ディズニーパーク音楽のススメ2

前回はワールドバザールからアドベンチャーランドまで行ったので、続きを書こう。

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アメリカ中央部から始まり、カリブ海からパナマ運河を超えてポリネシアまで来ましたが、やっぱりアメリカに戻ろう。

ウェスタンランドの音楽

赤茶けた地面とワイルドな丸太建築が見えてきたら、そこはアメリカが誇る西部開拓時代の世界。アメリカの太平洋側、フロンティアと呼ばれた未開の荒野が広がる世界。本国では「フロンティアランド」と言います。
ウォルト・ディズニーは元祖ディズニーランド開園初日の演説で

Here age relives fond memories of the past, and here youth may savor the challenge and promise of the future.
大人は大好きな昔の思い出を追体験し、また、ここでは、若者は未来の課題と希望を体験するかも知れません。

と言ってます。ここはまさにmemories of the pastを担当するエリア。ただ、西部開拓時代って1890年代には終わっているんですよ。ウォルトですら生まれた時には既に終わっているので、厳密にはここはファンタジーとしての西部開拓時代、ノスタルジックな「西部劇」の世界なんじゃないかな。

ここで流れる曲もエリアごとに違いはあるけど、正直違いが分からない。全部、ジャンルとしては「カントリーミュージック」。バンジョーやハーモニカの音色で、なぜか輪になって腕を組んでクルクル踊りたくなる、夕日と焚き火とウイスキーの入れ物が似合う曲達。

ディズニーの象徴的な音楽といったら「星に願いを」や「小さな世界」といったファンタジーランドなイメージが強いけど、ここウェスタンランドにはディズニーの原点とも言える曲が流れてる。それは、ミッキーマウスのデビュー作にして、最初のヒット作、世界初の音声付きアニメーション映画「蒸気船ウィリー」で流れる「Turkey in the Straw(藁の中の七面鳥)」。
全ては1匹のネズミと、1艘の蒸気船と、1曲のカントリーミュージックから始まった。

アメリカ川に浮かぶ蒸気船「マークトウェイン」を眺めながら、ディズニー黎明期に思いを馳せるのも乙なもんです。おともはパイナップルとベーコンのピザで。
※ほんとの始まりの曲は映画冒頭でミッキーが口笛で吹く「Steamboat Bill」だけど、それはパークでは流れてません。

クリッターカントリーの音楽

これまではモチーフを地図上で指し示すことができたけど、ここから先はそうはいかない。一般認知されている「ディズニーらしさ」とも言えるファンタジーな世界に足を踏み入れます。

さっきのウェスタンランドからファンタジーランド方面に足を伸ばす途中の脇道から進むとたどり着くのが「クリッターカントリー」。クリッターは動物の意味。ウサギどんやクマどんといった、動物キャラクターがたくさん住んでるエリア。

ここの音楽もカントリーなんだよねー。ウェスタンランドとの違いは全然分からない!強いて言えば、なんとなくクリッターカントリーの方が軽やかで陽気な曲調が多い気がする…。気がするだけ。
このエリアはアナハイムでは独立してるけど、日本でウェスタンランドにあるカントリーベアシアターが含まれてたり、フロリダではウェスタンランドに相当するフロンティアランドに統合されてたり、ややこしい。

音楽的にはカントリーミュージック、建物やキャラクターはファンタジーで、ウェスタンランドとファンタジーランドの間にぴったりのエリア。
ディズニー映画のオリジナル曲も使われ始めるから、そういう意味でも2つのエリアを橋渡ししてる。
ここで使われるオリジナル曲と言えば、黒人奴隷問題で発禁になっている「南部の唄」の「zip-a-dee-doo-dah」。パークで流れる曲で元ネタが発禁になってるのはこの曲だけだと思う。原作を見たことある人はほとんどいないはず。アメリカではこの曲がBGMから消えたそうな。時代に合わせて変わるパークらしさとはいえ、寂しいねぇ。

ファンタジーランドの音楽

少し寂しい話になっちゃったから路線を戻して。
間の世界クリッターカントリーから、ファンタジー要素をマシマシにしてたどり着くのはファンタジーランド。

この動画は「屋内エリアでかかってる曲」だって。
そうなの。ファンタジーランドは今までのように「散歩中に聞こえてくるテーマ音楽、BGM」の印象が薄いエリア。
アリスのティーパーティ(コーヒーカップ)やキャッスルカルーセル(メリーゴーランド)のように外に向かって音を発してるアトラクションがたくさんあるし、テーマエリア全体で1つの世界というよりアトラクション1つ1つが世界観や音楽を持っているエリア。テーマ音楽の印象が薄いって感じるのは、パークの手のひらの上なんだろう。

