見出し画像

60年の歴史を引き継いだ蔵前の帽子店|株式会社マルコカンパニー 奈良さん・雲田さん インタビュー

 蔵前4丁目、ボストンテリアの看板が目印のマルコ帽子店。
こちらを運営している株式会社マルコカンパニーの奈良さん・雲田さんにブランドへの想いやモノ作りへのこだわり、今後の展望などお聞きしました。

お話をお聞きした方

(左)奈良 隆嗣 さん
株式会社マルコカンパニー  代表取締役。
(右)雲田 由香 さん
株式会社マルコカンパニー 取締役・デザイナー。

■ 株式会社マルコカンパニー
1960年代より続くブランド「NAMIKI chapelière(ナミキ シャペリエール)」をはじめとするオリジナル帽子の企画・製造販売や、OEM事業を行っている。

特別ゲスト

マルコ営業部長
もうすぐ3歳になる人懐こい元気いっぱいのボストンテリア。「この子と一緒に成長できたら」という思いを込めた会社名の由来にもなっている。今回のインタビュー中には、ひざの上に乗ってくれたり、たくさん撫でさせてくれたりと、聞き手と記録担当を大いに癒してくれた。(編集後記のオフショットでまた登場します!)


マルコカンパニーについて

NAMIKIブランドを引き継ぎ、マルコカンパニーへ


―――どのような事業をされているか教えてください。

雲田さん:現在は婦人帽子の卸売りが主な事業で、元々NAMIKIというブランドを扱っていた、私たちが以前勤めていた会社の頃からのお客さまが主な取引先です。春夏・秋冬コレクションの展示会を年に2回蔵前のアトリエで開催して、小売店さんから発注して頂くという流れです。

卸売以外にも、アパレルブランドやセレクトショップ、海外のスポーツブランドのOEM事業もあります。

また、今年からアトリエ1階のショールームスペースを店舗にして、エンドユーザーのお客様と直接お話ししながら購入していただけるショップ(マルコ帽子店)も始めました。

奈良さん:元々NAMIKI(ナミキ)という1960年から続いている婦人帽子のブランドがあって、そのブランドを扱っていた会社が、僕たちが独立する前に勤めていた会社です。前社は元々杉並にアトリエがあって、25年程前に馬喰町と浅草橋の間の東神田に越してきました。

もちろん良い時代もあったのですが、近年の消費行動の変化にうまく対応できずに業績が厳しくなり、そこにコロナの影響もあって会社をたたむという話になりました。

ただブランドとしての歴史や商品自体の良さだったりというのは、業界内でもそれなりに評判が良くて自分たちも仕事が好きだったし、それこそご飯を食べていかなくちゃいけないという事で、NAMIKIブランドを引き継いで新しい会社を台東区に作ったっていう形ですね。

マルコカンパニーの業務内容としてはNAMIKI chapelièreブランドの卸売りが70%ぐらいです。OEMが30%ぐらいで、小売業は、まだまだこれからっていう感じです。

―――お店にはどのようなお客様がいらっしゃいますか?

奈良さん:7、8割は地元の方ですね。昔からこの建物をご存じで、今どうなっているか気になってという方もいらっしゃるし、最近このエリアに越してきた若いご夫婦で来店頂くというケースも多いです。

雲田さん:ふらっと買い物していたら、帽子屋さんを見つけたから、とか。

奈良さん:お買い上げ率はそっちのほうが高いかもしれない。日差しが強くて帽子をかぶってなくて、たまたま帽子屋があったというタイミングもあるのかなと思います。


マルコカンパニーのモノ作り


―――商品の特徴を教えてください。

雲田さん:一番大事にしているのは被り心地の良さです。かぶったときに優しくフィットするようにデザインしています。

NAMIKIは、創設者夫妻が皇室関係の帽子やメジャーファッションブランドのショーに使う一点物の帽子を製作するところからスタートしたブランドだったんです。
なので私たちもモノ作りを自分たちでイチからという考え方に基づいて、まずパターンを引いて、よりフィットする、より被りやすい帽子を企画するプロセスを大切にしています。

デザインのディテールももちろんですが、「締め付け感がなく、ストレス無く着用できる」 被り心地を考えて企画しています。

最近は「洗える」「たためる」「撥水」「通気性が高い」など、機能性を持った商品も企画をしています。

被り心地、デザイン性、機能性を備えた帽子

―――素材はいかがでしょうか?

