ライン生命

【アークナイツ】悲しき実験体イフリータ、ライン生命"炎魔事件"の考察(ネタバレ注意)

サムネイルは アークナイツ公式チャンネル/ライン生命 PVより

【注意】アークナイツのライン生命キャラ(サイレンス、サリア、イフリータ、フィリオプシス)に関するネタバレ記事となります。各キャラのプロファイルを未読の方はご注意ください。またこの考察は非公式であり、個人の見解や推測を含んでいます。2020年3月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。
※3/27 戦地の逸話「宿題」エピソードを加筆しました。

初めまして、シキネと申します。

日本版リリースから1ヶ月ちょっと経過したアークナイツ。日本での情報はまだそれほど多くないため、普段は海外掲示板サイト「Reddit」で情報収集していますが、ふと、ある投稿が目に留まりました。

サイレンスやサリア、イフリータといったライン生命に属するキャラに関する考察です。イフリータやフィリオプシスのプロファイルから、ライン生命のブラック企業っぷりを窺い知ることができます。アークナイツでは現時点でシナリオとして語られているわけではないため、得体の知れない気味の悪さを感じる程度でした。上記の投稿はそこから更に一歩踏み込み、サイレンス - イフリータ - サリアを取り巻く事件や彼女たちの微妙な関係性を考察しています。いずれ実装されるかも知れないライン生命を舞台とした物語への期待感を増幅させてくれた考察を日本語でも紹介したく、初めてnoteに投稿することとなりました。

この記事はHaoXlee氏がRedditに投稿した内容をベースにしている他、複数の情報ソースを参照しながら執筆しています。最後にリンク集を設けていますので、興味を持たれた方はそちらも参考にしてみてください。拙い文章となるやもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

ライン生命のモデル、ロゴ

正式名称「ライン生命医科学研究所」、アークナイツ公式チャンネルによるPVの動画説明欄では「最新の医療設備をもつ研究組織」と紹介されています。

ラインの英語表記は「Rhine」となっており、ドイツに流れるライン川のスペル「Rhine」と合致しています。この川の一部は、ドイツの世界遺産としても登録されています。

「Rhine」を国土に有するドイツに、「生命医科学研究」の組み合わせはドイツ医学を想起します。19世紀、ドイツの医学は世界に一歩抜きん出ていました。病人や怪我人を治療することを主とする臨床重視のイギリスやフランスの医学に対して、ドイツ医学は研究第一。学問としての側面が強く、コレラ菌や結核菌を発見したコッホを輩出しています。現在でも、ドイツは医療機器メーカーのシーメンスや製薬会社バイエルなど、医療分野で世界に名だたる企業を有しています。

※ライン生命は「クルビア」にあるとされていますが、クルビア=ドイツという意味ではありません。アークナイツの国は現実世界の様々な国の要素を融合していると推測されます。クルビアはどこの国か、という考察はこの記事の趣旨からは離れてしまうため、ここでは割愛します。

ライン生命のロゴは無限大記号(メビウスの帯、ウロボロスの輪?)の内側に+と-を配置しており、明確な関係性は見出せませんがイタリア発祥の電子プロトタイピング・プラットフォーム、ARDUINOと酷似しています。左がライン生命、右がARDUINOのロゴです。

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ライン生命のPVに登場する4人はそれぞれのプロファイルやボイスから全員”元”ライン生命所属であることが分かります(※PVに登場していないメイヤーのみ、現所属)。事件の詳細に入る前に、各キャラのモチーフと基本的な特徴について記載していきます。

サイレンスのモチーフ

サイレンスの種族は鳥のような特徴を持つ「リーベリ」です。リーベリ(Liberi)と似た綴りの(Libera)はラテン語で自由を意味します。昇進2のイラストの外観より、ワシミミズクをモチーフにしていると考えられます。

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ー鎌倉乃フクロウの森にて筆者撮影ー

「サイレンス」というコードネームや眼鏡は、静かな学者のような雰囲気を醸し出し、彼女の性格とミミズクの動物としての習慣との共通点を感じさせます。

イラストを手掛けたNoriZC氏のTwitterでは、大陸版アークナイツのサービス開始前に「Hermer」という名称と共にイラストがアップされていました。

サイレンスは入職時に「オリヴィア・サイレンス」と名乗っており、本名をそのままコードネームとして使用していると考えられます。サイレンスは鉱石病に対する強い信念を持っており、以下のセリフと共にロドスへ加入しています。

この世から全ての鉱石病を根絶するのが、私の望み。(サイレンス入職時)

