国を守れず、学術が遅れて、日本人が虐殺されるのも、犯人は天皇である。

より

上記文抜粋
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軍拡を容認する日本世論とその背景要因

(※本文は中国の某所で発表した記事の原文です)

【日本世論の一大転換】


 自由民主党(以下自民党)安全保障調査会は4月27日、岸田文雄首相に対し、日本政府の外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書改定に向けた提言書を提出、防衛費について現行のGDP比1%程度から2%以上へ、5年以内に増額するよう政府に求めた。また、相手領域内でミサイル発射を阻止する敵基地攻撃能力を「反撃能力」に改称し保有するよう要請した。その岸田首相は5月23日、来日した米バイデン大統領と会談、同日の記者会見で「防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領からは、これに対する強い支持をいただきました」と述べ、日米同盟の抑止力・対処力を早急に強化する必要があることを挙げつつ、「日本の防衛力を抜本的に強化するその裏づけだ」と説明した。
 こうした情勢の中、JNNが5月9日に発表した世論調査によると、日本の防衛姿勢である専守防衛について、「見直すべき」が52%、「見直すべきではない」が28%となった。また、防衛費の増額については「賛成」が55%に上った。さらに5月21日に毎日新聞が実施した世論調査では、防衛費について「大幅に増やすべきだ」が26%、「ある程度は増やすべきだ」は50%で、合わせて8割弱が増やすべきだと回答している。他方、「増やす必要はない」は17%、「減らすべきだ」は6%だった。同様に、敵基地攻撃能力の保有については、「賛成」が66%となり、「反対」の22%を大きく上回った。過去と比較した場合、例えば2015年1月にテレビ朝日が行った世論調査では、防衛費拡大の是非について「支持する」が35%、「支持しない」は50%だった。また、1999年に内閣府が行った世論調査では、自衛隊の防衛力について、「増強したほうが良い」は13.5%、「今のままで良い」が66.1%だった。戦後の歴史において、軍事予算の拡大がここまで多くから支持された例はなかっただけに、国民世論が大きく転換しつつあることを示している(下図参照)。

※内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」より筆者作成(2019年以降は未実施)

ただ、世代別に見た場合、例えば6月20日に発表された産経新聞・FNN合同世論調査は防衛費の増額について、「今の国の収入の中で使い道を変えて増額すべきだ」と回答したものが全体平均で51.7%と最大だが、30歳代では60.8%となっている。これは、日本経済が低迷を続け、国家財政が悪化する中、若年層においては新規の国債発行や増税に対する警戒感が強いことを示している。また、6月6日に発表された読売新聞・NNN合同世論調査は、防衛費を今後どうするのがよいかという質問に対し、全体では「GDPの2%以上に増額する」は19%だったが、18~29歳は11%と全体よりも低く、「GDPの1から2%の範囲で増額する」が全体平均よりも高かった。これも若年層において防衛費の増加を容認しつつも、過度な増加や国民負担増に対する警戒感を示すものとなっている。
 また、台湾有事については、日本経済新聞が5月30日に発表した世論調査によると、中国による台湾有事に日本がどう備えるべきかという質問に対して、「今の法律の範囲で可能な備えをすべきだ」が50%、「法改正も含めて対応力を高めるべきだ」が41%となり、「備える必要はない」は4%であった。この調査の場合、調査対象が質問内容を十分に理解しているかどうかの疑問がある。「今の法律の範囲で」というのは実質的には「台湾有事に対して積極的には介入しない」ことを意味する一方、「法改正を行って対応する」は積極介入を意味するわけだが、調査対象がそこまで理解しているかは不明だ。とはいえ、台湾有事に対して、法改正を行って積極的に対応すべきであると答えたものが4割を超えた事実は大きい。同調査では、敵国のミサイル発射基地や指揮統制機能を攻撃する「反撃能力」の保有についても質問しており、同能力を持つことに「賛成だ」は60%で、「反対だ」の30%を上回った。日経の21年9月の調査では「敵基地攻撃能力」の名称で保有の是非を質問しているが、「賛成」が44%、「反対」は47%だった。これらは国民世論が専守防衛から積極防衛を志向しつつあることを示している。
 日本で防衛費について対GNP比1%を上限とする方針を打ち出したのは、1976年の三木武夫内閣であり、三木後もその方針は踏襲されたものの、1986年に中曽根康弘内閣がアメリカからの要望を受けて撤廃を宣言した。確かに防衛費は1987年度予算から対GNP比で1%を超えたものの、実際には87年から89年までの実績で1.004%、1.013%、1.006%に留まり、1990年以降は再び1%を下回っている。最近では右派と考えられている安倍晋三政権でも、2015年度の防衛費は対GDP比で1.002%に留まっており、政権の政治スタンスに関係なく、防衛費は抑制されてきた。1990年までは「1%」の枠があっても、経済成長に伴う歳入、歳出増によって防衛費も自然に増加していったが、1991年以降、日本経済は長期低迷期に入り、防衛費の実額はほぼ横ばいで推移してきた。これが大きく変わるのは、2021年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙に向けた自由民主党の選挙公約において、NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)を念頭に置いた防衛関係費の増額が明記されたところに始まる。しかし、この総選挙で防衛費の増額が政策議論の俎上に上ることはなく、自民党は選挙に勝利して公約が民意に認められた格好となった。
 軍拡を主張する自民党は、その理由として「中国による急速な軍拡」や「北朝鮮による核・ミサイル開発」などを挙げているが、これは今に始まったことではない。内閣府による「自衛隊の防衛力について」の世論調査(下図)が示す通り、日本国民の世論は2010年代に入ってやや防衛力の増強を望む声が増えたものの、つい最近まで「防衛力は現状程度で良い」が過半を占めていた。要は急速に変化したのは、国民世論なのである。 
軍拡が支持される世論の背景には、岸田首相による「力による現状変更を許すとアジアにも影響が及ぶことを十分考えておかなければならない」(2月17日、宏池会会議にて)という発言や、安倍晋三元首相や佐藤正久自民党外交部会長による「台湾有事は日本有事」という発言が象徴しているように、政治家が危機を煽る言動を繰り返し、特に露宇戦争の勃発によってメディアがさらに危機を煽る有識者の言動を優先的に報じていることが主因と考えられる。だが、過去には1980年代までは現在と同じように「ソ連による脅威」が煽られていたものの、今日のような世論の変化は認められず、防衛費の増額は自民党が議会で多数を占めていても、世論の反発を考慮して、常に繊細な問題であり続けた。つまり、世論が軍拡を受容する背景を分析しない限り、今日の日本を理解することは難しい。以下、「パワーゲーム」「歴史修正主義」「イデオロギー対立」の3つの視点から考えてみたい。