雲田さん:涼しげで上品で、NAMIKIのデザインに合うのでリネン素材を使うことが多いですね。コットンリネンもお手入れしやすいのでよく使いますね。

洗濯ができたり簡単にお手入れできる方がいいという要望も多いので、麻っぽく見えるようなポリエステルとか、秋冬だとウールっぽく見える化学繊維を使った帽子も提案しています。

―――ものづくりをする際に意識していることを教えてください。

雲田さん:時代と共に流行や変化はありますが、昔からご愛用頂いているお客様もいらっしゃるのでNAMIKIらしい帽子づくりを心掛けています。オリジナリティがありつつ被り心地良くすることを意識してます。

女性はいくつになっても綺麗でいたいし可愛くいたいと思うので、かぶって嬉しいなと思ってもらえるような、長く使ってもらえる帽子づくりを目指しています。

そのために何度も細かく直してもらうので、うるさいなって思ってる工場さんがあるとかないとか。(笑)

奈良さん:前の会社では、量販店、百貨店なども含めてありとあらゆる販路に商品供給している時期もあったんですけど、モノづくりのプロセス自体は1,900円の商品でも1万円、2万円の帽子でも全く一緒。かける手間とかエネルギーは今も変わらず継続してやっていま

――― 60年間同じやり方で。

もちろん合理化はしていて、量産は外注工場さんにお願いしていますが、マインドはぶれずにやっているつもりです。

―――パターン(型紙)を引くものと引かないものの違いは何でしょうか?

雲田さん:パターンを引かない場合、デザインは書けるけど、それが立体になるまでの過程が抜けてしまうのでなかなか思っている通りに作れない。

うちの場合はイメージしたデザインを絵にして形にするまでが、経験的にも技術的にもできるので、そこが強みというか。パターンがあるとないとだと、できることの幅が広いか狭いかっていう感じですかね。簡単にいうと。

奈良さん:いいこと言うね。
もう一人、前の会社でパターン得意な企画の人が週に2-3回来てくれてるんです。

雲田さん:新しい商品を考えるとどうしても一人じゃ時間がかかってやりきれないので、手伝ってもらってすごく助かってます。

――― 一つ帽子を作るのにどれくらいかかりますか?

雲田さん:1からパターンを引く時は1回作って、それを2回とかやり直したりしちゃうと、たたき台だけで2~3日はかかります。パターンを引いて、切って縫って直して、パターン引き直して縫って。

ただ、そんなに時間がないので、色々なことをショートカットして、縫うのは工場さんにお願いして、戻ってきたものをバラして、もう1度やり直したり。

―――戻ってきたものをばらすんですね。

雲田さん:そうですね。何か違うと思う時に「切ってここつまんだらこうなるかな」「ここを直したらこうかな」と。

工場さんや周りに助けてもらってる感じですね。新しい商品を1つ作ったら、普通に1週間とかかかっちゃいます。一人だけでやったら。

パターンからこだわったチューリップハット。6面から構成されているが、被りやすさ・デザインにこだわり4種類の型紙を組み合わせて作っている。


お二人にとっての”帽子”


―――お二人にとって帽子の魅力は何ですか?

雲田さん:ファッションポイントになるのが一番かなと思います!

