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【時事抄】 「中小企業」を「中堅企業」に

中小企業、中堅企業、というのは抽象語です。経済全体を語るときに、こうした「十把一絡げ」なとらえ方を、個人的には戒めています。「日本人は〜」「男ってやつは〜」「女ってのは〜」「今の若者は〜」。よくあります。ミクロの視点を常に念頭におきつつ、マクロ統計は眺めたいものです。

中小企業をめぐる日本経済新聞の記事を見てみましょう。

<要約>
日本の中堅・中小企業が持つ潜在力への期待が高まっている。世界に伍して戦う技術と人材を持った中堅企業の成長力は大企業を凌ぎ、中小企業がイノベーションを発揮すれば、日本は成長軌道を取り戻せる。

買収を仕掛ける「下請け」企業が全国的に増加しており、「事業承継・引き継ぎ支援センター」の大半は中小企業のM&Aだ。成約件数は22年度に1681件と10年前の約100倍に達し、企業を買収を成長の機会を捉える意欲が高い。

ドイツが日本の将来の参考になる。ドイツの中小企業1社あたりの輸出額(製造業)は、日本の2.8倍にあたる約7億5100万円で、ニッチ分野で高いシェアをもつ企業をドイツ国内では「隠れたチャンピオン」と称える。日本に不足するのは、「隠れチャンプ」企業数ではなく、「隠れチャンプ」たり得る中小企業が経済の牽引役だとする社会的な一般認識だ。

りそな総合研究所の試算では、中小企業1%賃上げの経済効果は5473億円に達する。全ての大企業1%賃上げによる効果3741億円を大きく上回る。経済産業省は、中小企業がより規模の大きい「中堅企業」に成長する将来像を描いている。従業員2000人以下、資本金1億円以上10億円未満を中堅企業として、国も政策で成長を後押しする。


中小企業基本法では、中小企業を業種別に次のように定義づけています。

「せい・おろ・こ・さ」
「3・3|1・1|5・5|5・1」
で覚えたものです。はい。

財務省の「法人企業統計調査」では、資本金1億円未満をまとめて中小企業と見なして、統計データを作成しています(大企業は資本金10億円以上。1~10億円を中堅企業と定義)。

近年、大企業と中小企業の中間に位置する「中堅企業」という基準を新設して、税優遇などの政策で支援する動きが始まっています。従業員数で区分し、300人以下を中小企業、301~2000人を中堅企業と定義します。

中小企業は約360万社あって、全企業数の99.7%を占める。従業員数は約3,300万人で、従業員の約7割。大企業に勤める従業員は約3割の1,430万人です。(いずれも2016年/平成28年の数字)

雇用を通じて人々の暮らしを支え、イノベーションの担い手として、地域経済の発展の原動力として、多くの役割を中小企業が担っています。でも、個々の企業を丹念に見る姿勢が大事。マクロ統計の数字だけ見ての判断は、物事を見誤るでしょう。

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