【投資とEnglish】-とある欧州スタートアップのピッチデック(投資判断資料)からみる構成と英単語
投資の仕事に携わってちょうど半年が経過しました。海外の投資案件に触れることも多い中で、最初に苦戦をしたのが専門用語の数々!幸いにもスタートアップ投資は欧米を中心に発達してきた歴史があるので、日本の投資界隈でもそのままカタカナにして使っているケースが多いので2つ覚えなくていいのは助かりますね。😂
さて、今日はとある北欧のテック系スタートアップのピッチデック(投資判断資料)の中身を分解して解説していきたいと思います。でてくる英単語はおそらく基礎教育で学ばない馴染みない言葉が多いと思うので1つ1つ紹介していきたいと思います。(と思ったらすでに自分の文章カタカナが多い🤮)
1つお断りしておくのは、国や会社によって言い回しが微妙に違ったり、省略の仕方が異なるケースがあります。そこは本質を押さえれば自分である程度メイクセンスできると思います。
ピッチデック(投資検討資料)の構成
今回紹介するデックはとても綺麗に作られており、とても読みやすかったです。資料はコーポレートカラーに統一されておりデザインも洗練されていました。ページ数は約40ページで少々ボリューミー。シリーズBで10億円の調達なので、情報が多くなることも頷ける。
さて会社が特定されてはいけないので一部省略したり、文言を変更していますが大まかには以下の通り。1つ1つみていきましょう。
1.Executive Summary(エギュゼクティブ サマリー)
要するに概要ですね。この1ページを読めばこの40ページで伝えたいことのキーポイントを理解できるようになっています。ここはかなりセンスが問われますし、作り手の意図がもっとも色濃く出るページですね。
2.Milestones(マイルストーンズ)
マイルストーンは聞いたことがある人も多いはず。これは創業からこれまでの歩みをまとめたページになっていました。マイルストーンの語源はもともと古代ローマで1マイルごとに設置していた標石のこと!しかもこの時代のマイルはローママイルといって1000歩を基準にしていたとか。余談でした☺️
3.Problem&Solution(プロブレム&ソリューション)
この資料では「課題&解決策」という意味で使われています。この部分はとても大事で「ユーザーとなる人達が○○に悩んでいて、それを解決するために私たちのサービスでは○○するのです!!!」とアピールするところ。ここが読み手に伝わらないとこの先の約35ページ分の意味がなくなってくるのです。サービスの存在意義と捉えても結構です。
4.Market(マーケット)
マーケットは市場という意味があります。スーパーマーケットも1つの市場、株でおなじみの東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQも市場です。その存在が予告されていて、売り手と買い手が集まる場所であればマーケットと言えるでしょう。この資料では自分たちが売り手である場合買い手がいる場所や規模をマーケットとして紹介しています。一般的に投資家にとってこのマーケットが大きければ大きいほど魅力的です。例えばマーケットの1%を取れた時に期待できるリターンがより大きくなりますからね。
5.Competitive Landscape(コンペティティブ ランドスケープ)
Competitor (コンペティター)という言葉があります。競合相手という意味になるのですが、これをCompetitiveとすることで「競争的な」になって、Landscapeは全体の景色みたいなニュアンスになるので、競合勢力図や競合と自社の立ち位置みたいな解釈ができると思います。このような状況では競合サービスと比較して自社サービスがいかに優位なポジションにあるか、または競合と思われるサービスといかに差別化しているかをアピールします。
6.Growth(グロース)
Growは成長。例えば人、動物や植物の成長をさしたりします。ニュアンスとしては大きくなる、拡大、拡張するとか。このような資料で使われる場合は成長戦略などを説明する場合に使われます。
7.Management Team(マネジメント チーム)
マネジメントは経営を意味し、そのチームなので経営陣という意味になります。この資料には経営陣の略歴の記載がありました。ここで面白いのは日本企業と欧米企業の経営陣略歴やプロフィールの書き方に大きな違いがあります。欧米はアピール要素が強く、日本は淡々と事実を書く傾向にあります。(このネタ面白いから別に記事にします😇)
8.Financials(ファイナンシャルズ)
Financeは金融学とか融資とか資金調達とか複数の意味を持つ言葉です。これは一般的な言葉なので補足は必要ないでしょう。この資料では売上、販管費、営業利益のこれまでの推移が表現されていました。かなりざっくりとしたPL(損益計算書)ですね。
9.Product roadmap(プロダクト ロードマップ)