【パワーゲーム上の危機】

露宇戦争の勃発以前における、近年の日本の安全保障におけるロシアの立ち位置は、2013年12月に安倍政権下で策定された「国家安全保障戦略」に端的に記されている。同戦略は、アジア太平洋地域の戦略環境について、

特に北東アジア地域には、大規模な軍事力を有する国家等が集中し、核兵器を保有又は核開発を継続する国家等も存在する一方、安全保障面の地域協力枠組みは十分に制度化されていない。域内各国の政治・経済・社会体制の違いは依然として大きく、このために各国の安全保障観が多様である点も、この地域の戦略環境の特性である。

と述べ、異なる政治体制や安全保障観が緊張を高めているとしている。中国については、

中国の対外姿勢、軍事動向等は、その軍事や安全保障政策に 関する透明性の不足とあいまって、我が国を含む国際社会の懸念事項となっており、中国の動向について慎重に注視していく必要がある。 また、台湾海峡を挟んだ両岸関係は、近年、経済分野を中心に結びつきを深めている。一方、両岸の軍事バランスは変化しており、両岸関係 には安定化の動きと潜在的な不安定性が併存している。

と記している。2013年に制定されたものなので、今読むと抑制的な内容になっているが、2021年版「防衛白書」には、

中国は、過去30年以上にわたり、透明性を欠いたまま、継続的に高い水準で国防費を増加させ、核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に、軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している。その際、軍全体の作戦遂行能力を向上させるため、また、全般的な能力において優勢にある敵の戦力発揮を効果的に阻害する非対称的な能力を獲得するため、情報優越を確実に獲得するための作戦遂行能力の強化も重視している。(中略)こうした中国の軍事動向などは、国防政策や軍事に関する不透明性とあいまって、わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっており、今後も強い関心を持って注視していく必要がある。

と明確に「安全保障上の脅威」として認定されている。また、軍事費の日中間格差を図表化し、軍事バランスが隔絶しつつあることを強調している。

2021年版防衛白書より

話を「国家安全保障戦略」に戻すと、同戦略は対ロシアについて、

東アジア地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日露関係を全体として高めていくことは、我が国の安全保障を確保する上で極めて重要である。このような認識の下、アジア太平洋地域の平和と安定に向けて連携していくとともに、最大の懸案である北方領土問題については、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針の下、精力的に交渉を行っていく。

