台湾メディアを通しての分析メモ:


    中国軍(中国人民解放軍)の演習日程は、当初8月4日㈭~7日㈰の正午までの予定だったが、8日㈪午前10時まで延長された。さらに、演習区域が台湾東沖に一箇所追加され7区域となっていた。これは、ペロシ米下院議長に日程に台湾も加えられたことも起因している。
 しかし、今回の中国演習におけるスポークスマン(中国人民解放軍東部戦区、陸軍大校)、によると、4日㈭午後にはミサイルはすべての目標に正確に命中し、実弾発射訓練の全ての任務は無事完了したため、実弾演習の海空域の管制は解除すると表明した。これにより、予定の演習期間より大幅に短縮され、演習開始後約3時間ほどで終了したということになる。これは、主に諸外国の航空機や船舶の航行に影響が多大だったことに起因していると推察できる。
 そして、ペロシ氏は、台湾訪問時のスケジュールも過密で、本来訪台しても数時間と見られていたが、韓国の尹大統領との直接面会もなくなったため、台湾で一泊し翌日の午後まで滞在することとなった。
 その面会相手は、蔡英文総統に留まらず、対外的に報道されている主要閣僚や各党党首等以外に、いわゆる民主化運動家たちとも面会していた。その顔触れは、天安門事件の学生指導者で、香港経由でフランスに逃亡し、その後ハーバード大学卒業後台湾に移住したウイグル族のウーアルカイシ氏(吾爾開希氏)、香港民主化運動の際に閉店に追い込まれ一時拘束され台湾に移住した銅鑼湾書店店長の林栄基氏、中国の裁判により「国家政権転覆罪」で5年の実刑判決を受け、中国で監禁され今年4月釈放後台湾に帰国した李明哲氏らのようだ。この面会が実現したのは、民進党の意向らしい。
 しかし、今回訪台の際にペロシ氏の通訳を務めたのは、美國在台協會(AMERICAN INSTITUTE IN TAIWAN)の人物で、ペロシ氏の発言が極力中国を刺激しないよう配慮したと推測できる。本来、台湾政府が来賓を招待した際には、基本的には台湾の外交部か立法院の通訳、あるいは稀に来賓に随行した通訳が務めることになっているので、明らかに意図的だと考えられる。
 そして、今回ペロシ氏の最大の成果とも言えるTSMC(台湾積体電路製造股份有限公司)劉徳音(Mark Liu)会長との会談により、ペロシ氏にとっては、台湾訪問は成功裏に終わったのかも知れないが、バイデン大統領の指示を越えている可能性もあり、却って新たな火種を生んだと言える。

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