奈良さん:営業的な面で見ると、ファッション雑貨の中では売上の構成比が高いんです、帽子って。色々ある雑貨の中でマーケットとして大きいし、傘、マフラー、手袋とかに比べると表現する範囲が広いといいますか。使っている材料も様々だし、つばの大きいものから短いものや、ベレーだったり、キャップだったりがあるから、扱っていて面白いっていうのはありますね。

個人的に帽子の好きなところは、気分を上げてくれるとか、気持ちの切り替えスイッチになるところかな。

今もかぶってますけど、身体の一部じゃないけど、欧米の方って靴を家の中で履くけど、日本だとそうもいかないじゃないですか。そういうのって帽子ぐらいかなって。本当はお行儀が悪いんでしょうけど。そんな感じですかね。

雲田さん:私もほぼ毎日被るので、どうしても好きなもの被っちゃうんですけど。帽子が決まらないとダメですね。

―――雲田さんは服から入りますか、それとも帽子から入りますか?

雲田さん:気分からです。(笑)
「今日は何々っぽくしたいな」とかっていう。「今日はちょっとまたぎっぽく行きたいな」「今日はもっとマニッシュにいきたい」とか、あとはロングヘアの時は、帽子の中に収めて毛先を出してショートに見えるようにしたり。変身できるアイテムっていう感じ。あとは、「今日はあの帽子被りたいからこの服」って日もあるし、「これ着るからあの帽子」という日もありますね。

マルコカンパニーができるまで

「失敗や成功を積み上げて経験になって。今、この会社になっていろんなことができる状態になっています。」


――今に繋がるまでの経緯をお聞かせください。

奈良さん:大学卒業してオーストラリアに1年間行ったんですよ。就職したくなくて。お金を少し貯めて行ったので、7月ぐらいかな。
戻ってきて、就職しなくちゃいかんということで探したんですけど、なかなか決まらなくて。

しばらくして、帽子のメーカーさんに勤めていた中学時代の友達の紹介で、帽子問屋に入社しました。そこで営業を5年ほどやって退社しました。

次はアパレルの輸入代理店で、ヨーロッパのファクトリーブランドの商品を国内のセレクトさんに紹介する仕事をやっていました。

その時にNAMIKIブランドを持つ前社が、業務を拡張するタイミングで誘ってくれて、帽子業界に戻ってきた感じですね。僕が一番最初に入った会社とNAMIKIは、競合関係だったのですが、同じ取引先でよく会う私を良いと思ってくれたみたいで。
それから15‐16年勤めて、独立して現在に至ります。

僕年齢的には古着世代なんですよ。古着屋さん行ってワゴンに入っている500円とか1,000円で売っているキャップをしこたま買ってきて日替わりで被っていました。帽子をよく被ってたからこの業界に誘ってもらったっていうのがあるかもしれないですね。

―――帽子の業界で働いてみていかがでしたか?

奈良さん:最初に5年勤めた会社に在籍していた頃は帽子バブル時代だったんですよ。
CA4LA(カシラ)さんとかOVERRIDEさんとか一気にできて、路面店が。帽子ブームじゃないけど、みんな帽子をかぶるようになってとにかく忙しかったんです。忙しすぎてだんだん帽子に囲まれる生活が嫌になってきちゃって一旦辞めました。

雲田さん:帽子は好きだけど、忙しさと仕事内容が嫌だなあって思って?

奈良さん:仕事は好きだったんだけどね。
このままの仕事量が続くとちょっとしんどいなと思って辞めたって感じ。もう帽子なんてしばらく見たくないって思ってたんだけど前社からお誘いがあって。迷いましたが、当時からNAMIKIはモノづくりのプロセスや社員を大事にするっていう話を聞いていたので帽子業界に戻ることに決めました。

最初の帽子問屋では営業もやりながら簡単な企画や商品管理も、一貫してやっていたんですよ。NAMIKIは営業と企画部署がパキッと分かれていて、自分はある程度オールマイティーにできたのもあって、社内的に重要なポジションを任せられるようになっていきましたね。

前の会社は駄目になっちゃったけど、そういうスキルや経験があって今に至っているので良かったんじゃないかと思います。

―――ありがとうございます。雲田さんに同じ事をお聞きしてもいいですか?