と記している。「東アジア地域の安全保障環境が一層厳しさを増す」とは、一義的には中国の脅威を指し、二義的には朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の脅威を指す。一例をあげれば上図が示す通り、中国の軍事費は2000年に日本の防衛費を超え、05年には2倍、2010年には3倍に達し、2021年には5倍に及んでいる。日中間には尖閣諸島をめぐる領土紛争がある上、東シナ海におけるガス田利権をめぐる対立もあり、さらに台湾海峡は日本の海上交易にとって必要不可欠な生命線であるため、東アジアにおける軍事的均衡は日本の安全保障にとって最重要課題となっている。直截的には、「中国に武力行使させない」ことが日本の至上命題であると言える。また、朝鮮は2006年に核実験を成功させて核武装している上、ミサイル技術も向上を見せており、国交がない敵対的な国家による核武装は深刻な脅威となっている。それ以外に、韓国とは竹島をめぐる領土紛争を抱える他、近年では従軍慰安婦や歴史教科書に代表される歴史認識問題に起因する対立がますます先鋭化しており(後述)、従来の日米韓が協力して朝鮮の脅威に対峙する構想は破綻している。
 その結果、日本は台湾を除く東アジアの全ての国と対立もしくは緊張関係に置かれ、安全保障面における対米依存度が上昇している。その一方で、アメリカではトランプ大統領選出に象徴される自国中心主義の台頭や、国際社会における相対的な影響力低下などがあり、アメリカに対して従来のような関与や影響力が期待できなくなっている。こうしたことが、安全保障をアメリカに依存する従来型の発想からの脱却が求められる一因となっていた。
 そのため、ロシアを日本の安全保障環境における脅威と見なすのではなく、むしろ外交・安全保障協力を進める戦略的パートナーとし、対中国包囲網の一員や対中牽制の手段とまではならなくとも、ロシアと中国が相互依存の関係になったり、同盟関係になったりすることを防ぎつつ、友好・協力関係を構築して東アジアにおける孤立的環境(対日半包囲)を脱却するという発想が生まれた。2012年末に成立した安倍政権は、この発想に基づいて対露外交を進め、北方領土問題を解決して日露平和条約を締結、北方における安全保障リスクの緩和を企図したが、果たすことは叶わなかった(詳細は拙稿「围绕俄乌战争的日俄关系变化与展望」を参照)。
 また、安倍外交は民主党政権期に悪化した日中関係の改善にも取り組んだ。2014年11月に初めて行われた安倍・習近平首脳会談に際して、安倍首相は習近平主席に対し、次のように述べた。「習主席と自分との間では、大局的、長期的な視点から 21 世紀の日中関係のあり方を探求したい。私としては、「国民間の相互理解の推進」、「経済関係の更なる深化」、「東シナ海における協力」、「東アジアの安全保障環境の安定」の 4 点につき双方が様々なレベルで協力していくことが重要と考える」。それから7年半を経た現在においても、日中関係の基礎的な課題は変わっていないと考えられる。しかし、安倍が対中あるいは対露友好外交を推進できたのは、安倍に対する批判が弱かったことが大きく、穏健改革派で党内基盤が弱い岸田首相が安倍氏同様の外交を進めた場合、党内保守派あるいは国民の保守層から批判が強まる傾向がある。現状でも、安倍政権期と比べて、自民党内の保守・タカ派から強硬路線を求める声が高まっており、安倍自身も対台湾外交を志向するなど、岸田政権の対中外交は難易度を増している。
 さらに、2021年1月にアメリカでジョー・バイデン政権が成立すると、アメリカは再びイデオロギー外交と覇権主義への傾斜を強め、反ロシア・反中国などの主張を強化している。その影響を受け、日本の独自外交は抑制を余儀なくされている。同時に、菅前内閣も岸田現内閣も安倍内閣ほどには政権基盤は強くなく、安倍外交の継承が困難になっていたところに、露宇戦争が勃発、日本国内でも反ロシア世論が高まり、欧米諸国との協調を余儀なくされている。
 以上をまとめると、日本は東アジアをめぐる安全保障環境、特に軍事バランスが大きく変化する中で、安倍外交に象徴される対中、対露親善外交によって従来の安全保障環境を維持し、軍備の増強を抑制してきた。ところが、安倍政権の退陣、米バイデン政権の成立、露宇戦争の勃発によって、親善外交の転換を余儀なくされた。そして、日本政府は香港やウイグル問題で中国を非難し、ロシアに対して経済制裁を発動、日韓対立も解消せぬまま、東アジアで孤立し、緊張が高まっている。それは結果的に軍事バランスの変化を表面化させるところとなった。そうした点をメディアを中心に、一部の政治家や知識人、あるいは政府自体が危機感を煽り立て、国民を不安にさせているのが現状である。