Productは製品でroadmapは目標達成までの道筋みたいな意味を持ちます。つまり製品(サービス)に軸を置いた今後の道筋を示している資料になります。○○機能は何年何月まにリリースして、○○円の効果を得るみたいなことがいくつか書かれています。これをみて投資家は時系列で全体感をつかみます。
10.Revenue growth(レベニュー グロース)
さきほどもできてた単語です。これにrevenueが足されるわけですが、収益や売上という意味です。この資料では売上のニュアンスで使われていました。この先5年間の収益がどのように伸びて、どのように構成されるのかグラフで説明されていました。投資家はこのグラフをみて将来性を確認するわけですが、どのスタートアップも十中八九右肩上がりのグラフを出してきます。それは当たり前で圧倒的な成長を目指して、そのために資金を集めるわけです。逆に投資家もリスクが高いスタートアップに投資をするためですが、それ相応のリターンが期待できないと投資する意味がなくなってしまうわけです。
11.Forecast(フォーキャスト)
Forecastは予測や予報という意味がある単語です。皆さんの身近なところで天気予報という言葉があると思いますが、これは英語でWeather Forcastと言います。まんまですね😂 このピッチデックではざっくりしたPL(損益計算書)でこの先5年の売上、販管費、利益がグラフで表現されています。このような予測でビジネスは進みますよ〜ということです。先ほど1つ上で説明したRevenue grouthのPL的内訳です。勘が鋭い人だと業界特性などを考え、これらの数字から矛盾や違和感などを感じることもあるでしょう。
12.Risks(リスク)
Riskは説明するまでもなく普段の生活にも浸透している英単語です。危険や恐れという意味のある英単語ですが、このようなピッチデックでは事業を進める当たって予測される危険(Risk)を説明し、どのように対応するのか説明する必要があります。ピンチはチャンスという言葉ありますが、このようなリスクをきちんと想定し、対処法が考えられているということは投資家にとってはプラスに働きます。
13.Cash Flow(キャッシュフロー)
Cash flowはCashであるお金とFlowという流れの2つの単語に分解できます。読んだままの意味でお金の流れとなります。例えば日本の場合、上場会社は財務三表と呼ばれるPL(損益計算書)BS(貸借対照表)以外にキャッシュ・フロー計算書というものの作成が義務付けられていますが、キャッシュフローは会社にとっての血液の流れでとても大事な要素です。どれだけ売上の勢いがあってもキャッシュ(現金)が先にでていくビジネスモデルの場合は黒字倒産ということも考えられるからです。この資料で出資を受けた後の現金残高の推移などがグラフで表現されていました。投資家へこのラウンドの出資を受けられなかった場合、いつまで事業を継続できるか説明をしています。
14.Indicative Terms(インディケーティブ タームズ)
これは難しい言葉ですね。私は指標となる条件と訳します。なので実際に個別に条件は調整して決めて行くけれども現在はこのような条件で募集しています!というニュアンスで情報を出しているのだと思います。なんの条件を指すのか?このピッチデックはもともと投資家たちに出資をお願いするときに使う資料です。つまり出資を受けるにあたっての細かい条件を記載しているページになります。投資を検討する資料であれば必ず含まれている内容になります。募集金額、会社の時価総額、発行株数、1株あたりの単価、該当する募集シリーズ、残余財産優先分配権などについての記載されています。ここは細かいので今度別で記事にします🖥
15.Indicative timeline(インディケーティブ タイムライン)
1つ上と似ているのですが、指標となる今後の流れと訳します。新しい資金調達を行うあたって既存投資家との条件面の調整や、取締役会での承認、そして調達のクローズの時期など全体の流れが説明されています。投資家はこれを見て、今後どのようなスケジュール感で自社内の承認をとって出資をすすめるかイメージをすることができるのでとても重要です。
16.appendix(アペンディクス)
Appendixは別表と訳すことができます。このような説明資料の他にも契約書でも使われていたりしますね。資料のメインストリームには入れないけど、補足資料として見てもらいたいものを最後に入れたりします。この資料では現在の株主構成が説明された表がついていました。3ページ分あるので結構なボリュームになります。このような資料こそ最後にアペンディクスですね!
以上です!!!!!!!!!!
いかがでしたか?これはあくまでとある会社から送られてきたピッチデックの中身を紹介しました。会社によって作り方は違います。それは戦い方や見せ方も作戦の1つですから、当然構成や中身は大きく変わります。
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