見出し画像

台湾ワインの主要黒ぶどう品種『黒后』

『黒后』=『ブラッククイーン』

現在、台湾で作られている赤ワインのほとんどに
『黒后』という黒ぶどうが使われています。

『黒后』とは『ブラッククイーン』というぶどう品種の台湾での名称です。
”ブラック”+”クイーン” ⇒ ”黒い”+”皇后” ⇒『黒后』という感じでしょうか?

自分の知る限りでは…
一部、白ぶどうとブレンドしたワインや、または、台湾で独自育種された黒ぶどう品種を使用しているワインもありますが、
ほぼ大部分の赤ワインは、ブラッククイーン単一で作られています。

同じ赤ワインでも、味わいとしては、甘口から辛口、そして、スパークリングやフォーティファイドまで、さまざまな種類が作られています。

ちなみに、複数の国際ワインコンクールで金賞などを受賞し、世界的にその名と、台湾産ワインを知らしめているパイオニア的存在と言える、
樹生休閒酒荘というワイナリーの『紅埔桃』というフォーティファイドワインも、ブラッククイーンで作られています。

『ブラッククイーン』は日本生まれ!

台湾のワイン醸造用ぶどうの代表品種である『ブラッククイーン』ですが、実は、日本で新たに開発育種されたハイブリッド品種のぶどうです。

1927年(昭和2年)、岩の原葡萄園の創業者であり、“日本のワインぶどうの父”とも称される川上善兵衛により、北米系ぶどう品種「ベーリー」と欧州系ぶどう品種「ゴールデンクイーン」を交雑して作られました。

『ブラッククイーン』の特徴

『ブラッククイーン』は濃い黒紫色のぶどうで、果実は柔らかで果皮が厚く、醸造すると一般的に、色の濃い、酸味の強いワインになります。

日本では、発祥の地、新潟県をはじめ、山梨県や山形県、そして、長野県でより多く栽培されている印象があります。

個人的にも、ブラッククイーンのワインは、その豊かな、強い酸味が特徴で、その点好みがわかれるところかな…?と、

中華で言うと「豚の角煮」のような濃厚な味付けの煮込み料理に合いそうというイメージを持っていますが、

その栽培や収穫方法、醸造方法によって様々な味わいやキャラクターを引き出すことのできる余地のあるぶどう品種でもあるとのことです。

『ブラッククイーン』の台湾での歩み

台湾では、1940年代後半~50年代にかけて、台湾の気候風土に適応するブドウを模索すべく、世界の様々なぶどう品種が試験導入されていましたが、

その流れの中、『ブラッククイーン』は1960年代前後に日本から試験導入されたとの記録があります。

その後、『ブラッククイーン』と台湾の気候風土との相性の良さや、台湾におけるぶどう栽培技術研究の進化と普及、ワイン醸造用ブドウの栽培を奨励する政府の当時の政策など、様々の要因が相まって、

『ブラッククイーン』は台湾を代表する、また、商業的な栽培が可能な唯一と言っていい、ワイン醸造用黒ぶどう品種となり現在に至っています。

台湾での主な産地は、台中市后里区、台中市外埔区、彰化縣二林鎮などが挙げられます。

栽培面積は2006年の約290haから年々減少しているようで、2020年には約65haになっています。

台湾ワイン用ぶどうセピア地図

世界での『ブラッククイーン』

日本生まれの『ブラッククイーン』は現在、台湾以外にも、

主に東南アジアのワイン生産国…タイ、ベトナム、カンボジアで栽培、醸造されており、

特にタイでは『Pokdum』という名前となって、広く知られているようです。


≪参照文献・資料≫
『TAIWAN TODAY|台湾産ワイン「紅埔桃」、ヴィナリ国際ワインコンクールで金賞』
『Vitis International Variety Catalogue VIVC|BLACK QUEEN』
『善兵衛のぶどう|岩の原葡萄園』
『葡萄園について|岩の原葡萄園』
『ブラック・クイーンとは――味の特徴、おすすめワイン、主な産地をチェック|WINE BAZAAR』
『小世界Newsweek|台灣在地釀葡萄酒工藝 喝出獨特台灣味 』
『南投酒廠|關於我們』
『葡萄產業沿革與栽培技術之發展|林嘉興 台㆗區農業改良場』
『二林契作農村的轉變——以葡萄、紅龍果為例|陳怡婷 國立臺灣師範大學地理學系第四十四屆碩士論文』
『農產品生產面積統計|農業統計資料查詢|行政院農業委員会』
『Black Queen Grapes|Michael Bredahl World’sBestWines.eu』
≪写真引用元≫
Ursula Brühl, Julius Kühn-Institut (JKI), Federal Research Centre for Cultivated Plants, Institute for Grapevine Breeding Geilweilerhof - 76833 Siebeldingen, GERMANY

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?