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【五大商社とアニメ①】ベイブレードの大ヒット、ジブリを陰で支えた三菱商事

アニメ業界には様々な業態・業種の企業が関わっています。アニメスタジオはもちろん、電通や博報堂のような広告代理店、テレビ局、動画配信サービスなど多種多様なプレーヤーが存在します。

その中でも総合商社とアニメ業界について見ていきたいと思います。広告代理店、テレビ局がアニメ業界に近いことはなんとなく皆さんも分かるかと思います。しかし、総合商社とアニメがどのような関りがあるのか知らない方も少なくないはずです。

五大商社の雄・三菱商事には「ラーメンから航空機まで」という取扱商品が多いことを示すフレーズがあります。アニメも例外ではなく、商社が扱う商品の1つなのです。

今回から全5回にわたって、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅とアニメ業界の関わりについて紹介していきます。

今回は三菱商事について紹介していきます。

ベイブレード旋風を巻き起こし、ジブリにも出資していた三菱商事

「3、2、1!ゴー・シュート!」。2000年代、日本中の男子小学生はベイブレードに熱中していました。

日本古来のベーゴマを現代風にアレンジ、単純明快な対戦ルール、戦略にも関係する幅広いカスタマイズ性などから一大ブームを起こしたのがベイブレードです。

ベイブレードはコロコロコミックでマンガ連載がされ、アニメ化・劇場版アニメも製作されました。なんといってもベイブレードという玩具が大ヒット。まさにメディアミクスの成功事例です。さらに海外でも人気を博したクールジャパンの代表例とも言えるでしょう。

その人気の火付け役が三菱商事なのです。

三菱商事は子会社のディーライツを通してアニメに関わっていました。ディーライツの前身は1988年に設立された、ハドソンの子会社・未来計画株式会社。ハドソンは「ボンバーマン」などファミコンのソフト開発で名を馳せた会社でした。

そのハドソンが新規事業の開発やライセンス管理を目的として設立した未来計画株式会社を三菱商事は2001年に完全子会社化。ディーライツと名前を改め新たなスタートを切りました。

当時ディーライツで海外事業部の部長を務めていた中澤氏は、未来計画株式会社の子会社化の理由についてこう語っています。

「もともと親会社がやっていた権利ビジネスを、ゼロからではなく、業界の専門家の力を借りながらアニメ分野にも拡大・展開していくための方法として株式を取得した」

アニメ ビジエンス Vol.01 (anime-busience.jp)

三菱商事はアニメ業界に参入していく方法としてハドソンからIPを得る形で買収、そこから拡大を図ったのです。

中澤氏が指すところの業界の専門家の1つがタカラトミーです。もちろん、タカラトミーの専門分野は玩具です。では、ディーライツの強みは何だったのでしょうか?

総合商社の強みといえる海外への輸出力です。ベアメリカの玩具メーカー・ハズブロを通してアジアと中南米以外の海外地域でベイブレードは発売されました。ハズブロは世界シェア1位、2位を争う大企業ですが、そんな企業とライセンス交渉したのがディーライツです。

さらにディーライツの交渉力は海外での番組放送においても遺憾なく発揮され、北米やヨーロッパでも比較的いい時間帯に放送できたとされます。

近年、中東地域でアニメへの盛り上がりを見せていますが、約20年前からディーライツはまだ市場の小さい中東エリアに売り込みをかけていました。中澤氏はインタビューにこう話します。

「映像コンテンツは物理的に展開しやすいのがいいところ。展開する国や地域を広げようとする時に、ダビング費用など基本的に同じような元手で収益を積み上げていけるところが大きく、それが権利ビジネスの醍醐味であり、一番可能性のある部分。中東に限らずアフリカなど、とにかく届けられるところには届けるという考え方でやっています

アニメ ビジエンス Vol.01 (anime-busience.jp)

前半部分は隔世の感がありますが、後半の届けられるとこはどこでも届けてやるマインドは総合商社ならではです。

さらに特筆するべきこととして、ディーライツはジブリ作品の製作委員会メンバーでした。2004年の「ハウルの動く城」から2014年の「思い出のマーニー」までいくつかのジブリ作品に出資をしており、常連だったのです。

そんなディーライツは、2014 年にアサツーディ・ケイ(以降ADK)が株式の 51%を取得、2018年にはADKの完全子会社となりました。そして、2019年にはADKエモーションズを存続会社として合併吸収されるのです。

ベイブレードをスマッシュヒットさせ、ジブリにも出資していたディーライツ。そんなディーライツをなぜ三菱商事は手放してしまったのでしょうか?

三菱商事には丸の内キャピタルという完全子会社のプライベート・エクイティファンドがあります。三菱商事は丸の内キャピタルを通して、2009年タカラトミーとの間で、戦略的資本・事業提携に合意します。タカラトミーの株式15%を保有していました。

ディーライツ、丸の内キャピタルを通してタカラトミーと蜜月の関係を築いていた三菱商事ですが、2015年に資本・事業提携を解消。おそらく、その流れでコンテンツ事業から三菱商事は離れていったのでしょう。

ハドソンのIPを買い取り、総合商社のノウハウでベイブレードという一世を風靡したコンテンツを作り、ジブリにも出資していた三菱商事。またアニメ、コンテンツ事業に乗り出すことはあるのでしょうか?

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次回は三井物産とアニメについて紹介したいと思います。ソニーグループとかつて組んで色々と仕掛けていこうとしていた三井物産。

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引用・参考記事

アニメ ビジエンス Vol.01 (anime-busience.jp)

190816.pdf (adk.jp)

平成15年5月23日 (marunouchi-capital.com)

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