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心、社会、オープン・ダイアローグ

こんにちは、対話スペースけやきのきよこです!

オープン・ダイアローグはもともと精神病院での治療のために開発されたものです。
でも、特に日本では、対人問題や福祉・教育、組織管理など色々な社会的課題に、オープン・ダイアローグがそれぞれの場所に応じた形で適用されるようになってきています。

今日はオープン・ダイアローグが今社会に必要とされている理由について書こうと思います。

心と社会がつながる対話

人の心は、その人がいる社会的な環境や、人との関わりによって作られ、そして生涯変化していきます。

オープン・ダイアローグはあくまで対話であり、社会的な要素を直接変えるものではありません。
解決や解消を目指すのではなく、ただただ対話を続けていくことを目指しま
しかし、対話をすることにより、話し手さんの心の中で自然に思考の進展が起こり、心の状態が良くなって行く現象が見られます。

オープン・ダイアローグは社会構成主義という考え方がコンセプトの一つとなっています。
世の中には客観的な事実というものはなく、個々人の主観がその人の感じる社会を作っている、という考え方です。

オープン・ダイアローグでは、
あなたと私は違っていていい。
その差異を感じられる事が対話の価値。
ととらえます。

話さなければ理解してもらえない時代

現代は分断の時代とも言われます。

過去、人間が生活を営むためには、集団で協働して行くことが重要でした。そのためには、人々は共同体に広く浸透している思想や宗教、文化的な価値を取り入れ共有する必要がありました。
それは、一面では話さずとも分かるはずという他者信頼にもつながっていたでしょう。
もちろん、共通の価値観が個々人の価値観や意見を飲み込んでしまうという悪い面もありましたが。

その後、産業や技術の変化、機械化により、必ずしも他の人と共同で作業を行わずとも生活して行けるようになりました。
その結果、過去は必要だった共通認識のいくらかが必要性を失い、姿を消してきています。

同時に、インターネットなどの情報テクノロジーにより「話さなくても暮らせる」生活が実現しています。
そのため、他者との直接的なコミュニケーションの必要性と頻度は年々減少してきました。

これらの事から、今の社会では、話さなければお互い理解できない、話すためにはその場を作らなければならない、という状態が生まれています。

現代は自尊心(自己肯定感)を保ちにくい時代

人が自分を受け入れたり認める肯定的な気持ちを、心理学では自尊心(Self-Esteem、自己肯定感とも)と呼びます。
自信とか、自己信頼感、と言った言葉とも重なる概念です。

自尊心は、人によってもともと高めだったり低めだったり、個性があります。
その個性は生まれつきの特性や、幼少期に周りの人からもらった受容感や評価などのフィードバックが元になって作られると言われています。

でも、自尊心はずっと変わらないわけではなく、そのベースから高くなったり低くなったりします。
毎日他の人から受け取るフィードバックを受けて、常に上がったり下がったり微調整が行われています。
つまり、他の人にどのように受け止められているかを感じることで、自尊心は変化するのです。
(ソシオメータ理論)

他者からのフィードバックとはもともと言語的なものだったり、行動だったり物や金銭であったり、色々ですが、現代はそのフィードバックの形が変化し、不安定だったり分かりにくくなっている部分があります。

例えば、承認欲求という概念とも重なる部分ですが、SNSでは他の人からの肯定的なフィードバックが「いいね」など非常に分かりやすく数字として表されます。
人と直接つながらずとももらえる肯定的なフィードバックに、自己肯定感を助けられている方も多いでしょう。

しかし、いいねで上がった自己肯定感はほんの短い期間しか維持されません。
SNSで自己肯定感を長期保つことは難しく、逆に下がる危機感としじゅう戦っている方も多いのではないでしょうか。

また、ここ数年の新型コロナウイルスの流行で、対面でのコミュニケーションにも変化がありました。

対人距離が広くなり、握手やハグなどの肯定的なボディタッチは避けられるようになりました。
マスク越しの称賛は、実は口元が笑っていないかもしれません。
そもそも話しかけられることも話しかけることにも口を開く不安がつきまといます。
他人が分からない、という不安を抱える方が増えているとも言われます。

今の時代は、自尊心が低くなりやすい、というより、どちらかというと、不安定になりやすい世の中、とも言えるかもしれません。
例え自尊心が高くても、高低しやすい不安定な人は敵意や怒りを感じやすい傾向がある、という研究があります。(Kernis et al., 1989)

過去と比較すると治安が良く寝食に困らない生活をしている人が増えているのに、精神的な不安や問題を抱える人は減るどころかむしろ増えているようです。
この事について、自尊心という概念は、一つのヒントを与えてくれるのではないかと思います。

安全安心な対話の場所を作る

これらのことを考えると、肯定的に受容してもらえるという安心感や、意見を否定されない、という心理的安全性が対話の前提として必要になってきているのではないでしょうか。
オープン・ダイアローグはそこに寄り添うことができる対話方法だと言えます。

〈オープン・ダイアローグについて〉
フィンランドで考案された対話メソッドです。
対等な立場でお互いに敬意を持ちながら「聴く」「話す」を続けていくと、本人の中から自然と改善や回復が湧いてきます。

元は精神疾患の治療法として生まれましたが、
現在では福祉や教育、会社組織など色々な場所に広まりを見せています。

★対話で話された内容は外部へは持ち出されません
★対等な立場で行う、安心・安全な対話の場です
★対話中のどんな一言にも、沈黙にも価値があります。

対話スペースけやきは広島県福山市を中心に、オンライン・オフラインで対話実践やオープンダイアローグに役立つ勉強会を行っています。

下記公式LINEにコミュニティの概要や開催予定などを掲載しています。
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