雲田さん:はい。私はものづくりが好きだったので、ものづくりができる学校に行きたいと思っていて、色々調べて文化服装学院がいいぞと。

その中で一番色々出来そうな科に3年のコースで行ったんですね。そこでお洋服を習いました。1年目に基礎を学んで、2年目にアパレルデザイン科にいって、3年目はいろいろやりたくてメンズ科にもいって仕立ても習ったんですよね。
文化の時は、帽子自体はそんなにたくさんは作らなかったんですけど、中学生の頃から自分で帽子作っていました

就職活動する時もアパレルではなく雑貨で探していて。たまたまNAMIKIで募集していて帽子に携わることになりました。ずっとNAMIKIで25年間いたので、他社の事を全然知らなくて。帽子だけ、そこのやり方だけなので、その分「こういう形を作りたいから、こうする」というスキルは付いてはいると思うんですよね。

前社に奈良が中途で入った頃から一緒に仕事するようになって、私も奈良と同じようにやる気だけはすごくあるので、一生懸命頑張って、最終的には商品部をまとめる仕事もしていました。

その時作ってた帽子はもう子供みたいじゃないですけど、勤めていた会社が無くなって、それをバサっと切るのは残念だなと思っていて。そしたら奈良が一緒に会社をやらないかと声を掛けてくれたので。

今まで25年もやってきたことを捨てて別の事を1からというのも、それはそれで楽しいかなと思ったんですけど。このスキルもったいないと思って、今に至るっていう感じですかね。

奈良さん:彼女は僕が言うのもあれですけど優秀で、布帛の帽子にもニットの帽子にも精通していて。マルチでワンストップで全部できるのですごくユーティリティなんです。

雲田さん:前社の時から、色々なOEMのお客さんが増えてきた時に、「自社のオリジナルだけを作ってた仕事とは違う」って奈良が言うんですよ。企画からしたら「何これ、こんなのやったことない」状態なのに。(笑)

奈良さん:自分達の作りたいものだけを作るんじゃなくて、お客様からこういうものを作りたいという、未知の依頼が来たりすることを積み上げていって、自分たちのスキルにしてくれているということね。

雲田さん:どう作ったらいいのか分からないんですよ。でも、結果自分達のスキルもちょっと上がったかなとも思います。スポーツ系のブランドから、とても薄くてミシンが滑りやすい素材で作ってくれと依頼があって、「こんなの作れないよ」って今まで断ってたのを、仕事として受けてしまった以上前に進めざるを得ないので。

奈良さん:僕が受けちゃうんです。(笑)

雲田さん:引き受けたものをどうやってカタチにするのかというところで、失敗や成功を積み上げて経験になって。今、この会社になっていろんなことができる状態になっています。


「僕達のことを信頼してくれてお取引を続けてくれてることが、当たり前のようだけど、全然当たり前じゃなくてありがたい。」


―――事業をされて特に印象深い出来事はありますか?

奈良さん:会社が変わっても「奈良さんだから、雲田さんだから」とお客さんが商売を継続してくれて、展示会へ来てくれて、商品が店頭に入っていくというプロセスが、何かやっぱすごくありがたいなっていうことと、OEM先さんでも会社じゃなくて個人というか、僕達のことを信頼してくれてお取引を続けてくれてるということが、すごく当たり前のようだけど、全然当たり前じゃなくてありがたい。
工場さんや仕入れ先さんも同様で、とても感謝しています。
そのおかげでほんとにやれていますっていう感じです。

雲田さん:コロナ禍で先行きが見えない中でのスタートだったので、「今までやってきたことをきちんとやってみよう」と思ってました。

「自分たちだけでやってみよう」と思った時に、しばらくお会いできていなかったお客さんが、「どう大丈夫?」みたいな感じで心配して顔を見に来てくれたり。
そんな関係が仕事にも繋がったし、仕事をしっかりやってればお客さんの方も応えてくださったり…そうですね、良かったなっていうか何か印象深いかな。

