イェラグ

【アークナイツ】三族議会とリコリス院を巡る陰謀。"雪境"イェラグの考察

サムネイルは公式HPより。
【注意】この考察は非公式であり、個人の見解や推測、一部ネタバレ要素を含みます。2020年3月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。
シキネと申します。前回同様に、複数のソースを元に執筆しました。参考リンクとして最後にまとめています。

空陰りなば、そは雪舞う兆しなり

小さな宗教国家イェラグ。神聖な山、カランドを宗教の中心に据えたその国は、一年を通して雪が降ることから"雪境"の名を冠しています。イェラグの政情は不安定で、保守派と改革派の間に大きな溝が存在、一触即発の状況です。様々な思惑が複雑に絡まり合い、先を予期することのできない混沌とした国。今回は、そんなイェラグについての考察です。

イェラグの名前の由来について

まず、「イェラグ」(Kjerag)という名前について。この名前と一致する山が、ノルウェーのローガラン県、サンネス市にあります。

標高1,110メートルのこの山は、リセボトンという村の南西にあるリーセフィヨルド(※)の南岸に位置し、ハイキングで人気の観光スポットでもあります。
※ノルウェー語で「光のフィヨルド」。フィヨルドとは、氷河の侵食作用によって形成された複雑な地形の入り江を意味する地理学用語です。

最も有名な観光名所の1つとして、シャラーグボルテンの「奇跡の岩」があります。

この巨石は山のクレバス(氷河によって形成された深い割れ目)に挟まれた5立方メートルの氷河堆積物です。

イェラグという名前自体はこのノルウェーの山に因んでいると考えられます。しかしここで注意したいのは、イェラグの"雪境"としての特徴はノルウェーに見られないことです。意外に思う方もいるかもしれませんが、ノルウェーは高緯度に位置しているにも関わらず四季がはっきりしており、季節によってはとても暖かです。海岸線は温帯(西岸海洋性気候)に属します。そのため、一年を通して雪が降るというアークナイツにおける「イェラグ」の設定とは合致しません。

ではどこがモデルとなっているのか?
その考察の前に、アークナイツ内でイェラグを取り巻く状況について整理していきます。

イェラグの政情-三族議会とリコリス院

シルバーアッシュ、プラマニクスのプロファイルから、イェラグの権力構造について知ることができます。

・シルバーアッシュについて

イェラグには3つの大きな家柄が存在します。文字通り「三族議会」と呼ばれるそれぞれの一族はイェラグにおいて政治の中枢を担っています。シルバーアッシュ家は三族議会の一つであり、その当主でありながらロドスへオペレーターとして加入したエンシオディス・シルバーアッシュは自身の家柄の名称をそのままコードネームとして使用しています。

決して、順風満帆な幼少期を送ったわけではないことが彼のプロファイルから分かります。

シルバーアッシュの両親は彼がまだ少年の頃に不運な死を遂げたとされている。しかし噂によると、彼らの命を奪ったのはシルバーアッシュ家の政敵によるものであると、現場の証拠が告げていたという。(シルバーアッシュ第三資料)

両親の死後、シルバーアッシュ家は没落。彼は後悔の念に囚われることなく、2人の妹が自立するまで育て上げ、ヴィクトリアへ留学します。シルバーアッシュ家はイェラグ三族議会において名ばかりの存在と成り果てましたが、そんな情勢は再び舞い戻った彼自身の手によって再び大きく変わりはじめます。

彼はイェラグで禁じられていた多くの現代産業の封を切り、それらを独占しました。シルバーアッシュが直接経営するカランド貿易は国外へ向けて生産した商品や原料を大量に輸出。同時に現代工業品を輸入することで、イェラグにおける他国とのハブとしての役割を果たし、瞬く間に巨額の資産を形成。シルバーアッシュ家は三族議会へ返り咲くことに成功します。

・プラマニクスについて

名前の由来は、Pramana(サンスクリット: प्रमाण) 「世界について正しく、確かな知識を得る手段」+女性形接尾辞-ixと考えられます。

本名、エンヤ・シルバーアッシュ。上述のエンシオディスの妹です。
プラマニクスは極めて過酷な試練を潜り抜けた結果、「カランドの巫女」として選ばれ、イェラグにおける最高権威者となります。イェラグにおける宗教の権力は大きく、三族議会の権力者であるシルバーアッシュでさえ(例え対外的なパフォーマンスの意味があるにせよ)公的な場では妹であるプラマニクスに対して合掌礼拝しなくてはいけません。そして、この権力を有する宗教組織はリコリス院と呼ばれ、信仰を集めるカランドの巫女の背後で暗躍しています。