トゥーンタウンの音楽

ファンタジーランドからトゥモローランドに向かう途中に見える大きな門を潜るとカートゥーン(漫画)の世界。と思ったけど、もう門ないね。ニューファンタジーランドができたので、ファンタジーランドから横道に外れたような場所にあるイメージかな。
ディズニーのアニメーションに登場するキャラクター達が住んでる家があったり、キャラクター達の生活が垣間見える施設があったり、アニメーションで使用するギャグの製作工場があったり、急にメタな世界観。

ここのテーマ音楽は音楽ジャンルとしてのまとめ方じゃなくて、ディズニーアニメーション映画に使用されている曲。中にはジャズっぽい曲があったり、カントリーっぽい曲もある。
フィーチャーされるのは短編映画。今でこそ、ディズニーといえば長編アニメーション映画で、数年に1本公開されるイメージが強いけど、1937年に白雪姫がヒットした後も、しばらくはミッキーやドナルドが主人公の短編アニメーションをたくさん作ってた。それも年に何本も。
50年代以降は徐々に製作本数も減ったけど、最近はまたミッキーの新作短編が作られたり、それを元にしたアトラクション出来たりしてる。

ディズニーの短編映画はコメディ、特にドタバタコメディ。ここでの曲もコメディらしく騒がしくて、不思議な面白い音が鳴ったりする。行進曲的な曲も結構あるし、手拍子が似合う曲が多いと思う。子供がいたら、ここで音に合わせて手をパチパチしてるだけでも楽しいんじゃないかなー。
エリアには踏むと声がするマンホールや、とんちんかんな出来事が起きるギミックがたくさんあるから、コメディな曲を聴きながら、自分自身もギャグに飛び込んでゲラゲラ笑うっていうのがテーマに浸るって意味では最高。
コメディにおける一番のBGMは笑い声だしね!
※顔が怖いおじさんが本気でギャグに飛び込むと、周りが引いちゃうから気をつけます。はい。

トゥモローランドの音楽

トゥーン達の街を後にして先へ進むと、今度は時間を超えたファンタジーの世界へ。空想未来、トゥモローランド。そこにあるのは、ガチで予測された未来じゃなくて、20世紀の人が思い描く21世紀、SFのような「未来っぽい」と思う空想の世界。

ここで流れる曲は、これまでとはジャンルというか世界観が全く変わる。シンセサイザーや電子音が多用され、宇宙の星を表すようなキラキラピコピコっとした音だったり、ゲームやSFな感じの曲になる。
ただ、決して最新のデジタルな音楽っていうわけじゃないのが凄いと思うんだよなー。どこかレトロな感じもあって、他の何でもないトゥモローランド感を感じる曲達。

ここでの曲は元ネタが分からないやつもあるけど、ディズニー曲のトゥモローランドアレンジがあったりする。
例えばピクサー映画「トイ・ストーリー」で流れる「Strange Things(すべてがストレンジ)」とか。トイ・ストーリーが選ばれてるのは宇宙飛行士のバズがいるからだろいけど、この曲が歌ってるのはウッディの気持ちだよね。バズについて歌ってる曲だからいいのか。

そんな中でイチオシの曲は「The Great Big Beautiful Tomorrow」のトゥモローランドアレンジ。まず曲のタイトルからして良いよね。この曲は今はフロリダのディズニーワールドにある「Carousel of Progress」というアトラクションで使われた曲で、1964年に発表された曲。

この「Carousel of Progress」というのは、過去から現在、そして未来へと生活がどう変わっていくかを乗り物にのって見ていく教育的なアトラクション。未来といっても、ここで言ってる未来は1990年代のことなんだけどね。「The Great Big Beautiful Tomorrow」はこのアトラクションを通して使われる曲。50年も前に過去から未来を描いたアトラクションで流れていた曲が、アレンジされてさらに未来の世界、永遠の未来であるトゥモローランドでも流れてるっていうのが良くない?
時代は流れ、アレンジも変わるが、音楽は鳴り続けるって感じ。

この「Carousel of Progress」で描かれてる未来は既に過去のものだけど、アトラクション内では「想像する未来」としてヘッドマウントディスプレイで子供がゲームをし、音声認識して家電を操作する様が描かれてる。もしこれを読んでる人でフロリダに行くことがあれば、ぜひ体験することをオススメします。アトラクション自体は古いし、スリルもないけど、「人が夢見たことは実現できる」というのを実感することが出来ると思う。

終わりに

さぁワールドバザールに戻ってきたよ!
これでディズニー1周のテーマ音楽紹介はおしまい!

パークの楽しみ方なんて本当は自由で、アトラクションに乗らなきゃいけないルールもないし、こうやって音楽を楽しむことだって、他にも例えば食べ物に色々チャレンジするのだってテーマパークの楽しみ方の一つ。色んな楽しみ方をする人が増えたら良いと思うよ。
誰かに迷惑をかけたり、人の夢を壊したり、一番大切なゲストである子供達の安全を脅かさないことが条件だけどね。

それじゃ、素敵な夢と魔法の旅を!

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