【深化する歴史修正主義】

2021年4月、日本政府は 「慰安婦」の表現について、「『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤 解 を招く恐れがある」とする答弁書を閣議決定した。すでに今年度の教科書検定では「従軍慰安婦」という表現を使ったものが合格しており、文部科学省は「今回の閣議決定は今後の検定に反映される」との考えを示している。これを受けて、読売新聞は 5 月 1 日の社説で、「『従軍慰安婦』という 言葉は、強制連行があったかのような誤解を招きやすい。教科書などで使うことは不適当であり、不使用を徹底したい」との見解を示した。同社説は、国連人権委員会が出した慰安婦問題 に関する 対日勧告についても、「事実に基づかない批判をこれ以上拡散させぬよう、政府は対外発信を強化しなければなるまい」と主張している。文部科学省は 同年6 月に開催されたオンライン会議において、教科書出版社各社に対し、 中学・高校教科書の「従軍『慰安婦』」と労務者等の「強制連行」等の記述を、4 月の閣議決定した答弁書に合わせてそれぞれ「慰安婦」と「徴用」に訂正するようにとの指示を行なった。
 他方、外務省は2021年6月、韓国系市民団体によるドイツでの慰安婦少女像設置を受け、女性を「性奴隷」にした事実はないなどとする慰安婦問題の見解をドイツ語に訳し、ホームページに掲載した。 歴史問題を巡る韓国との「世論戦」を意識した対応である。外務省は各国での少女像設置を通じて 慰安婦問題に向き合うよう日本に迫る韓国政府などの動きに対抗、政府の歴史見解を他言語に翻訳 して発信していく方針を示している。
 また、自民党は 昨年12 月、2022 年度政府予算案策定に向けて党の基本方針を示す「予算編成大綱」を策定した。その外交・安全保障の項目には、元慰安婦や元徴用工を巡る韓国との歴史問題を念頭に「歴史戦」への対応を重視。中国による尖閣諸島周辺での領海侵入を踏まえ、日本の領土や主権に関わる調査・研究や、情報発信の強化を求めている。
 日露関係では、2022年版外交青書には、北方領土について「固有の領土」、「不法占拠」などの記述が復活した。北方領土問題というのは、第二次世界大戦の結果に対する疑義を表明するものであり、歴史修正主義の一種と言える(詳細は拙稿「围绕俄乌战争的日俄关系变化与展望」を参照)。
 日本国内では 1990 年代には十五年戦争を知る世代が政界から引退すると同時に、反戦平和を志向した日本社会党が分裂、弱体化したことで、アジア外交を志向する政治家も民間人も減少しつつある。例えば、現在の国会に占める社会主義政党の議席比率は 5%に満たない。90年代までは、右派やタカ派の主張に対して左派やハト派が論陣を張り、歴史修正主義に対しても強い対抗力を発揮したが、現在では対外強硬論や歴史修正主義に対する論陣は非常に脆弱なものとなっている。現在の自民党においても、急進的な右派・タカ派議員の数は決して多いとは言えないが、穏健派・ ハト派が勢力を弱め、沈黙を守る中で、右派・タカ派の主張が際立つところとなっている。とはいえ、右派・タカ派が日本政治の主導権を完全に握っているとも言えない。2021 年度の公立中学校における教科書採択率を見た場合、育鵬社の歴史修正主義教科書の採択率はわずか 1%でしかなく、右派議員が望んだ結果にはなっていない。 だが、その一方で、大衆の中には根強い勢力を持つと考えられるリベラル派やハト派は、有力な政党を結成するには至っておらず、世論調査における野党第一党の立憲民主党の支持率は 5%前後で低迷し続けている。つまり、相対的には決して大きくない右派・タカ派集団はその勢力を結集させ、安倍や麻生などの代表者を首相に据えることに成功している。その一方、リベラル・ハト派は大衆の動員に失敗し、勢力を分断させているため、国会内でも自民党内でも常に相対的に小勢力となっている。
 以上のように、日本では対抗勢力が脆弱のまま歴史修正主義が深化しつつある。歴史修正主義は、国民の歴史観を変質させ、他のアジア諸国民との間に歴史認識の隔絶を生み、国民間の感情的対立に繋がる要因となっている。例えば、昨年9月に内閣府が実施した「外交に関する世論調査」では、「韓国に対する親近感」について「親しみを感じない」とする者の割合が62.4%に達し、「現在の日本と韓国との関係」について「良好だと思わない」とする者の割合が81.1%に上っている。本来は同じ西側陣営に属する韓国に対する国民感情がここまで悪化しているのは、歴史認識が政治問題化しているところが大きいと考えられる。こうした歴史認識の隔絶は、日本の外交的孤立を招き、軍事力強化による安全保障上の担保を必要とする事態に自らを追い込んでいる。
 中国の関係で言えば、日本の若年層には日中戦争を始めとする第二次世界大戦の歴史を知らないものが増えており、愛国歴史教育を受けた中国の若者と対立する要因にもなっている。また、日本では歴史修正主義に基づく自国優越主義が強まっているのに対し、中国では政府の「中華民族の偉大なる復興」スローガンの下、米中対立も相まって、愛国主義と中華至上主義が強まっており、日中両国において感情的対立の火種となる恐れがある。