・シルバーアッシュ家と三族議会、リコリス院の関係性

その混沌とした様子がシルバーアッシュの第四資料から分かります。

不安定で統制がとれていないイェラグ三族議会では、保守派と改革派の衝突は日に日に激しさを増している。
カランド貿易は表向きはただの貿易会社だが、その真の支配者は、保守派の両族の族長と不仲であるシルバーアッシュ家の当主、エンシオディス・シルバーアッシュ。
(中略)
リコリス院を有する保守派は、巫女であるプラマニクスを利用しシルバーアッシュ家に圧力をかけ、三族議会から抜けること、谷あいと鉱区の実質的な統治権を差し出すことを要求している。(シルバーアッシュ第四資料)

以上を踏まえ、それぞれの関係性について図表でまとめてみました。

立ち回り

これがイェラグにおける権力構造であり、まるで僅かな振動で雪崩れてしまいそうな雪山のごとく、緊迫したバランス感で成り立っています。

イェラグのモデル

イェラグ出身の他オペレーターについても着目していくことで、その題材となった場所を探っていきます。

・マッターホルン
まず名前の由来について。マッターホルン(Matterhorn)は、アルプス山脈に属する標高4,478mの山で、スイスとイタリアの国境となっています。

この山を踏破することは登山技術が求められる他、氷食尖峰(氷河の侵食作用によってできた地形のこと。ホルンとも言われる。)と呼ばれる山間が登山者の恐怖心を煽ります。霊峰ということもあり、アルプスの他の山々よりも後期に踏破されました。
次にキャラ絵について確認します。彼の持つ武器である、

マッターホルン

ククリ(ネパール語: खुकुरी 、英: Kukri)は「グルガナイフ」とも呼ばれ、ネパールで使用される刃物です。ネパールの山岳民族から構成される戦闘集団、グルガ兵にとってククリは名誉の象徴となっています。

・クーリエ
配達と偵察任務をこなす彼の名前、クーリエ(英:courier)は「ある人や場所から別の人や場所へメッセージ、手紙、小包を運ぶ人」を意味します。

ロドスは通信技術がすごすぎませんか?このままじゃ……僕は失業しちゃいますよ!(クーリエ会話3)

様々な面において技術が進んでいるロドスですが、とりわけ「通信技術」に注目する彼の発言は、テレビやインターネットが世界で最後に普及した国、ブータンを想起します。

ネパール、ブータンともヒマラヤ山脈付近の地域ですが、これだけでは根拠としてやや希薄です。そこで更にプラマニクスの持つ聖鈴に着目します。

プラマニクス_鈴

この聖鈴はチベットの代表的な密教仏具である金剛鈴(ガンター)の形状と似ています。

澄んだ音が特徴的です。

さて、ここまででイェラグはヒマラヤ山脈に関連することが見いだせてきました。ヒマラヤ(チベット語:हिमालय、himālaya)はサンスクリット語で、hima(ヒマ「雪」)+ ālaya(ア-ラヤ「すみか」)つまり「雪の住みか」を意味します。加えてチベット(亡命政府)は現在に至るまで国境線上で隣国との鬩ぎ合いがあり、この辺りの事情がイェラグを示す"雪境"という表現につながっていると推測します。

イェラグの宗教

イェラグの宗教がチベット仏教であることは想像に難くありません。公式PVからもその要素を読み取ることができます。数珠を手に、合掌するスタイルは仏教の特徴です。

プラマニクス

ー公式チャンネル イェラグPVー

PVに登場する旗には黄、青、白、赤、緑の色が使用されており、

国旗

ー公式チャンネル イェラグPVー

チベットで使用されている旗の色の種類と一致します。

ー雪山獅子旗ー

シルバーアッシュが飼う鳥の名前「テンジン」も、チベットで使われる名前として一般的です。

イェラグ考察のまとめ

イェラグのモデルについて
・名前の由来はノルウェーにある山
・宗教国家であり、元となった宗教はチベット仏教
・ヒマラヤ山脈付近の多くの地域の特性を取り入れている
・神聖な山、カランドのモデルはヒマラヤ山脈

イェラグの政情について
・三族議会によって統治され、シルバーアッシュ家はかつて他2家により衰退した
・海外留学から帰国したシルバーアッシュはカランド貿易を設立し、他国との貿易を促進、再び膨大な富を築き上げた
・改革派のシルバーアッシュ家は保守派の三族議会、リコリス院と対立している

シルバーアッシュは、何らかの思惑を持ってロドスへ協力しています。保守派と改革派が鬩ぎ合い一触即発のイェラグを鑑みて、ロドス内でもシルバーアッシュへの評価は賛否両論です。そんな彼との信頼関係が築けるかどうかは、ドクターの行動にかかっています。

カランドとロドスが、どれだけ強固な信頼関係を築けるかは、我々の考え方次第なのだ。ならば、せいぜい仲良くやろうじゃないか。我が盟友よ。(シルバーアッシュ会話3)

参考リンク

最後までご閲読、ありがとうございました。

追記 プラマニクスの考察記事を投稿しましたので、もしよろしければこちらもご覧ください。













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