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走らないメロス

 セリヌンティウスは激怒した。かの怠慢な男、メロスをどうやってでも走らせねばならぬ。

 私は、彼のせいで、人質にされているというのに、何を呑気に妹の結婚式を挙げているんだ。

 大体にして、どうして私は妹の結婚式のために人質にされているのだろうか?確かにメロスはいいやつだった。優しく、聡明な男だ。しかし、友を人質にするとは、なんということだ!人の命をなんだとおもっているのだろうか!

 今は3日目の朝だが、本気でやれば今頃ついているはずなのだ。走り続けていれば。走れ、メロス。恐らくあいつは寝ている。俺の命がかかっているのに寝ている。嫌いだ。なんかもう嫌いだ。走らないメロス、許さない。


セリヌンティウスは、牢屋で病んでいた。

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