【激化するイデオロギー対立】


 米バイデン政権の特徴の一つは、イデオロギー・人権外交である。サリバン大統領補佐官は昨年11月8日に行われたCNNテレビのインタビューで、対中国政策について、アメリカによる政策で中国に根本的な変革をもたらそうという過去の政権の姿勢は誤りだったと指摘、従来の中国の体制転換あるいは自主的な民主化をめざすのではなく、同盟国や友好国と連携して中国に対抗する方針を示し、台湾の自主的防衛力の強化に努める考えを示した。そして、アメリカは同12月にオンラインで「民主主義サミット」を開催、中国とロシアを招待せずに台湾を招待した上で、「民主主義対専制主義」のスタンスを明確にした。さらに、アメリカは、北京冬季五輪を新疆における人権侵害を理由に、外交ボイコットを実施、豪州,英国、カナダなどが同調した。
 バイデン政権の成立を受けて、日本政府もまた人権外交に同調する動きを見せている。2021年版「外交青書」は、「自由や民主主義、法の支配といった国際秩序は挑戦を受けている」との認識を示した上で、中国の動きについて「安全保障上の強い懸念」を表明した。20年版では「懸念事項」としたものが、より強い表現となった。また、尖閣諸島周辺で活動する中国公船を「国際法違反」と断じ、初めて記載された。さらに、新疆ウイグル自治区の人権状況にも「深刻な懸念」と明記、香港国家安全維持法についても「日本を含む国際社会からたびたび重大な懸念が示された」と言及した。いずれも外交青書には初めての記載となる。同様に2021年版「防衛白書」も「新疆ウイグル自治区の人権状況については、国際社会からの関心が高まっている」という一文が新たに追加された。これらはバイデン政権成立を受けての、日本外交方針や安全保障観の変化を示すものと言えよう。
 2021年3月に外務省が行った「外交に関する国内世論調査」は、「日中関係:国交正常化50周年も踏まえ対中外交で重視すべき点」(複数回答可)について、「領海侵入等に対して強い姿勢で臨んでいくこと」が61.6%、「人権・自由・民主主義・法の支配の尊重を求めていくこと」が50.7%、「地域及び国際社会の課題における協力の強化」28.2%となっている。これは、日本世論が対中友好よりもイデオロギー外交や対中強硬外交を支持する傾向を示している。
 だが、対中世論硬化の背景にあるのは香港や新疆問題だけではない。例えば、中国ではゲーム、漫画・アニメ、あるいは芸能分野を中心に表現規制が強化されている。South China Morning Postは、中国当局が新作ビデオゲームを承認せず、その余波で2021年7月以降に中国のゲーム関連企業1万4000社が閉鎖したと報じ、日本のゲーム業界に衝撃を与えた。また、同年 9 月には、18 歳未満がオンラインゲームで遊ぶ時間を週末の 1 時間だけに限定する通達が中国当局より出され、暴力や性的な表現についても審査が厳格化されている。こうした表現規制は、漫画・アニメや芸能分野においても強化されており、日本の若者や業界関係者の間でも「市民的自由を弾圧する中国」という印象が強まっている。
 一方、国会では、対中非難決議の採決が難航している。中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害行為を非難する国会決議については、すでに今年2月1日に衆議院では可決されたものの、与党内調整の過程で公明党の提案を自民党が受け入れ、決議文からは「非難」「人権侵害」の文言が削除され、「中国」の国名も削除された。参議院ではいまだに文面をめぐる調整が続いており、同じく公明党が抵抗、6月3日現在でも採決の目処は立っていない。だが、対中世論の硬化を受けて、日本共産党も対中非難決議に同調する中、公明党がどこまで抵抗できるかは不明である。
 前項の歴史認識問題を含め、人権やイデオロギーの対立は外交交渉によって解決することが極めて困難であり、そもそも対話が成立しにくい性質を有している。そのため、日本世論もまた紛争解決の手段としての武力への傾斜を強めているのではないかと考えられる。当然ながら、日本国憲法第9条1項は「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定しているものの、2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」が死文化している以上、その効力は実質的な意味を失っている。それは、国会において憲法改正派が3分の2を占めつつある現状に関係していると言えよう。また、今年3月にNHKが行った世論調査で、「憲法を改正する必要があると思う」が35%、「改正する必要はないと思う」が19%と、改憲支持が護憲派を大きく上回り、改憲派の「憲法改正が必要な理由」として「日本をめぐる安全保障環境の変化に対応すべき」が57%、「自衛隊や自衛権を明確にすべき」が23%を占めたことも、日本世論の大きな変化を示している。

