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体操の技を覚えよう【鉄棒03】バーに近い技

車輪系の技、鉄棒の華型である手離し技のほかにも演技構成に取り入れなければならない技の種類として「バーに近い技」というのがあります。

グループⅠ:車輪系の技は、バーを掴んで足先までめいっぱい体を伸ばして車輪にひねりなどを加える技郡
グループⅡ:手離し技は、バーから手を離して再びつかむ技郡

そしてグループⅢ:バーに近い技は、体を折り曲げるなどしてバーに体を近づける技郡です。

どんな技があるのか見てみましょう。


※これから紹介する技名は、必ずしも正式名称ではなく、一部わかりやすく書き換えているものもあることをご留意ください。


①後方浮き支持回転倒立【A難度】

倒立から体を伸ばしながら支持局面を経過し、逆上がりのような動きをして再び倒立に戻る技。
グループⅢ:バーに近い技における後方系の動きの基本となる動き。
「翻転倒立」とも呼ばれます。

翻転倒立
Landen Blixt - High Bar - 2024 Winter Cup - Men Day 2


②後方開脚浮腰回転倒立〔シュタルダー〕【B難度】

①翻転倒立と同じような動きですが、逆懸垂局面では下半身を開脚で折り曲げています。
このような動きを〔シュタルダー〕と呼びます。

シュタルダー
Men's Team Final | Tokyo Replays


③後方閉脚浮腰回転倒立〔閉脚シュタルダー〕【C難度】

②〔シュタルダー〕を閉脚で行うと難度がひとつ上がってC難度になります。
②〔シュタルダー〕は逆懸垂局面で、両腕の外側に足を置いていましたが、この〔閉脚シュタルダー〕は両足の内側に足を置いています。
逆懸垂時、腕と脚が垂直かそれ以上になるほど体を折り曲げられるとより理想的な実施と言えます。

閉脚シュタルダー
Evan Wenstad - High Bar - 2024 Winter Cup - Men Day 2


④シュタルダーとび1回半ひねり片大逆手【D難度】

開脚の②〔シュタルダー〕から倒立に上げる局面中に体を1回半ひねらせて片大逆手でバーを握る技。
B難度の②〔シュタルダー〕に1回半ひねりの要素を加えることでD難度を得ることができます。
このようなひねり技は、バーを握った瞬間により倒立に近い位置であることが理想とされています。

シュタルダー1回半
Men's Horizontal Bar #Tokyo2020 qualifications - Subdivision 2


⑤シュタルダーとび1回半ひねり大逆手【E難度】

開脚の②〔シュタルダー〕から倒立に上げる局面中に体を1回半ひねらせて大逆手でバーを握る技。
B難度の②〔シュタルダー〕に1回半ひねりと大逆手握りの要素を加えることでE難度を得ることができます。
②〔シュタルダー〕とグループⅠのリバルコを組み合わせた技でシュタルダーリバルコなんて呼ばれ方もします。

シュタルダーリバルコ
Artistic Gymnastics Men's Team Final - Full Replay | Rio 2016 Replays

グループⅡ:手離し技とグループⅣ:終末技以外は高難度の技はたくさんありますが、
グループⅠ:車輪系の技はD難度が最高難度、そしてグループⅢ:バーに近い技はE難度が最高難度になります。
ひねり技で高難度を稼げる数少ない技のうちのひとつなのです。


⑥順手背面後ろ振り出し【A難度】

順手握りでの懸垂から脚を両腕の内側に通して逆懸垂状態を経過後、上半身を起こした勢いを使って脚を後ろ方向に振り上げて、肩が返った順手背面車輪〔チェコ式車輪〕とへと繋げる技。
複雑な技ですがA難度です。

LIKHOVITSKIY Andrey (BLR) - 2019 Artistic Worlds, Stuttgart (GER) - Qualifications Horizontal Bar