サリアのモチーフ

サリアの種族は「ヴイーヴル」です。ヴイーヴル(Vouivre)はフランス語でワイバーンを意味し、昇進2のイラストからもワイバーンがモチーフとなっていることが分かります。リスカムやバニラの種族もサリア同様、ヴイーヴルです。

コードネーム「サリア」は一見すると、ごく普通に使われる女性名です。偶然かもしれませんが、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州には「SARIA」というバイオテクノロジーの会社が存在します。

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サリアは仕事中、頻繁に源石(オリジニウム)と接触しているにも関わらず、血液中源石密度は0.11u/L(※サイレンスは0.24u/L、フィリオプシスは0.43u/L、イフリータに至っては0.51u/L)と低い数値を示しており、何らかの特殊な方法で身を守っていると推測されています。※各キャラのプロファイル「健康診断」参照

彼女の戦闘能力は非常に高く、一定距離内のカルシウム元素とその化合物を自由に操作することができますが、敵を傷つけるよりも仲間を守ることに心血を注いでいます。

彼女の指揮方針は防御を主体としたもので多少保守的ではあるが、彼女が参加した任務における死傷者は極めて少ない。
「サリアが盾を掲げたとき、彼女が守るのは後ろのオペレーターではなく、後ろにいる全ての仲間なのだ」(サリア第三資料)

イフリータのモチーフ、文字化けしたプロファイル

イフリータの種族は悪魔に似た特徴を持つ「サルカズ」です。メテオリーテやヴィグナなど、他にも複数のキャラが同種族として実装されています。キャラによって形状は異なっているものの、鋭い耳と特徴的な角を持っています。サルカズ(Sarkaz)の語源は不明ですが、似た綴りの(sarkasmos)はギリシャ語で「冷笑する」「引き裂く」を意味します。他オペレーターのプロファイルからはサルカズは差別を受けている種族であることが分かります。

コードネームのイフリータという名称は、『ファイナルファンタジー』など定番RPGで登場することがあり、わざわざ説明せずとも思い浮かぶ方も多いと思いますが、炎の魔人(あるいは精霊、魔獣)「イフリート」の女性形です。『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』には壺から煙と共に登場する鬼神、イフリートが登場する物語があります。

昇進2のイラストでは、他作品と違わず、彼女の背後に炎に覆われた身体を持つイフリートが描かれています。身につけている火炎放射器は圧縮液化加工されたオリジニウムを燃料とし、イフリータが身につけているアーツ技術による発火現象と合わせることで、対峙する対象を焼き払います。

イフリート、そしてアラブの要素から連想するに、その武器は東ローマ帝国が使用した焼夷兵器「ギリシャ火薬」をモチーフにしていると考えられます。ギリシャ火薬は制御が難しく、たびたび東ローマ帝国の軍艦で自爆を招いていました。狭い地形で猛威を奮う特性は、直線状に伸びるイフリータの攻撃範囲に通じるところがあります。

イフリータの人格面に着目すると、暴力的な言動が目立ち、性格については次のような記載があります。

彼女の性格は、未熟で幼稚であると評価せざるを得ない。
彼女の行動は6-10歳前後の子供と同程度のもので、無鉄砲で反抗的、
さらには単純であり、まだ世の中を知らない子供特有の盲目的で高慢な態度を見せる。思いついたらすぐ行動する彼女は、自分の行動がどのようなリスクを生んでしまうかということは考えたこともないだろう。(イフリータ第一資料)

そして第二資料から、その性格は彼女患っている長期的な神経痛によって形成されていることが分かります。

症状が強く出た際は幻覚を見ることもあると記録されている。その幻覚は巨大な苦痛が実体を持って現れることもあれば、黒焦げの死体や火を纏った動物、そして親密な人物が火の海で苦しんでいる様子などの形で現れることもあるらしい。神経痛の原因は現状の機械や医術では特定に至らず、そうして影のようにつきまとう苦しみが、彼女の暴力的な性格を形成する要因にもなっている。(イフリータ第二資料)

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ー戦地の逸話(宿題)ー

この神経痛は鉱石病によって引き起こされるものですが、見逃せないポイントは彼女がライン生命において”実験体”であることです。同じ第二資料の最後に、イフリータのプロファイル記録を担っているサイレンスと思しき人物は以下のように記しています。

【権限者記録】
このように記録した理由は、イフリータの身体構造が……既に相当な異常をきたしてしまっているからだ。
彼女はサルカズだが、今もなおサルカズであるのか、私には断言できない……。(イフリータ第二資料)