【対立を深める二元論】


 中国の秦剛駐米大使は2021年9月、「米国の一部は現在、米中関係を民主主義と権威主義との対決と定義し、イデオロギー的対立を煽り立てている。両国関係が深刻な困難に直面している根本的原因は、ここにある」と述べ、米国に対して対立を煽るのではなく、互いの理念を尊重しつつ、共存する道を模索すべきであると訴えた 。
 もともと日本では、2010年代の中国の急速な発展に対して警戒する向きが強まっており、各種世論調査でも日本国民の対中感情は現在まで厳しい状態が続いている。しかし、政治面では安倍政権下で中国、ロシアと共存する方向が模索され、一定の成果を挙げていた。日中、日露ともに首脳会談が高頻度で繰り返され、日中関係は「政冷経熱」と言われつつも、一定の安定を保っていた。だが、2020年に菅義偉内閣が成立、2021年にアメリカでバイデン政権が成立すると、新型コロナ禍の影響もあって、日中、日露首脳会談は完全に途絶え、日本政府はアメリカの方針転換を受けて、人権外交に舵を切っている。また、安倍政権よりはリベラル・穏健と考えられた岸田政権でも歴史修正主義が抑制される傾向にはない。その結果、東アジアの対立が深刻化して、安全保障の需要が高まり、戦後の歴史には見られなかった勢いで軍備増強を求める国民世論が広がっていると考えられる。
そして、軍備増強を求める世論は、6月23日に始まる参議院議員選挙にも影響を与えるだろう。軍拡を主張するのは、自民党、日本維新の会、国民民主党などで、これに対して立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組などが反対する構図となっているが、立憲以下の野党は苦戦が予想される。今回の参院選が終わると、衆議院の任期満了は25年10月、次期参院選は25年7月と、3年間大きな国政選挙が行われない期間ができる。従って、今回の参院選で自民党を始めとする政権党が勝利した場合、軍事費の増額、安全保障関連法の改正、そして憲法改正が進む可能性がある。
 だが、現実には日本の軍拡は容易ではない。日本の国家財政は税収が歳出の6割程度しかなく、毎年巨額の国債を発行することで歳入を賄っているのが実情だ。自民党が主張する5兆円規模の防衛費増額を行うためには、最低でも消費税を3%は上げる必要があり、社会保障費の高騰を考慮すれば、5%程度上げる必要がある。確かに国民世論は、軍拡に対して許容的ではあるものの、軍拡のために増税を受け入れるかどうかについては不明な点が多い。そのため、自民党の高市政調会長も「防衛費増額の財源は当面は国債発行で賄う」旨を表明している。しかし、経済が低迷する中で国債発行を増やすことは、財政の健全性をさらに低下させ、インフレリスクを高めることになる。また、軍拡を進めると言っても、その具体的な内容は現状では全く未知数であり、円安が進行すると同時に、アメリカの装備品は高騰傾向にあるため、日本円で米国装備を大幅に調達するのは困難になっている。
 以上、日本における軍拡論争は内実を伴わない、非常に政治的要素が強いものであり、仮に一定程度の防衛費増額が実現したとしても、現行の中国の軍事力で十分に対処できる範囲ものであると考えられる。むしろ、日本の議論や主張に引きずられて軍拡競争に乗らないようにすることが肝要であろう。同時に中国国内において反日感情が加熱しないようにすることも重要である。

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抜粋終わり

歴史修正主義も、従米隷属も、すべて「天皇が戦争責任が無い」ってことに端を発している。

天皇の無責任で無答責とその発展の「官僚の無謬性」を墨守するのが「国体」で、日本人の命など、天皇とその臣僚と信者には問題では無いのである。

このような「日本人殺戮兵器天皇とその信者」の日本国という政体は、学術も日本人を猿化するためにしか使われない。


上記文抜粋
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【BOOK】『日本の生命科学はなぜ周回遅れとなったのか 国際的筋肉学者の回想と遺言』

杉晴夫先生の本は名著『筋肉はふしぎ―力を生み出すメカニズム』を読んだことがあります。アクチンやミオシン、ATPなど、筋収縮のメカニズムをはじめて理解できた気持ちになれました。

