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【資格】簿記3・2級の短時間合格法


1.はじめに

 簿記とは、企業の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績や財務状況を明らかにする技術です。簿記を学ぶことで、社会人に必要な最低限の会計知識及び財務諸表を読み取る力が身につきます。これらの力を試す機会が、簿記検定です。
 3級は、「簡単」と頻繁に言われますが、これは誤りです。正しくは、「"2級と比べると"簡単」です。2級の勉強をしていく中で初めて3級が「簡単」だと実感できるのです。つまり、3級の勉強しかしていない段階では、「想像よりも難しい」と感じるはずです。
 2級は、「難しい」と言われますが、これは正しいです。基礎的な頭の使い方は3級同様ですが、新たな科目として工業簿記が加わり、商業簿記についても取引が複雑になります。
 よって、3級は油断していると落ち、2級は必死に勉強しないと合格できない資格と言えます。
 また、一般的に、合格率については、3級は40〜50%程度、2級は20%程度とされています。そして、合格に必要な勉強時間の目安については、3級は約100時間、2級は250〜350時間とされています。
 しかし、個人的には、勉強次第ではここまで時間をかけなくても合格できると考えています。実際に私は短い勉強時間(3級:約20時間、2級:約70時間)で一発合格(3級:83点、2級:81点 ※70点以上で合格)できました。そこで、私の短時間合格法を、総論と各論に分けてお伝えしていきます。

2.総論

 まず、3級と2級のどちらにも共通する鉄則をお伝えします。
 それは、試験日の1週間前からまとまった勉強時間を確保し、演習教材を高速周回することです。この期間は毎日最低2時間〜2時間半の勉強時間を確保するのが望ましいです。この1週間で、問題集(+模試)とまとめノート(論点、間違えた知識を集約)を何周も回し、必要に応じて教科書を参照します。この追い込みは、簿記検定に限らず、およそ全ての資格試験において非常に有効かつ必要です。
 そうだとすれば、試験1週間前までに、①基本知識のインプット(教科書や講義)、②問題集最低2周、③模試最低2回を終わらせる必要があります。なお、①〜③の教材は市販の物でも構いませんが、個人的にはCPAラーニングの無料教材がおすすめです。
 ①について、独学で教科書を読むより、プロの講師による講義を見る方が分野・論点のメリハリを付けられる点で効率がいいです。講義は、CPAラーニングやYouTubeで無料で見れます。また、基本知識のインプット段階では、「短期間に全分野の学習(講義の消化or教科書の読破)を終える」ことを意識してください。数ヶ月かけて少しずつインプットを行う場合、徹底的な復習を適宜していかないと、以前学習した分野の記憶が薄れてしまい、ひいては分野間・論点間の横断的な繋がりを意識できなくなってしまいます。この点、徹底的な復習はその方法や進捗管理が難しく、行えたとしてもその分勉強時間を復習に割く必要があるので、あまりおすすめできません。
 ちなみに私は、CPAラーニングを利用しました(なので、費用は受験料のみです)。そして、3級は3日、2級は1週間で全講義を消化しました。
 ②について、問題集は試験1週間前までに2周するのが望ましいです。1周目は、インプット(①)と並行してやるのが効果的です。その際、正誤に関わらず自信を持って(根拠を説明できる状態)答えられなかった問題に印を付けておき、2周目はその印のみやります。
 ③について、模試は試験1週間前までに最低2回はやるのが望ましいです。まず、1回目はインプット(①)が終わった段階で着手すべきです。全く解けなくても構いません。早めに試験本番のレベル・時間を把握することはとても有益ですし、後の模試と比較して成長をより実感できます。それに、初期に行うデメリットは一切ありません。それゆえ、インプットを完璧にするまで模試を受けないという考え方は捨てるべきです。次に、2回目は試験1週間前の前日に受けることを強くお勧めします。1回目から2回目までの期間の勉強成果を発揮できる機会となります。そして、2回目で露呈した自分の弱点を、試験当日までの残りの1週間で克服するための勉強計画を立てられます。
 以上が、鉄則となります。それでは、級別に合格法をお伝えしていきます。

