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HRの視点で『ONE PIECE』に出てくる元王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴのことを考えてみた。

こんにちは、コピーライターのたいすくです。
僕が好きな漫画に『ONE PIECE』があります。その中に、ドンキホーテ・ドフラミンゴという敵が出てくるんですね。彼のファミリー幹部への採用基準が、なかなか採用の本質をついていると思いましたので、noteにしたためてみました。
 

採用基準は「コア・コンセプト」

ドンキホーテ・ドフラミンゴの採用基準については、ドレスローザ編で少年時代のトラファルガー・ローとの出会いの回想で語られています。少年時代のローはある出来事がキッカケで世界と人間に絶望しており、しかもあと3年で死ぬ不治の病珀鉛病に罹っていました。「3年以内にたくさん殺して…、世界をブッ壊したい」と語るローにドフラミンゴは興味を持ちます。

その後、ドフラミンゴはローの出身地である「フレバンス」という街とそこで起こった悲劇について書かれている本を読んで、ローが体験した“地獄”を理解。ファミリーへの採用を決めます。

ここで注目したいのは、空島編で登場し、ドレスローザ編で再登場した海賊ベラミーです。彼はずいぶん前からドンキホーテ海賊団の幹部への加入を望んでいましたが、ドフラミンゴはチャンスを与えながらも簡単には認めようとしていないんですね。ローとの待遇は雲泥の差です。ベラミーとローは何が違うのでしょうか。

結論からいうと、背負っているものの重さが違うのです。

ベラミーは「ノーティス」という裕福な街で育ったチンピラで、ドンキホーテ海賊団への加入理由を「退屈なんだ、あんな街っ!!。ドンキホーテ海賊団は“北の海”の誇りだ!!おれらあんたらみたいな海賊になりてェんだ!!!夢見がちなそこらの海賊とはひと味違う!!」と語っています。

ローは「フレバンス」という白く輝く珀鉛(はくえん)産業で潤った街で育ちました。実はこの珀鉛は猛毒で、何世代にもわたって寿命を確実に短くしていくもの。世界政府はその正体に気がついていたものの「金になる」という理由で事実を隠蔽。結果、日常的に珀鉛に触れ続けたフレバンスの住民たちは、長くは生きられない珀鉛病に罹ってしまいます。すべての国民が同時期に発症。この事実に隣接した国々は珀鉛病を“伝染病”と思い込み、フレバンスに通じるすべての道路を封鎖。隔離措置を行ない、他国での治療や移住を希望する住民たちを檻から出た猛獣のように射殺。理不尽な仕打ちに激怒したフレバンス住民は戦争を起こしますが、“反撃”という大義名分を得た周辺諸国の兵士たちによって住民は虐殺されてしまいます。ロー少年は、家族や兄妹や友だちが無慈悲に殺されていくのを見て、死体の山に身を隠しながら国境を抜け、生き延びたのでした。しかし、珀鉛病に冒され、残りの寿命は3年ちょっと。幼い彼は世界とそこに住む人間たちに絶望と憎悪を燃やし、それが「3年以内にたくさん殺して…、世界をブッ壊したい」という言葉になったのでした。

コア・コンセプトとは、生まれ育ちによって形成される価値観のことです。知識やスキルは後でどうとでも身に付くものですが、価値観を変えることは容易ではありません。事実というものは1つしかありませんが、その解釈は価値観によって解釈が変わるもの。ある人が「ブラックだ!」と叫ぶ環境も、ある人にとっては「たしかな力が身につくステージ!」となるように、採用においてコア・コンセプトは結構重要だったりします。
 

ドフラミンゴがコア・コンセプトにこだわる理由

それは、ドフラミンゴのコア・コンセプトと成し遂げたいビジョンに関わっています。

ドンキホーテ・ドフラミンゴは、世界貴族“天竜人”の子として生まれました。彼の父親は聡明な人で、“天竜人”が持っている巨大すぎる権力を良しとせず、聖地マリージョアから離れて、普通の人たちと同じ暮らしを送ることを望みました。