未読ですが、杉晴夫先生は『生理学からみた鍼灸効果研究の現在』という鍼灸に関する本も書かれています。

これも未読ですが『現代医学に残された七つの謎―研究者の挑戦を拒み続ける人体の神秘』では、第1章で鍼灸がドイツで科学的根拠を認められて保険適応されたことから鍼灸の科学を論じ、「鍼灸に保険が認められないのはおかしい」と杉先生は論じられているそうです。


新著でも同じ主張を書かれています。
「日本の生命科学はなぜ周回遅れとなったのか?」は、以前からわたしが感じていたことを経験とファクトから詳細に論じられています。

まず、日本の理系には、明らかな認知の歪みがあり、特に医系はその傾向が強いと思います。日本の人文科学・社会科学など文系の学問は国際的に学術レベルが高く、信頼されていますが、現在の日本の理系、医系については世界一の研究捏造大国と題する記事すらあります。

2016年05月28日『東洋経済オンライン』
『日本が世界一の「研究捏造大国」になった根因』

以下、引用。

2014年まで11年間の撤回論文数のワーストワンは日本人、ワースト10に2人、30位内に5人も名を連ねている。
日本は捏造が多く、ほかの国は盗用が多い。
研究不正は2000年まで日本では目立つものはなかった。2000年に麻酔科医が摘発されて以降、次から次へと出てきている。

【研究不正は医学、生命科学に多い?】
数学のように厳密にロジックを考える分野は下手なことをすればバレる。医学、生命科学における現象データの場合は追求されても、そのときはこうなったと言えば通るところがある。

EBМ診断学で問題になる「感度」「特異度」「尤度比」など、コロナ禍でやたらと取り上げられたベイズ統計学については、1980年代に社会学や心理学などの文系の分野ではすでに確率統計的な科学認識論へのパラダイム・シフトが起こっていました。

津田敏秀先生が『医学と仮説――原因と結果の科学を考える』や『医学的根拠とは何か』で日本の医学界の科学哲学・科学認識論が世界の常識からかなり時代遅れになっていることを指摘しています。

わたしは1990年代に医学の勉強を始めたころから「科学認識論が古過ぎる」と感じていたことを2010年代に津田敏秀先生が指摘された形になります。

1990年代から2022年にかけての30年でわたしが感じたのは、日本特有の権威主義の問題です。もちろん、海外でも同様の問題はありますが、相対的に日本のほうが大きいと感じます。
特に学者の権威主義的パーソナリティや権威に訴える論証の問題が大きいです。

さらに、御用学者の問題です。津田敏秀先生は『医学者は公害事件で何をしてきたのか』で、まさに御用学者の問題を論じられました。

杉晴夫先生も、日本の明治維新以降の学問や大学の成り立ちの歴史から論じられています。
この日本の学会における御用学者と権威主義の問題はそれほど根が深いのです。

日本はまだ『人新世の「資本論」』という本が50万部も売れるという世界有数の知的な国であり、少なくとも人文科学系と社会科学系は世界的に優れています。

パラダイム概念を提唱した科学哲学者トーマス・クーンのライバルであった科学哲学者パウル・ファイヤアーベントは『方法への挑戦―科学的創造と知のアナーキズム』で、中国伝統医学や鍼灸から影響をうけて科学哲学という学問全体を新たなステージに到達させました。これは科学哲学だけでなく、西洋哲学全体における思想史的大事件でした。


明治時代以降の権威主義をいかに捨てるかこそが大きな問題になると思います。
江戸時代の日本の科学は、数学における関孝和など世界的にトップレベルでしたが、全員が民間のインデペンデント科学者でした。

