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カオスで意味がわからなくて、センスオブワンダーのあふれた世界

エリザベス・ムーン著、「くらやみの速さはどれくらい」(早川書房)を読んだ。SFのタイトルってかっこいいものが多い気がする。「くらやみの速さはどれくらい」って単純にかっこよくないですか。ネットで他の方が「原題は"The Speed of Dark"だから直訳すると"くらやみの速さ"のばずなのにそれに"どれくらい"を加えるのが粋」みたいなことをおっしゃられってて確かにな~と思った。

たくさんの方が作品の内容上「アルジャーノンに花束を」と比較されているうえに、私は「アルジャーノンに花束を」を読んだことがないので、この記事では二作品の比較について言及しません。

こっからはネタバレあり!

簡単にあらすじを紹介すると、主人公は自閉症(どちらかというとアスペルガーに近い気がするが)で、自閉症を治す技術が出来て、その技術を試す実験に参加するかどうか、というお話である。あらすじを書いていると本当に書きたいことが書けなくなるのでこれ以上あらすじについては書かない。もっと詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

新技術によって自閉症が治せる場合、本当に自閉症というものは治すべきなのか、誰もが同じ"健常者"というものになったほうがいいのか、自閉症という病気はアイデンティティの一つまたはその人の個性なのか、治る前と治ったあとの人は同じ人物と言えるのか。そういったことがこのテーマになっていると感じた。

誰もが同じ"健常者"になること。いったいどこからが、どの範囲から出ると"健常者"じゃないと言い切れるのだろうか。日本では多くの人が同じ考え方をすると私は感じていて、さらにみんなと違う考え方をする人を拒絶とまではいかないまでも受け入れずらいという人も少なくないと思う。ぶっちゃけると、そういうの嫌いだ。全員が同じように考える、同じアイデアしか出ない、そんな世界は退屈だと感じてしまう。普通じゃないアイデア、誰も思いつかないアイデアを面白いと思うのは私だけではないだろう。だからみんなと違うものを読んで、聞いて、食べて、経験した、訳の分からない人の言うこと、やること、思いつくこと、そしてその人自身が私はわけがわからなくて大好きだ。むしろ、なんだかわくわくする。世の中がそういう人でいっぱいだったら、そこには、また別の困難も当然あるだろうが、その世界はとてもカオスで意味がわからなくて、センスオブワンダーのあふれた世界だ。そんな世界に行きたいと思うのは私だけなのだろうか。

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