イフリータのプロファイルを初めて読んだドクターの中には文字化けに面食らった方もいるかと思います。この文字化けは

もう彼女に触れないで■(イフリータ基礎情報)

と締め括られています。恐らくサイレンスがイフリータの過去について調べることができないよう、データを改変したと考えられます。この文字化けをよく見てみるとコードネームや性別などの基本情報が3度繰り返し記載されています。

イフリータ基礎情報

文字化けが進むほど身長が伸びていること、そして鉱石病感染状況に関する記載事項が増えていることから、明確に記載されているものほど初期の頃のイフリータである推測されます。サルカズとしての特徴である角や尾の長さは次第に短くなっており、これが前述のサルカズを疑う表現と合致します。

イフリータを巡るサリアとサイレンスの関係

イフリータに関する実験について記載する前に、サイレンス-サリア-イフリータの関係性についてもう少し言及します。サイレンスの潜在能力強化のために使用する印にはこのような記載があります。

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"気持ち"という表現が少し曖昧ですが、英語のテキストでは

This ineloquent researcher from Liberi shows her sincerity by gifting her own feathers.(Silence's Token)

"sincerity"(誠意)と表現されており、サイレンスが自身の羽を贈ることには特別な意味があることを示唆しています。それを踏まえて、イフリータとサリアのイラストを見てみると

サリア_イフリータ

どちらもサイレンスから贈られたであろう羽を身につけています。

サイレンスはイフリータの後見人かつ保証人になっており、イフリータもサイレンスにのみ従順な態度を示していることから、2人は良好な関係を築いていることが分かります。一方で、サイレンス-サリアの関係については良好とは言えず、サイレンスはサリアに警戒心を持っており、取り分けイフリータに会うことに対しては強い反発を示すセリフを発しています。その理由はサリアに関する資料から垣間見ることができます。

資料によると、ライン生命時代にサイレンスが実施したとある実験で二人は衝突したらしい。実験は無念にも失敗し、サリアは制御不能に陥った実験品を独断で停止させたという。その実験が原因となり、彼女はライン生命を離れる決意をしたとされている。(サリア第三資料)

しかしながら、サリアはロドスへ加入してからもサイレンスの羽を身につけており、心のどこかではサイレンスとの対立を避けたい気持ちを持っているのではないでしょうか。

サイレンスとサリアの関係を崩すことになった実験というのは、イフリートに絡む実験です。3人は実験を通じて関係性を築いていたと考えられます。アークナイツ本編からは少し逸れますが、3人のデザインを手掛けたNoriZC氏のツイートには以下のようなものがありました。

ポケモンのパロディではあるものの、イフリータはサリアのドラゴンの皮、サイレンスの羽を身体に宿しており、サリア・サイレンスの2人に育まれていることが示されています。いわば、サイレンスとサリアは二人の親となるわけです。

悲しき実験体、イフリータを生み出すこととなった実験は、"炎魔事件"という名称としてフィリオプシスのプロファイルに記載があり、ロドスのドクター(=プレイヤー)はアクセスを試みます。

炎魔事件の推測

......

あなたのアクセス申請は、フィリオプシスに通知されました。

しかし、フィリオプシスに閲覧権限を拒否されました。

あなたが内部システムを通し「炎魔事件」の調査申請は却下されました。

つまり、ライン生命に関する全ての非公開資料へのアクセス権限は付与できません。

イフリータ及びサイレンス、サリア、ないしすべての関係者に関する内部資料は、全て暗号化されています。

個人的な感情から言っても、このことには一切関与しないでほしいです。

本当に申し訳ございません。

......

私?

この事件におけるフィリオプシスの立場を知りたいのですか?

この質問の答えは簡単です。お答え致します。

フィリオプシスはいかなる時、いかなる場所でも、中立な存在です。

データベースのバランスを維持し、感情の起伏による影響を阻止し、ミスを回避します。

そのため、もしライン生命の行為がフィリオプシスの選択を乗っ取る恐れがあると判断された場合、そのコマンドプロセスの実行を拒絶します。

ただ、ライン生命の研究はこの未来を積極的に前進させる可能性があることを留意してください。

これは、たとえライン生命に暗い一面があったとしても、否定できない点です。

そしてこれが現段階で、フィリオプシスの立場に関して公開できる情報となります。

......