3.3級各論

 3級は商業簿記3問構成です。1問目が仕訳問題(45点)、2問目が帳簿・勘定記入・文章穴埋め(20点)、3問目が決算問題(35点)です。1問目(20分)→3問目(25分)→2問目(15分)の順に解くのがベストです。時間が余った場合は1問目の見直しをしてください。また、2問目は比較的難易度にばらつきがあり、点数を安定して稼ぎにくいため、1問目と3問目で合格点70点を超えられると安心です。以下、各設問ごとにポイントをお伝えします。

(1)1問目対策
 1問目は、具体的な企業の経営活動や決算整理についての短文を読む→適切な勘定科目を用いて仕訳するという仕組みの問題です。数字を飛ばして読んで勘定科目を貸方借方に設置してから、数字を入力するのがコツです。この際、左右の数字の合計が一致しているかを瞬時に確認するようにしてください。
 また、文章から読み取れる仕訳が複数考えられる場合、文中の「本日」以降が問われている仕訳となります。なので、「本日」に着目する癖を早い段階から付けておくと良いです。
 勉強方法としては、学習した企業の取引等について明確なイメージを持ち、「この取引からなぜこの仕訳になるのか」を意識して、深い理解を心掛けましょう。余裕があれば、特定の仕訳を見た上で企業の取引等を文章化できるかどうかを訓練するのが効果的です。例えば、「売掛金 5000/売上 5000」という仕訳を見たときに、「当社は取引先に商品5000円を掛けで販売した」という文章を瞬時に想起できるように訓練するという感じです。
もっとも、3級の合格のみで構わないという方は、難しい取引等については単に仕訳の形を暗記してしまってもOKです。一方、2級以上の取得を目指している方は、暗記に頼らずしっかりと理解すべきです。

(2)3問目対策
 3問目は、精算表や財務諸表などを作成する決算の総合問題です。1問目では期中仕訳と未処理事項の仕訳と決算整理仕訳が問われますが、3問目では未処理事項の仕訳と決算整理仕訳が問われ、期中仕訳は問われません。未処理事項は、しばしば決算整理事項に影響を与えるので注意が必要です。例えば、売掛金について未処理事項の仕訳をし、その仕訳に基づいて貸倒見積額を算定する必要がある場合などです。
 また、財務諸表等の最終的な利益の数値が合わないことがほとんどだと思いますが、気にしなくて構いません。利益の数値が合わないということはどこかでミスをしていることになりますが、そのミスを見つけるのは大変困難であり時間もかかります。なので、利益を算定したら見直しせずに2問目に進みましょう。なお、2問目終了後に時間が余ったとしても、3問目の見直しをするよりかは1問目の見直しをした方が有意義です。
 勉強方法としては、基本的に1問目同様です。ただ、1問目以上に、当該勘定科目がB/S項目(損・益)なのかP/L項目(資産・負債・資本)なのかを常に意識する必要があります。日頃から、勘定科目と財務諸表との繋がりに目を向けておく必要があります。

(3)2問目対策
 2問目は、問題形式が様々あって予測しにくく、仕訳や財務諸表の構造についての深い理解がないと解けないような問題が多いです。もっとも、運が良ければ満点を狙える簡単な問題(例えば、補助簿の選択問題、語句選択問題)が出ることもあります。
 勉強方法としては、日頃から仕訳や財務諸表の構造について考え、理解することを心掛けると良いです。順序としては、補助簿選択問題→勘定記入問題→語句選択問題の順にマスターすると効果的です。

