ディズニー建築のススメ ①

久々のnote更新です。
ディズニーのこだわりが詰まっている建築を紹介しようと思います。

今回の注目ポイント

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エントランスから入ってすぐ、ワールドバザールの最初の十字路です。
入って最初の1秒から楽しい。それがディズニーランド。本当はこの手前にも素敵なポイントがありますが、まずは僕が一番好きな所から。
パークに来た全てのゲストが必ず通るこの十字路、お目当てのアトラクションに向かうためにサッと素通りされがちですが、ぜひ足を止めて、周りを見てみてください。

左右を交互に見てみる

交差点の真ん中に立ったら、まず左右を見比べてみてください。

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左側は↑こんな感じ。
右を見ると、↓このような景色が広がっています。

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左側の道

こう見比べてみると、雰囲気がだいぶ違うことに気付きませんか?
まずは左側から見ていきたいと思います。

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右側や中央の通路と比較すると、建築物に大きな差があるんです。
どこでしょうか?

この赤丸の部分にご注目。

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バルコニーです。
右側の通路にはなく、中央の通路にもほとんどないバルコニーが、この左側の通路にだけ突然たくさん出てきます。
ここにバルコニーが増えるのは(きっと)意味があると思っています。それを紹介していきます。

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まず、このエリアのバルコニーに寄ってみましょう。木でできた手すりの低いバルコニーです。
ワールドバザールは21世紀初頭、1900年代のアメリカ中部の町、マーセリーンがモデルになっています。日本で言うと明治時代の末です。
まだニューヨークの摩天楼もない時代、いわゆる「古き良きアメリカ」の時代をモチーフにしているため、材質も木やレンガのような温かみのある質感がメインになっています。
※写真はクリスマスシーズンに撮ったのでリースがついてます

この左側の通路をまっすぐ進んでいくとどうなるか?

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ワールドバザールの左側出口にあるのはワッフルカンパニーです。ミッキー型のワッフルが人気のお店です。
このショップにもバルコニーがありますね!
建物自体はワールドバザールの趣がありますが、これまでの景色にはなかった緑青色の金属製のバルコニーが使われています。

そのまま、視線を正面に向けると、アドベンチャーランドのニューオーリンズスクエアに到着します。カリブの海賊があるエリアです。
このエリアはその名の通りアメリカ南部のニューオーリンズをモチーフとしています。景色はこんな感じです。

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エリアが変わると質感も変わります。フレンチクォーターの建物は火災防止のため、木材の使用が制限され、漆喰の建物がメインだったそうです。
窓もガラスとカーテンだったのがサッシがつくようになりました。

建物や街の雰囲気だけを見ると、エリアが変わることでガラッと変わってしまいました。ただ、ここまで見てきて、全く違うものとは思えない気がしませんか?2つの世界を繋ぎ合わせるものがありますね。

もうお分かりだと思いますが、我らがバルコニーです!

上の画像ではバルコニーではなく、ベランダになります。
バルコニーは屋根がなく、ベランダは屋根ありという違いだそうです。
緑青色の装飾された金属を使ったベランダ建築はニューオーリンズ、フレンチクォーターを代表する建築様式です。
フレンチクォーター(wikiに飛びます)

フレンチクォーターにベランダ建築は必須です。ただ、ワールドバザールから急に変わってはビックリしてしまう。そのためにバルコニーという共通点を与え、徐々に、少しづつ景色を変えていき、違和感がなく世界にフェードインするような工夫!
木製のバルコニー>金属製バルコニー>金属製のベランダ建築
これが素晴らしきディズニー建築の醍醐味です!

右側の道

ここまで見てきた流れで、もう一度右側を見てみましょう。

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もちろんベランダはないですが、注目ポイントはやはり壁側です。

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この赤丸部分です。
特に右側の赤丸部分はセンターストリートコーヒーハウスというショップで、とても特徴的な見た目をしています。正面から撮ると

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こんな感じです(公式より画像拝借)
ネオン装飾と鏡面仕上げの金属パーツはワールドバザールの左側や中央では使われていなかった装飾品で、どことなく現代的な感じがします。
看板に使われているデザインとフォントも、今までの「古き良きアメリカ」とはちょっと違った趣のあるものになり、温かみのある造形よりも、もっと人の手が加わった記号的な印象を受けるものになっています。

正面の赤丸部分も見てみると、これまたワールドバザールではみられない直線と曲線が組み合わさった、幾何学的な模様です。
色合いも、レンガの赤味や黄色味から、ピンクに明るい青と、他の通りではみられないものになっています。

これらは「アール・デコ」というデザイン様式で、ワールドバザールのモチーフである1900年代初頭から少し後の1925年から流行したデザインです。
センターストリートコーヒーハウスなんて、アール・デコと言ったらこれってぐらい直球のアール・デコデザイン&フォントですね。そしてアール・デコといえば、近代アメリカの象徴とも言えるニューヨークの摩天楼です。

なぜ、このデザインなのか。
左側の道と同様に、道の先に進んでみましょう。

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眼前に広がるのは、未来と宇宙をイメージしたトゥモローランドです。白や青、セラミックや金属といった近代的で無機質な質感や幾何学的なデザインが特徴的なエリアです。
パークの中でも、最も異質な質感でありつつ、ウォルトが最も愛したテーマでもあります。

1900年代のアメリカ中部の片田舎から、いきなり未来へ飛んで行っては、ギャップが強すぎます。幾何学模様という共通点はありますが、ざっくりしていて、バルコニー(ベランダ)のようなパーツレベルで共通するものは見られません。景色で言うと、まぁまぁ急に変わった感があります。

こちらの道でのフェードインのための共通するポイントは「ウォルトの視点」だと思っています。
1901年生まれのウォルトは、ワールドバザールの中央通りのような街並みで過ごしました。アール・デコが花開いた1925年〜30年、ウォルトがまさに最強のパートナー「ミッキーマウス」を産み出し(1928年)アメリカンドリームと未来に向かって駆け出します。

ワールドバザールを右に曲がると、ウォルトの視点を追って
懐かしい子供時代>光を掴んだ青年時代>まだ見ぬ栄光の未来
といったように、フェードインしていく道なんじゃないかと思います。

おわりに

ワールドバザールの十字路は、左に行けばアメリカを縦断し、右に行けば時間を超越する、とても素敵で魔法に満ちた、ディズニーの世界観を体現するような場所。
ちょっと素通りするには惜しいと思いませんか?

38年前の今日、東京ディズニーランドが誕生しました。パークの入り口にして、ディズニーの魔法を詰め込んだ十字路の話を今日書きたかったんです。
ハッピーバースデー、東京ディズニーランド。

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