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はじめて「推し」ができた話

しばらくnoteを更新していない間に、コロナは明け、海外との往来も通常運転に戻り始めた。

中華圏のアーティストもちらほらとワールドツアーを再開し始めている。
黄明志(Namewee)も今年の冬にワールドツアー「大飛機世界巡廻演唱會」の開催を発表し、4月1日には台北アリーナで第一弾ライブを成功させた。

「大飛機」の開催地にはなんと日本(大阪)も含まれていて、情報を聞いた時には思わず右手のこぶしを高くつき上げた。しかし、今のところ台北ステージ以降の続報がなく、日本のファンとしてはつき上げた右手は一旦下ろして、最新のアナウンスが出るのをじっと待っているしかない。

黄明志の来日を首を長くして待っている間、私はよく彼のYouTubeチャンネルやKKBOXの自分用黄明志プレイリストをヘビロテしている。

かれこれ黄明志の曲を聴き始めて6年以上になるが、今でもファンでいられるのは本当にありがたいことだと思う。

そして最近ふと、一人のアーティストの曲をここまで網羅的に聴き入るということは今までの人生でなかったのではないか、と気づいた。

どちらかといえば、私はこれまでいろんな歌手の自分の好みに合った曲だけをつまみ食いして聴く「いいとこどりの雑食系」だった。

それゆえ好きな音楽の話をすると、所謂ツウな曲は知ってるのにその歌手の代表曲は知らないという逆転現象が発生して、なんか変な空気になることもあった。

そんな私にとって黄明志との出会いは、「好きな歌手は誰ですか?」という超難問に答えを与えてくれただけでなく、はじめて「この人のライブに行きたい」と思わせてくれる存在を作ってくれた。

まさに「推し」、【推しの子】ならぬ【推しのおじさん】ができた瞬間だった。

最初に黄明志を知ったのは大学2年生のころ。
当時大学で広東語の授業を取っていた私は、授業後にスマホで良質な広東語独習用ツールがないか調べていた。
(たぶん、「広東語 学習」みたいな検索ワードだったと思う。ちなみにそんな都合の良いツールは見つからなかった)

すると、検索結果の上位に黄明志の『學廣東話』を紹介する記事が出てきた。いま思えば、純粋無垢な広東語学習者にこの曲をサジェストしてくる Google先生の気まぐれっぷりには心底おどろ……いや、感謝するしかない。

ともかく、私はそのシンプルな曲名に惹かれてページを開いた。

最初、「広東語のおぼえ歌かな」と思った。基本的な発音とか簡単な挨拶を歌にのせて紹介してくれるのかもしれない。私は再生ボタンを押した。

全然違った。

その曲には歌のお兄さん、お姉さんもいない。ゆっくりな速度で役に立つフレーズも教えてくれない。

その正体は変な眼鏡をかけたおっさんとセクシーなお姉さんがラップで絶対に使っちゃいけない汚い言葉を連発するコミックソングだった。

当時の私は何を言ってるのかはさっぱり聞き取れなかったが、なんとなく下品なことを言っているのだけは伝わってきた。

正直な感想は「なんだこの曲」だった。でもこの時、なぜかメロディーが頭から離れなかった。気づけばその日、私はこの曲を何度もリピートしていた。

『學廣東話』の歌詞については以前の記事で解説しているので興味があればご覧ください)

その日の夜、すっかり『學廣東話』に洗脳されてしまった私は香港好きの母にこの曲を薦めてみた。目つきはもうカルト宗教勧誘者のそれである。
すると母は、

「ああ、知ってるよ」

と一言。そしてその後、黄明志という人物についてぺらぺらと語り始めた。なんとすでに入信済みではないか!

結局母は彼のアルバム(『亞洲通輯』)まで持っていた。
こうして、私はそのアルバムを借りては聴き浸り、黄明志の世界、ひいてはアジアのポップでちょっぴりディープな文化世界に一歩足を踏み入れることになった。

ちなみにアルバム『亞洲通輯』の中でも一番のお気に入りは『泰國情哥』。私のプレイリストではオールシーズンスタメン出場の不動のエースだ。

大学時代の夏休みに毎日狂ったように聴き続け、休み明けにはそらで歌えるようになっていた。

さらにはタイという国への関心も目覚めた結果、一人でバンコクに行ってMVのロケ地巡りをするという狂気のファンになってしまった。


サビで出てくるあの場所(コロナ禍直前の2019年12月、バンコク)

そういうわけだから、黄明志は私の大学時代から現在までの行動選択にも結構大きな影響を与えている。

度々ネットを騒がせる彼の露出を考えると、遅かれ早かれ彼の存在を知ることになり、ファンになっていたとは思う。

ただ、大学生の比較的早い時期に偶然出会ったからこそ、時間をかけて彼を知り、自分の視野を大きく広げることができた気がする。

ここまで一途にファンを続けていられるのは、彼の作る曲が自分の好みにドストライクなのは言わずもがな、やはり一番は毎回私を新しい世界に連れて行ってくれるからだろう。

作品や発言を通して、彼だからこそ見える視点や新鮮な価値観に接していると、「あなたの見ている世界を私も見てみたい」というさながら口説き文句のような好奇心が自然と湧き上がってくる。

黄明志(を含めたアジアのポップカルチャー)が見せてくれる世界は往々にして私たちが想像・経験したことのない世界で、それはきっと私たちの心をもっと豊かにしてくれるものだと思っている。

実はこのnoteも本当はそんなことを伝えたくて始めたつもり……(小声)(1年以上更新なし)

まあ、たとえ更新が少なくても黄明志を応援する気持ちが弱まることはないので、どこかのタイミングで更新した時には、「黄明志がやたら好きなあいつか」と思って読んでやってください。

いい感じのまとめが思いつかなかったので、とある曲の歌詞で締めてみる。何の曲か分かったらきっと話が合いますね。

期待每天都有新的挑戰
為我點讚分享不見不散

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