マガジンのカバー画像

ロボット劇作家の作品

26
尾崎太祐が書いた脚本・小説をまとめたマガジンです。すぐ読める掌編が多めです。
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

ショートショート「神様の思う壺」

「ホールケーキおひとつ、いかがですかー?」 ああ、寒い寒い。街には雪がちらついている。 こんな時間まで、寒空の下でサンタの格好してケーキ販売。 このコンビニのオーナーはどうかしてるな。 そもそも俺は一人暮らしだし、ホールケーキなんて食いきれないっつーの。 革靴にスーツ、カバン持ってるからって、家族のために遅くまで働く会社員だとでも思ったか。 就活中だよ。老け顔なんだよ。家族どころか、嫁も、彼女もいませんよ。 今年もいわゆる"クリぼっち"だ。慣れたけど。バーカバーカ。 住

ロボットコント『AI婚活』①

イントロダクション 「日本政府がAIで未婚の男女を支援」――こんな見出しが話題になったのは、つい最近のこと。 これまでの婚活――つまり、容姿や収入などの条件をもとにした婚活――ではなく、プロフィールには載らないような、隠れた相性を判断し、実はお似合いかもよ?という相手を、AI(人工知能)が見つけ出してくれる、というものだ。 やがて、AIによる婚活支援は大成功。これはその数年後、AIによって運営されている結婚相談所でのお話。 登場人物 男 冴えない未婚男性。相談にやってくる。

ロボットコント『開店!ロボットレストラン』①

登場人物 男  レストランを訪ねてきた客。 ロボ お店のマスコットとなるロボット。接客がヘタ。 店主 新しくレストランを開業。 ※ロボ=可能であれば、Pepperを使用する。 舞台は、小さな飲食店。レストランのようである。 上手側は入口、下手側はバックヤード。 中央には、テーブルと椅子。 入口の近くには、ロボットが立っている。 男、店外から歩いてくる。 男「ここかあ、新しい店」 男、扉を開けて入店。 ロボ「いらっしゃんしゃんせー!」 男「!?」 男、ロボットに気づく

目の前にある、遠くのほし

「ここ数日、急に寒くなったよね」 「ほんとにね」 「あ、クリスマスツリー!」 「お、きれいだねえ」 「てっぺんにある星、大きいね」 「うん、きらきらしてる」 きみは、わたしにとっての「ほし」だった。 空を見上げると、昼も夜も輝いていて、 季節が変わっても、ずっとそこにある大きな星。 手が届きそうでも、のばした手は届かなかった。 みんなが憧れていて、わたしもその中のひとりだった。 たくさんいる中の、ほんのひとり。 願いをかけてみるけれど、そんなこと、簡単には叶わなくて。 わ