台東区でお仕事をしてみて

「街の雰囲気もとても良くて。ラッキーなのか嗅ぎ分けたのか分かんないけど、とても気に入っています。」


―――台東区でお仕事してみての感想を教えてください。

奈良さん:台東区自体は前社でも浅草橋とか馬喰町の近くにいたので、親近感はありました。昔から帽子屋さんや袋物屋さんもいっぱいあるエリアで知り合いも多かったんです。

材料調達の面だとか、バイヤーさんの来やすさを考えたり、会社を作る意味でも台東区の良さみたいなものを他所から聞いてたりしていて。原宿とか代々木とかあっちの方へ行く人もいるんですけれども、僕らはそういう感じでもないので。(笑)

最初は柳橋とか浅草橋で事務所を探してたんですが、ひょんなところから蔵前っていいよねという話になって、この物件が空いてるのを見つけて申し込んだら、お借り出来たんですね。

入居してからより蔵前のブランド力みたいなものを感じるようになって、結果すごくラッキーみたいな。

さんざんお世話になっている助成金とか、中小の事業所やものづくり企業に対する支援も台東区は手厚いですし、本当良かったなって思ってます。

街の雰囲気もとても良くて。ラッキーなのか嗅ぎ分けたのか分かんないけど、とても気に入っています。

―――蔵前のどんな雰囲気がいいなって思いますか?

奈良さん:なんだろう。肩肘張ってないんでしょうね。
いい年になってこの辺を歩くと、寺町というのもポイントかなと思っています。静かで落ち着きますね。昔からいらっしゃるご近所の皆さんも優しいし、最近移り住んで来た若い家族の人たちも多いし。すごく循環しつつ活性化してるような感じがします。特に蔵前のエリアは。

雲田さん:前の会社は東神田や鳥越にあったので、台東区自体は身近ではいたのですが、いままでは「ザ・職場」って感じでした。ただ、蔵前に来て、人がとてもいいなって感じました。

ここを自分達でリノベーションしていた時期があるんですよ。夏の暑い時期に2か月くらい。そんな時も通りかかった人が沢山話しかけてくださったり、よそ者が来たって見られ方をしないし、挨拶もしてくれるし、皆さん同士も挨拶もしてるし。

古くから住んでいる方たちがいらっしゃって、そこにお邪魔させてもらって。まだまだ忙しいんですけど、この街でゆったり仕事ができるように、馴染めるような場所に先々なれたらいいなって思っています。

奈良さん:それこそバイヤーさんが蔵前だと来てくれるんですよ。商談前後に美味しいごはん屋さんとか、カフェにとか、寄りたいところがあって。相乗効果は絶対あると思う。明らかにアポイントが取りやすくなりましたよ。

雲田さん:面白いよね。前の会社の時とそんなに距離が離れているわけじゃないのに。

奈良さん:展示会に来てくれたお客様が有名なパン屋さんの袋を持ってたりとか。(笑)

―――なるほど。そういう相乗効果があるのは目から鱗でした。

奈良さん:本当にね、あると思います。

雲田さん:余談ですけど、展示会をする時お土産でご近所のお菓子を渡すんですが、「この辺で売っているんですよ」ってお渡しすると「どこにあるの」とか「帰り寄ってみよ」って。そういうのも楽しいなって思います。

―――おすすめのお店、どこですか?

奈良さん:一軒隣りの榮久堂さんのソフトバター。本当においしいですよ。

雲田さん:練り菓子とか季節ごとに変わるので、ショーケース見るのも面白いです。

奈良さん:お隣のいせやさんは天丼ももちろんだけど、天サンドも美味しいね。片手で食べられて。撮影の時なんかに頂いてます。

雲田さん:田原町のお豆屋さんもおいしかったよね。

奈良さん:ほていやさんね。炒り豆やさん。鉄釜みたいなので豆炒っているんですよ。仲見世の雷おこしとかも、お土産に渡すと喜んでもらえて、懐かしいって。

台東区LOVEですね、僕ら。

マルコカンパニーのこれから

「今まではブランドを守ってきたので、全く違うものを発信できるように何かできたら」


―――ちなみにお二人は、帽子以外の世界に行きたいって思ったことはありますか?