⑦後方浮腰回転後ろ振り出し順手背面懸垂【C難度】

閉脚シュタルダーのように体を折り曲げた状態で逆懸垂を経過後、折り曲げた体を倒立へと戻さずに折り曲げたまま棒上まで体を持っていき、順手のまま肩を返した順手背面車輪〔チェコ式車輪〕へと繋げる技。

説明が難しい技ですが、単体で使われることはほとんどなく、チェコ式車輪に入るためのジョイント技として使われます。

Hashimoto wins the men's individual all-around! | Tokyo Replays

閉脚シュタルダーと比べると違いが判るでしょうか。


⑧順手背面懸垂前振り上がり後方浮腰回転倒立〔ケステ〕【C難度】

こちらはチェコ式車輪の後処理として使われるC難度の技。
順手背面車輪の動きから棒上で体を折り曲げた状態のまま逆懸垂までを経過し、逆懸垂から棒上に体を持ち上げる際に脚を両腕から抜いて順手握りの倒立で収めます。

Full Rio 2016 Men's Artistic Gymnastics All-Around | Throwback Thursday


チェコ式車輪を使う選手は、⑦後方浮腰回転後ろ振り出し順手背面懸垂【C難度】⇒チェコ式車輪【D難度】⇒⑧〔ケステ〕【C難度】という流れで演技を構成します。

しかし、〔ケステ〕で倒立に収めずに②〔シュタルダー〕で処理する選手もいます。
その場合、⑦後方浮腰回転後ろ振り出し順手背面懸垂【C難度】⇒チェコ式車輪【D難度】⇒⑧〔シュタネイマン〕【B難度】⇒②〔シュタルダー〕【B難度】という流れになります。

シュタネイマンはチェコ式車輪と比べると、脚を振り上げながら体を持ち上げ、棒上で背面支持の形を取るグループⅡのB難度の技です。

このように、チェコ式車輪を使う選手は、チェコ式車輪に入るための技⇒チェコ式車輪⇒後処理の技というふうにセットで使うのです。


さて、ここからは前方系の技に入ります。

⑨け上がり倒立【A難度】

懸垂から前方向に振動を加え、両足をバーに近づけて上方向に蹴り上げるようにする勢いを使って上半身も一緒にバーの上に持ち上げる。上半身を支持状態まで持ち上げたらその振動のままに足を後ろ方向に振り上げて倒立まで持ち上げる技。
主に手離し技を掴んだ後処理として使われる技です。
倒立まで上げられないと難度価値は得られません。

け上がり倒立
Men's Horizontal Bar #Tokyo2020 qualifications - Subdivision 2


⑩倒立から前方浮腰回転倒立〔ワイラー〕【B難度】

倒立から体を伸ばしながら逆懸垂局面を経過し、前回りのような動きをして再び倒立に戻る技。
①翻転倒立とは反対の動きをしていますが、①翻転倒立よりも難度は上がってB難度が得られます。
〔ワイラー〕と名前がついています。

ワイラー
Full Rio 2016 Men's Artistic Gymnastics All-Around | Throwback Thursday


⑪前方開脚浮腰回転倒立〔エンドー〕【B難度】

⑦〔ワイラー〕と同じような動きですが、逆懸垂局面では下半身を開脚で折り曲げています。
②〔シュタルダー〕とは反対の動きをしていますが、このような動きを〔エンドー〕と呼びます。
難度は②〔シュタルダー〕と同じくB難度。

エンドー
Men's Team Final | Tokyo Replays


⑫前方閉脚浮腰回転倒立〔閉脚エンドー〕【C難度】

⑧〔エンドー〕を閉脚で行うと難度がひとつ上がってC難度になります。
〔エンドー〕は逆懸垂局面で、両腕の外側に足を置いていましたが、この〔閉脚エンドー〕は両足の内側に足を置いています。
逆懸垂時、腕と脚が垂直かそれ以上になるほど体を折り曲げられるとより理想的な実施と言えます。