4.2級各論

 2級は商業簿記3問、工業簿記2問構成です。1問目が商業仕訳問題(20点)、2問目が株主資本等変動計算書・連結会計・勘定記入・その他(20点)、3問目が決算・本支店会計問題(20点)、4問目が工業仕訳問題(28点)、5問目が標準原価計算(差異分析)・直接原価計算・CVP分析(12点)です。1問目(10分)→(株主資本等変動計算書であれば)2問目(15分)→3問目(25分)→4問目(15分)→5問目(15分)→(株主資本等変動計算書以外であれば)2問目(15分)の順に解くのがベストです。2問目は、株主資本等変動計算書であれば比較的簡単なので満点を狙えます。それゆえ、1問目の次に解くのがおすすめです。それ以外であれば点数を安定して稼ぎにくいので、1番最後に解くのが良いです。
 また、全体の傾向として、商業簿記は深く広く問われ、工業簿記については比較的浅く広く問われます。それゆえ、工業簿記は、高得点を取りたいです。1問目、4問目、5問目で6割取れると安心です。以下、各設問ごとにポイントをお伝えします。

(1)1問目対策
 1問目は、具体的な企業の経営活動や決算整理についての短文を読む→適切な勘定科目を用いて仕訳するという仕組みの問題で、3級同様です。それゆえ、対策についても基本的に3級同様です。ただし、3級よりも問題文が長く複雑になっているので、はじめに時系列で出来事を簡単に整理するのがおすすめです。また、3級では論点を「点」で理解しても問題ありませんが、2級では「線」で理解して論点相互間の繋がりや流れを強く意識して学習する必要があります。

(2)3問目対策
 3問目は、精算表や財務諸表を作成する問題に2級特有の本支店会計の問題が加わります。財務諸表に関しては、報告式のP/Lが頻出です。対策については、基本的に3級同様です。新たに加わった本支店会計については、仕訳さえできればそこまで難しくないので早い段階でマスターしておくと他の分野に勉強時間を割けます。

(3)4問目対策
 4問目は、小問が2つあり、小問1が単発の仕訳問題、小問2が個別原価計算or総合原価計算です。基礎的な論点が浅く広く出題されるので、満点を狙えます。
 工業簿記は、仕訳と勘定連絡図との繋がりの把握が命です。日頃から、仕訳をする際は連絡図のどの部分の話なのかを考えて勉強すると良いです。本番も、配布される計算用紙を活用して、勘定連絡図を頼りに仕訳していくと良いでしょう。

(4)5問目対策
 5問目は、標準原価計算(差異分析)・直接原価計算・CVP分析の中から、様々な形態の問題が出ます。中には、計算の構造についての深い理解が求められるものもありますが、基本的に図を活用すれば満点近く狙えます。4問目同様に、配布される計算用紙を活用して、図を頼りに解くと良いでしょう。

(5)2問目対策
 2問目は、問題形式が様々あって予測しにくく、仕訳や財務諸表の構造についての深い理解がないと解けないような問題が多いです。中でも、連結会計の問題は厄介です。もっとも、運が良ければ満点を狙える簡単な問題(例えば、株主資本等変動計算書)が出ることもあります。
 連結会計については、親子会社が完全所有の場合と部分所有の場合の2パターンの連結修正仕訳ができれば十分です。それ以降のアップストリームやダウンストリームはかなり高度なので、一度学習して無理そうだったら捨ててしまっても構いません。もっとも、今ある企業のほとんどはグループ経営であり、実務において連結会計はトップレベルで重要な分野です。自身の将来のビジョンを考慮して、連結会計を最後まで理解すべきか、途中まで理解すべきかを決断すると良いかと思います。

5.さいごに

 繰り返しますが、簿記は短期のスパンで勉強した方が合格可能性が上がると思います。インプットを終えたらすぐに試験日を決めて申し込んでしまい、そこから逆算して勉強計画を立てると緊張感が出て良いと思います。
 ネット試験の場合は配布されるボールペンでメモを取ることになるので、日頃からボールペンを使うのがおすすめです。また、電卓については機能をフル活用した方が楽なので、最初にサイト等で調べて使い方を練習するのが有効です。メモリー計算や定数の掛け算などは頻繁に使うことになるので、早めに習得しておくと良いです。
 以上となります。何かの参考になれば幸いです。

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