックのメダルを手に入れたいと語っています。
こんな不運なことがあっても、彼は跳馬を跳ぶことを止めることはしませんでした。
すべてはフランス団体のためなのです。

彼が無事に演技を遂行し、メダルを取れることを祈ります。


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