閉脚エンドー
Evan Wenstad - High Bar - 2024 Winter Cup - Men Day 2


⑬大逆手エンドー【C難度】

大逆手握りをしたまま⑧〔エンドー〕の動きをすると⑧〔エンドー〕よりも難度がひとつ上がってC難度が得られます。

大逆手エンドー
Hidetaka Miyachi - High Bar - 2017 Cottbus World Cup


⑭大逆手閉脚エンドー【D難度】

大逆手握りをしたまま⑨〔閉脚エンドー〕の動きをすると⑨〔閉脚エンドー〕よりも難度がひとつ上がってD難度が得られます。

大逆手閉脚エンドー
Olympic history in full length! | Men's all around final at Athens 2004

近年、シュタルダー系の技はよく見られますが、エンドー系の技は実施する選手が減っています。その中でもこの大逆手閉脚エンドーは特に実施例が少なく、滅多に見ることはありません。


⑮前方浮腰回転振り出し倒立〔アドラー〕【C難度】

倒立から逆懸垂までの前半の動きは⑨〔閉脚エンドー〕と同じですが、後半の動きでは肩を返しながら折り曲げた体を再び伸ばしています。
技が完了する倒立位では大逆手の状態になり、C難度を得ることができます。
〔アドラー〕という技名が付いています。

アドラー
Men's Horizontal Bar #Tokyo2020 qualifications - Subdivision 2

閉脚シュタルダーと動きが似ていますが、後半部分の下半身の動きを比べると違いが判るでしょうか。


⑯アドラーとび逆手倒立【D難度】

⑫〔アドラー〕で倒立位になる直前にとび局面を見せて大逆手から逆手に持ち変える技。
とびの要素が加わることで難度がひとつ上がってD難度が得られます。
おもしろい技ですがほとんど見られない希少技です。

アドラーとび倒立
Danell Leyva - High Bar - 2012 AT&T American Cup


⑰アドラーひねり倒立【D難度】

⑫〔アドラー〕で倒立位に上げる際に体を半分ひねらせて、順手握りでの倒立位で収める技。
D難度が取れるので単体でもよく使われるメジャーな技です。
チャプター05でも触れますが、鉄棒における組み合わせ加点を得るためによく使われる技でもあります。
「アドラーハーフ」なんて呼ばれ方をします。

アドラーひねり倒立
Men's Horizontal Bar #Tokyo2020 qualifications - Subdivision 2


⑱アドラー1回ひねり片逆手倒立【D難度】

⑫〔アドラー〕で倒立位に上げる際に体を1回ひねらせて、片逆手握りでの倒立位で収める技。
⑭アドラーハーフよりもひねり数は多いですが、難度は変わらずD難度

アドラー1回ひねり片逆手
Artistic Gymnastics Men's Team Final - Full Replay | Rio 2016 Replays


⑲アドラー1回ひねり両逆手倒立【E難度】

⑫〔アドラー〕で倒立位に上げる際に体を1回ひねらせて、両逆手握りでの倒立位で収める技。
ひとつ前⑮アドラー1回ひねりは片逆手握りでの倒立でしたが、このアドラー1回ひねりは両逆手握りE難度が取れます。
握り方が片逆手か両逆手かで難度が変わってしまうのです。

アドラー1回ひねり両逆手
Men's Team Final | Tokyo Replays


手離し技が注目されがちな鉄棒ですが、こういったひねり系の技に注目してみるのも良いでしょう。
ひねり技やアドラー系の技は、より倒立に近い位置で技を完了するのが良いとされています。
Eスコアが高い選手はこの要求を正確に実施できている選手と言えます。(必ずしもこれらの技を演技構成に入れているわけではありませんが。)

次回は鉄棒の終末技について紹介します。


画像出典

Men's Horizontal Bar Final | Tokyo Replays

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