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沖縄アリーナ考察 基本設計と公開パース比較

沖縄県沖縄市に2020年10月完成予定の沖縄アリーナ。Bリーグ琉球ゴールデンキングスの新ホームアリーナです。ついに公式サイトでその全体像が公開されました。
2016年に沖縄市から公開されていた基本設計と、今回公式サイトで公開されたパースを比較して、日本初とも言える「興行主視点で造られた大型アリーナ」を考察してみます。

基本設計

(仮称)沖縄市多目的アリーナ施設等整備全体計画調査業務報告書

沖縄アリーナ公式サイト

施設概要

1階

基本設計

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実施設計パース

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常設キングスショップがアリーナ正面に設置。チケットエントランス外なので興行日以外でも営業可能。
またVIPエントランスが2か所に。基本設計では貴賓エリアへのアクセスのみだったのがVIPエリアは全てこのエントランスからアクセス可能に。
地味な変更として中継車駐留置場が屋内に。中継放送の利便性を重視。これはスポーツだけでなく音楽ライブの中継などでも重視されるポイントでしょう。
設備用の倉庫は東側にまとめられています。

2階

基本設計

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実施設計パース

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導線計画に非常に重要な回遊コンコース、基本設計では3階でしたがメインエントランスと共に2階へ移動。アリーナ可動席と1層固定席は全てこの回遊コンコースからアクセスします。この利点は観客席に入った瞬間にコート全体が眼前に広がる非日常感の演出が出来る事。コートに入るための1階入口しかない体育館では不可能な演出であり、体育館とアリーナの違いが分かる部分です。

大規模な貴賓室が無くなりその場所には大規模トイレが。トイレ大事。形状から一方通行方式ではないでしょうか。

注目なのは1階VIPエントランスと2階メインエントランスが吹き抜けで繋がり、VIPにいても試合前の高揚感溢れる空気が伝わる工夫。基本設計での吹き抜けの使い方が一般的な「エントランスの開放感と採光性」なのに対し、実施設計では「下層に上層の空気感を送る」という使い方。スゴい。

3階

基本設計

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実施設計パース

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エントランスは基本設計3か所→2階1か所のみに。そしてVIPルーム22室→30室に増加。1室の広さを小さくして室数を増やしています。VIPルームの数が多いほど収益性は向上。基本設計では通常導線と交錯してたVIP導線を完全分離。VIP客は混雑したコンコースを一切通る事無く快適に観戦、プレミアム感が更に増しています

東側に並んだブースはおそらく一般向け飲食テナントです。2階コンコース導線と3階飲食購入列を分離したいと思われます。飲食ブースに並んでいても背中側ではコートを一望出来ます。広いスペースを取っているので特別テーブル席の設置や特設イベントブースとしても活用出来るのではないでしょうか。

4階

基本設計

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実施設計パース

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基本設計で西側エントランス吹き抜けだった部分に、高収益性を見込めるロビーラウンジを配置。吹き抜けは建物の開放感を生みますが床面積の減少を伴います。安易な雰囲気造りより収益性と機能性を追求している事が分かります。

東側エントランス吹き抜けだった部分には高速道路(沖縄自動車道)を望む「ハイウェイバー」を配置。沖縄アリーナは沖縄自動車道に隣接した少々歪な土地形状に建設されているのですが、それを逆手に取って高速道路に迫り出したような面白い仕掛けです。

5階

基本設計

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実施設計パース

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基本設計南側にあったスカイボックスは、西側に移動させて広く使えるロビーラウンジに変更。その広さと完全独立している事から、2階にあった貴賓席の性質も兼ねていると思われます。

観客席伏図

基本設計

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実施設計パース

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基本設計より可動席の段数が増加。また縦通路を増やしてアクセス性向上させています。
可動席増加はイベントフロア面の拡張と建物エリアの縮小を意味しています(おそらく)。様々な催事を想定した高機能可動席であれば、イベントフロアは広いに越したことは無い。
体育館は木製コートなので可動席の運用には限界がありますし、固定席フロアの階高が低いので可動席の段数も増やせません。広い体育館に仮設席を作るとコートと仮設席との間で無駄に広いスペースが出来て間延びした印象になるのはこれが原因です。

個人的には西側にホールラウンジをまとめた事は秀逸だと思います。細かく諸室貴賓室を分けるより使い勝手が良くなり、ホールラウンジ自体もパーテションで区切る事も出来るはずです。

感想まとめ

基本設計でも十分魅力的でしたが、公開されたパースを見れば見る程スゴいと感じられます。一般導線とVIP導線の分離や、様々な価値が生まれそうなホールラウンジの配置など、高価格帯からの収益性をより強化された印象です。

ただ、飲食ブースの規模・配置がまだよく分からず、興行時の物販収益が不透明な気がします。一般客も利用出来そうな企画席を造ったり、観戦しながら食事が出来るレストランなどのスペースは残っていません。

そう考えると「1万人アリーナ」と言われると巨大な施設を想像してしまいますが、絢爛豪華というよりは確実な収益性を第一にコンパクトにまとめたプロフィットセンターと考えるべきでしょう。

木村社長が語る沖縄アリーナ


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