ーフィリオプシス第三資料

以下は、この炎魔事件に関する推測です。

サイレンスはオリジニウムの研究者であり、彼女の願いは全ての鉱石病を根絶することです。彼女はライン生命がクルビア各地で開催していた科学展示会に惹かれ、ライン生命への就職を決めます。アーツ研究に関して高い技術を持っていた彼女はアーツと臨床医学に関する実験に参加することとなりました。

サイレンスはサリアと出会い、実験体であるイフリータを生み出します。実験は着実に成果を上げ、3人の関係は日に日に深まっていきます。

そんな中、ライン生命上層部は突然、新たな実験を言い渡しました。その実験とは、イフリータの身体へ人工的にオリジニウムの断片を注入すること。上層部は実験そのものがイフリータに害を成すものではないこと、そして最終的にはオリジニウムを排除することに繋がることを主張します(実際には、ライン生命はアーツ技術に特化した軍隊を生み出す目的で、オリジニウムの強度を制御する事を目論んでいます)。

サイレンスはそれを信じ実験を主導しますが、結果としてその実験は失敗。イフリータは力の制御を失います。上層部は暴走したイフリータを鎮圧するようサリアへ言いつけ、サリアはイフリータを抑え込みます。(前述のサリア第三資料「実験品を独断で停止させた」に該当します)Twitterにて、この実験失敗時の様子と思われるイラストがNoriZC氏により投稿されています。

性格を鑑みるに、サリアは多弁なタイプではなく、時には十分な説明なく物事を進める人物であるように思えます。サリアはイフリータの暴走を止めた後、一連の流れから禁忌に触れる実験を命じたライン生命上層部に疑問を覚え、独断で調査を進めるために組織を去ります。しかし、説明もなくライン生命を去った彼女の行動はサイレンスの目に「イフリータを捨てた」ように映りました。

失敗した実験はライン生命における価値を失い、サイレンスはイフリータと共にライン生命を後にします。その後、鉱石病の治療で突出した成果を挙げている製薬会社、ロドスへの入職を決めました。そして恐らく、サリアは独自の調査でライン生命上層部に関する真相をある程度突き止めているのでしょう。

万物の進化は絶対の摂理。そうだと言うのにライン生命はそれを改変し、支配することまで目論んでいる。愚かな……(サリア会話1)

しかし、真実は時として残酷なもの。内容によっては、ライン生命に従事していたサイレンスをも傷つけることになりかねないため、口をつぐんでいると考えられます。結果として、現在に至るまでサイレンスとは微妙な関係が続いてます。その一方で、イフリータは

サリアが来てた?俺様にも会わせっ…サイレンスがダメだって…?…いいんじゃん、こっそり連れてってくれよ!(イフリータ信頼上昇後会話1)
サイレンスとサリア、何で喧嘩してんだろ。わけわかんねぇ…おい、なんか止める方法ねぇのかよ!お、教えてくれって…(イフリータ信頼上昇後会話2)

と口にしていることから、実験におけるサリアの振る舞いを気にしている様子はなく、以前の、仲の良かった頃の関係に戻ることを望んでいます。

以上が炎魔事件に関する考察です。公式で語られるまではその真相は分かりませんし、この推測が大きく的を外している可能性もあります。しかし、少なからず、ロドスへ加入したイフリータは"悲しき実験体"という過去の呪縛から解き放たれるべく一歩ずつ前に進もうとしている姿勢を垣間見ることができます。

戦地の逸話

ー戦地の逸話(宿題)ー

イフリータをロドスへ迎えたドクターはぜひとも親交を深め、彼女が不器用ながらも変わろうとしている様子をその目で確かめてみてください。

参考リンク

二次創作ではありますが、炎魔事件に関して思いを巡らせた後で以下の動画を見ると、感慨深いものがあります。

3/25 追記
みやち(@tanya_visha38)さんによる二次創作。サイレンスの羽を巡る一幕が漫画で描かれています。

戦地の逸話"宿題"、ミュルジスとの関係

3/27 追記
戦地の逸話にて、イフリータが自身の内面に存在する誰かと対話している場面がありました。

イフリート

この存在に対し、イフリータは

分かったか! お前がオレサマに恥をかかせてんだ。お前がいつも面倒ごとを起こすんだ!

と言い放っています。

これはイフリータの行動失敗時の台詞

クソ……オマエだ……オマエのせいで、オレサマは恥をかいたんだ!

とニュアンスが似ていることから、作戦が失敗した際に発するこの言葉はドクターを責めているのではなく、感情が昂り暴走した際に現れるこの存在に対して怒りをぶつけているものと推測されます。

戦地の逸話では"ミュー"というライン生命の研究員が現れ、イフリータの暴走を止めています。

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マゼランのプロファイルより、ミューの本名は「ミュルジス」であること、そしてマゼラン・ミュルジス・イフリータは3人とも良好な関係であることが明かされました。

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炎魔事件に関する考察は以上となります。
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