ところが、“天竜人”は気分次第で人を殺しても許される存在。過去たくさんの“天竜人”の傲慢によって人生を狂わされた人々の怒りは、“天竜人”をやめて、世界政府から守られていないドフラミンゴ家族への私刑に発展します。自分とまったく関係のない人々が、自分たちに憎悪の目を向けて、自分たちを殺しにやってくる。「父上、お前はなんてことをしてくれたんだえ」。その後、少年ドフラミンゴは父親を殺害し、その首を持って聖地マリージョアに帰ることを希望しますが、“天竜人”は一度外に出たドフラミンゴと弟ロシナンテに帰還を許しませんでした。

この生い立ちによって、ドフラミンゴは生涯をかけて、“天竜人”と世界政府によって作られている世界の破壊を望むようになります。

このような大それたことを実現するために集められたドンキホーテ海賊団だからこそ、半端な覚悟の者は足手まとい。ドフラミンゴの掲げるビジョンに深くコミットした人間しかファミリー幹部には入れないという彼のこだわりが見えます。

現実世界での採用において、ここまで重い過去を持ったターゲット設定をすることはありませんが、コア・コンセプトを把握した上での採用を行なうことで、適材適所、双方マッチング精度の高い採用を実現することが可能です。

ちなみに、前述したベラミーの入団理由は、イタイ志望理由の代表みたいなもので、企業ホームページなどを見て浅い理解で面接で熱意を伝えようとするとスべるの典型ですので、分かったつもりで分かっていないということには気をつけたいものですね。
 

ドフラミンゴの致命的な問題点

同じような不幸な生い立ちを送り、世界とそこに住む人々にある種の憎悪を抱いている者たちで構成されたドンキホーテ海賊団の幹部たち。ドフラミンゴは幹部たちを「本当の家族はお前たちだけだ」と語り、幹部の危機には自ら飛び出していくほどの行動力を持っており、ドフラミンゴのことを良いリーダーと勘違いしてしまいそうになりますが、ドフラミンゴはリーダーとして致命的な失敗をしています。

それは、幹部にイエスマンしかいないことです。

リーダーにとって重要なのは「テクニック」よりも「考えかた」です。現実世界での例え話をしますが、売上は毎月右上がり、効率のいい仕事の仕組み化にも成功して残業ゼロ、と聞くと「すばらしい!」と思うかもしれませんが、仕事内容が「老人を騙してお金を振り込ませる」だとしたらどうでしょうか。リーダーの考え方によって、リーダーに付いていくメンバーの行き先は天国にも地獄にもなります。

ドフラミンゴを支える最高幹部4人、トレーボル、ディアマンテ、ピーカ、ヴェルゴは、「ドフラミンゴ、お前のすべてを“肯定”しよう」と言っているように、反対意見のない環境にドフラミンゴは安住してしまいました。唯一の肉親であるロシナンテだけは反対意見を述べる立場にいましたが、ドフラミンゴは彼を排斥してしまいます。

その結果、正しいことを発言する経営幹部を解雇して、イエスマンだらけで経営幹部を固めて、そのまま会社を傾かせてしまう…というイケてない中小企業みたいな運命にドンキホーテ海賊団が陥ってしまうのは、ある意味、必然なのかもしれません。
 

こんなことも考える人間です

最後にちょっとだけ自己紹介を。
転職サイト『エン転職』で14年間にわたって、超大手企業から郊外の中小企業までさまざまな業種の採用のお手伝いをしてきました。4000件以上の採用実績を持っている人間です。

どんな企業もピッタリ合う人材はいますし、どんな企業にも人を集められる魅力があります。それらを見つけ、ひと味違う視点とクリエイティブで採用課題や経営課題を解決する仕事を、現在、株式会社think shiftという会社で行なっています。

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最後までお読みいただきましてありがとうございます。m(_ _)m


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