奈良さん:全然僕はあるんですよ。辞めたいとかじゃなくて、何か常に新しいことをしていたいという感じ。今でも飲食とかやりたい。マルコカンパニーはやりながらね。

雲田さん:私は花が好きなので、お花に携わる仕事をしてみたいと思うことはありました。活けてどこかに出すみたいな事ができたら楽しいだろうなって。もし帽子をやめます、会社がなくなりますとなれば。

店内にはお花や植物のディスプレイも

―――今後の展望をお聞かせください。

雲田さん:そうですね、会社を作って何とか4シーズンが過ぎて、それなりにやっていけそうだとなってきたところで、新しいブランドを作るとか違うことをやってみてもいいのかなって話をしてるところですね。

今まではブランドを守ってきたので、全く違うものを発信できるように何か考えてできたらいいかなっていう感じですね。まだ全然ですけど。

―――奈良さんはいかがですか?

奈良さん:私はですね。

雲田さん:ラーメン屋じゃないの?

奈良さん:いやいやいや。(笑)
アトリエ・店舗出店支援(※)の面談でもちょっとお話をしたかもしれないですけど、帽子の修繕とかアフターケアを地域の人に向けてやってみたいなっていうのはあります。ただ、中途半端には始められないから、少し余裕ができたらやりたいですね。

(※アトリエ・店舗出店支援:台東区産業振興事業団で実施している助成制度。株式会社マルコカンパニーは2022年に採択)

奈良さん:あと、海外の展示会にも出展したいですね。上海には前の会社の時に年に2回ぐらい行ってたんですが、昨日、たまたまその頃の知り合いが来て、コロナももう落ち着いたんでまたどうですかという話があって。東南アジアにもこれからどんどん経済成長していくと思うので行ってみたいですね。

私たちもそろそろ良い年齢なんですよね。だから会社作ったばかりですけど、会社をどう繋いでいくか、ランディングしていくかというところも少しづつ考えながらやっていった方がいいのかなと思ってます。

どう継続してどう収束していくのか、新たな誰かに渡していくのか。せっかく長く続いているブランドを運営しているのでそんなことも考えています。

SDGsの観点だと、この会社を作る時にオーガニックコットンを使った新しい企画も考えていたんですが、一旦ペンディングになっているので、それを雲田が言ったように新しいブランドなんかと絡めながらできたらいいかなと思っています。

―――最後に、マルコ帽子店を今後どんなお店にしていきたいかをお聞かせください。

雲田さん:せっかくお客さんと直接お話が出来るので、しっかり対話しながらお気に入りの帽子を見つけてもらえる場所、空間にしていきたいです。
たくさん試着してもらって、楽しく買い物ができて、うちの帽子を好きになってもらえたら最高ですね。

編集後記

奈良さん、雲田さんありがとうございました。

今回お話をうかがって、二人とも本当に帽子が好きで、お仕事を好きなんだという印象を強く受けました。そして、そんな二人の作る帽子をかぶってみたいという気持ちになりました。

奈良さんに初めてお会いしたのが2021年の4月で、何度かお話させていただく機会はありましたが、お仕事にかける想いや過去のお話をここまでお聞きしたのは初めてででした。
雲田さんは今回のインタビューで初めてお会いしましたが、初対面とは思えないくらい優しく話しやすく…後日帽子の試着をさせていただいたときも帽子の特徴を詳しく教えてくださったり、見立てもしてくださいました。(ありがとうございました!!)

マルコ帽子店さんは、お二人の柔らかさ・親しみやすさと、お店との雰囲気がマッチしていて、個人的にとても居心地の良さを感じる空間です。
インタビュー中には、ボストンテリアのマルコ営業部長も同席し、時には膝の上に乗ってくれたり、癒しに拍車をかけてくれました。

マルコカンパニー・マルコ帽子店の今後、楽しみにしています。

奈良さん大好きマルコ部長のオフショット

聞き手、写真:中川
文:神田、中川
写真提供:マルコカンパニー様

店舗情報

所在地:東京都台東区蔵前4丁目37−9
WEB&EC:https://ec.marco-hat-shop.com/
Instagram:https://www.instagram.com/namikichapeliere_by_marco/