近代が終わり、ポストモダンに移行している今、明治維新以降の大学や近代教育がまさに崩れ去ろうとしています。

権威主義を捨て、補完代替医療の世界に移行し、教育や知の世界をインデペンデント科学者が再構築する必要性があります。

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抜粋終わり

日本はまだ『人新世の「資本論」』という本が50万部も売れるという世界有数の知的な国であり、少なくとも人文科学系と社会科学系は世界的に優れています。

これは、学の無い私にはわからない。

まあ遅れはないのだが、

「天皇に戦争責任が有る」という猿や子供でも理解できること、理解できないアホばかりなのは、その学術に歪みがあるからなのは間違いないのである。


あと、何故に科学分野での捏造・盗作が多いのか。

そりゃ、原子力は、天皇家の原爆利権だし、医学生命科学は、天皇家直属の731部隊の人体実験医療の管轄だから、捏造と盗作なければ、回らんのですは。

さらに

わたしは1990年代に医学の勉強を始めたころから「科学認識論が古過ぎる」と感じていたことを2010年代に津田敏秀先生が指摘された形になります。

これって大きいと思う。

認識がおかしければ、知見もおかしくなる。

なんせ「天皇には責任が無い・上官の命令責任は重しくてはいけない」とか認識が最初から狂っているのですから・・

孫子が「彼を知り己を知れば百戦危からず」といい

諸葛亮兵書で


将帥は「腹心」「耳目」「爪牙」を持たなければいけない。
「腹心」がなければ、暗い夜道を手さぐりで歩くようなもので、思いきった行動がとれない。
「耳目」がなければ、暗闇のなかに坐っているようなもので、からだを動かすことすらできない。
「爪牙」がなければ、餓死寸前の人間が毒物に手を出すようなもので、身の破滅を招くことになる。

とある。

認識・知覚が正常でないと、まともに動くことすらできないのだから。

そのOSたる思想が狂ってしまえば、まあ発狂して死ぬしかないのですよ、国家・社会も。


現に「天皇」という認識破壊装置・モラル破壊魔によって、認識・モラルが破壊され、日本国・日本人は今も死滅に爆走中です。

でも、多少気づく人も出てきたか・・


より

上記文抜粋
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Unknown (にゃんこ)
2022-07-05 10:42:55
20年以上前からの私の夢は、「米軍が日本から出ていくこと。天皇制が終わること」でした。ローマ帝国の歴史を見ると、まだ1世紀以上はかかるかと絶望していましたが、少し灯りが見えてきたかなと。
リーマンショックの時、大恐慌から世界戦争になるかもと思い、少し勉強を始めました。子供の頃の交通事故の後遺症のため、高校に通うのもやっとで勉強も出来ずにきていたので、本当に知識不足というか無知。
その時、最初に読んだのが明治のイギリスの外交官アーネスト・サトウの本でした。イギリス人ですが移民の子でスラブ系の人です。何故、この本を選んだのか自分でもよく分からないのですが、これで目から鱗でした。明治維新(明治のクーデター)の意味が理解出来ました。それから色々と読んで理解を深めていきました。本当に教えられたことは嘘ばっかり。
日本は大変な事になるかもしれませんが身から出た錆で仕方がない。一度トコトン落ちないと改革は出来ないかもと思っています。

西郷隆盛の議会制民主主義論とアーネスト・サトウ。 (睡り葦)
2022-07-05 23:33:29
 最初から一次史料を読み砕かれるとは!すばらしいです。にゃんこさまに心から敬意を表します。
 『A DIPLOMAT IN JAPAN』の和訳、岩波文庫版を背中の本棚に置いたまま何年経ったでしょう、すみません。
 この上下2冊を丸善hontoで買ったのは、次のような叙述があると聞いたからです。

『一外交官の見た明治維新』下巻、第21章45ページに、
 ・・・その翌日、私は京都の情勢を聞くために、西郷に会いに薩摩屋敷へ行った。西郷は、現在の大君政府の代わりに国民議会を設立すべきであると言って、大いに論じた。私は友人の松根青年から、反大君派の間ではこうした議論がきわめて一般的になっていると聞いていたが、これは私には狂気じみた考えのように思われた。

・・・と。英語原文でどのような表現であったのか非常に興味があります。
 
 もっとも進んだ考え方を持っていた赤松小三郎を代表として、この時期に議会政体構想がさまざまに提案されていましたがすべて歴史から抹殺されています。
 赤松小三郎は薩摩に依頼されて藩兵に英国式の軍事教練をおこなっていましたので、西郷に赤松の考え方になんらかのかたちで触れる機会があったのかもしれません。
 赤松小三郎はサトウの言う反大君派ではなかったように、自覚的な武士階層のあいだに広範に拡がりはじめていた国民議会設立構想を、狂気じみた考えであると切って捨てる英国外交官が明治維新のフィクサーであったという歴史の真層を見て衝撃的でした。

にゃんこさまはすでにご感得と想像いたしますが、天皇制をつくり出した長州明治維新は掛け値なく予防的反革命だったわけです。
 ニホンジンにそれをおしえるわけにはゆかないのですが・・・高度成長期以降に司馬遼太郎が国民的歴史に仕立て上げた明治維新観に、この10年あまりでずいぶんの変化が生じ始めたのではないかと感じておりますが、なぜなのでしょうか?
 ようやく現実に気づかされての近代化&成長神話への幻滅?・・・待ちかねた改革の前兆といたしましょう。

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抜粋終わり

天皇廃止か天皇家皆殺しで、日本人救助

天皇の無い 蒼い空を取り戻す

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