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【レポ】Q.E.D.ポルノグラフィティの歴史は5年ごとに分析できる説

「アポロ」でのデビューから20年以上、常に全盛期を更新し続けるバンド・ポルノグラフィティ

そんなポルノグラフィティの歴史は、多少の誤差はあるものの、おおよそ5年ごとに分析できるのでは?と、何年か前に思ったことがあります。今回はそんな過去の思い付きを文章にしたためようかと。

第1期「3人体制編」

1999年~2004年頃。メジャーデビューからベース・Tama脱退までの「誰もが知るポルノグラフィティ」の時代。

<代表曲>
アポロ、ミュージック・アワー、サウダージ、サボテン、アゲハ蝶、メリッサ、愛が呼ぶほうへ
<リリース>
シングル:1st「アポロ」~14th「ラック」
アルバム:「ロマンチスト・エゴイスト」「foo?」「雲をも摑む民」「WORLDILLIA」の4枚+初のベスト盤「RED’S」「BLUE'S」

シングル「アポロ」での鮮烈デビューに始まり、「サウダージ」「アゲハ蝶」ではミリオンセラーも達成。のちにライヴの定番でもあり、名刺代わりにもなるような代表曲を数々と輩出

タイアップにも恵まれ、「ヒトリノ夜」「メリッサ」はアニソンとしても人気の曲に。当時は現在(2021年)よりもTVの音楽番組もたくさんあり、精力的に出演し、瞬く間に人気と知名度を上げていきました。

これは本人たちの努力と才能はもちろんですが、プロデューサーak.homma(本間昭光氏)の手腕なしに語ることはできないでしょう。
シングル14曲中9曲がハルイチ作詞・本間氏作曲のパターン。本間氏のポップでキャッチーな曲は、多くの人の耳に残ります。アキヒトの歌、ハルイチの詞、本間氏の曲の王道パターンを「必勝ルート」として、「ポルノグラフィティ」を世に着実に浸透させていきました。

本間氏作曲以外だと、「サボテン」「幸せについて~」「渦」「ラック」のシングル4曲がベーシスト・Tamaによる作曲。
本間氏の曲が世間への名刺代わりになる「顔」の曲だとすれば、Tamaの曲はデビュー前から続く「ポルノのポルノによるオリジナル曲」、いわば「初期衝動」。今でもファンから根強い人気を誇ります。

どちらかというとキャッチーでポップな色が強い本間氏曲に比べ、「ロックバンド・ポルノグラフィティ」を追い求めた曲たちです。ポルノが一発屋に終わらなかったのは、この売れるポップ路線と初期衝動の両輪があったからこそだと思います。

本間氏プロデュースの元で着実に実力と知名度を磨き、「ここぞ」というタイミングで”オリジナル曲”をリリース。ミリオンを達成した「サウダージ」の後の「サボテン」は、インディーズ時代から温めに温めた曲であり、まさにその両輪の象徴ではないでしょうか。

ちなみにシングル14曲中残りの1曲「音のない森」は唯一のアキヒト作曲。ポルノ屈指の「ダーク曲」としても有名。デビューから続く「波」に乗り、シングルを連続リリースした時期だからこそ、「必勝ルート」だけでない「挑戦枠」としてリリースしたのかもしれない。タイアップもなしで、ガラッとテイストの違う曲を出すのは中々の決断ですね。

アルバム曲、カップリング曲を見てみるとほとんどがメンバー作曲。TVスターとしてのポルノだけでなく、「バンド・ポルノグラフィティ」としての熱が垣間見えます。
アルバム「ロマンチスト・エゴイスト」「雲をも摑む民」は顕著ですが、Tamaらしさ、ひいてはポップロックとは対極を行くような、どこかダークで、繊細で、反骨的な曲たち。まさに島を飛び出しインディーズ時代からやってきた初期・ポルノグラフィティの片鱗がそこにあります。

作詞はシングル同様、圧倒的にハルイチが多いですが、アキヒトも徐々に増えていく。また「マシンガントーク」「Heart Beat」のみ本間氏による作詞。後にも先にもこの2曲だけ。Tamaに関しては「Seach the best way」でハルイチとの共作以外では作詞には参加していません。

第2期「再スタートと親離れ編」

2004年~2011年頃。昭仁と晴一の2人体制でリスタートし、デビュー当時からチーム・ポルノを率いたとも言えるプロデューサー・本間氏から「親離れ」をするまでの時期。2人体制となっても、精力的にメディアへ出演、途切れずに楽曲を世に排出し続けました。

<代表曲>
シスター、ネオメロドラマティック、ハネウマライダー、ギフト、今宵、月が見えずとも、瞳の奥をのぞかせて
<リリース>
シングル:15th「シスター」~32nd「EXIT」
アルバム:「THUMPx」「m-CABI」「ポルノグラフィティ」「∠TRIGGER」の4枚+ベスト盤「ACE」「JOKER」

”新デビュー曲”とも言える「シスター」。「ポルノはここで終わりにしようか」と、解散を考えた唯一の時期というメンバー脱退を乗り越えての一曲。強烈な「アポロ」と比べればしっとりした曲で、当時「暗い」「脱退したTamaのことを想って書いた曲か」などと噂されることもあったそうですが、行進曲風のリズムから「進む」という意思を感じます。

2人となっても進み続け、「ネオメロドラマティック」「ジョバイロ」「ハネウマライダー」など、「ポップであり、ロックであり、エキゾチックであり」という第1期から続くポルノのイメージを進化させたような曲を多数リリース。

第1期と比較すると、シングル21曲中、本間氏の作曲は7曲と本間氏作曲が減り、メンバー自身での作曲シングルが増えています(晴一作曲、昭仁作曲はそれぞれ半々くらい)。それはインディーズ時代から曲作りを担ってきたTamaの脱退によってそうせざるを得なかったという面もあると思いますが、本間氏に頼らず自分たちの力をつけていかなければ、という思いもあったのかもしれません。

「ギフト」「今宵、月が見えずとも」「瞳の奥をのぞかせて」などに代表されるように、現在では「作詞・晴一、作曲・昭仁が王道セット」と言われることがあります。本間氏作曲・晴一作詞の「1期王道」から変化し、楽曲制作において、現在のポルノの礎となるような時期がこの時期です。

20thシングル・ハネウマのリリース以降は特に、7thアルバム「ポルノグラフィティ」に代表されるように、メンバーの自らの手による楽曲をグッと増やしています。8thアルバム「∠TRIGGER」では全楽曲をメンバーのみで作詞作曲編曲し、「ネガポジ」で初めて起用するアレンジャーを迎えるなど、「売れる」よりも「自分たちのやりたいことは何か」を求めて試行錯誤していたことが分かります。

この時期の最後、32ndシングル「EXIT」は自身初の月9ドラマ主題歌で、晴一と本間氏が曲を共作した作品。10数年に及ぶ本間氏との歩み、その一つ集大成と捉えると感慨深いし、ポルノグラフィティにとって恵まれた環境での音楽という世界からの「出口」だったのかもしれません。

世間のポルノ像、知名度も確立していく一方で、「親」である本間氏からの親離れ、そして世間の抱くポルノのイメージとの闘い。世間が見ているポルノグラフィティ像に、本間氏が組み立ててくれた座り心地のいい椅子に、胡坐をかいて座ってばかりはいられない。そして二人は、ポルノグラフィティは次のステージへ歩みを進めます。

第3期「探求編」

2011年~2015年頃。本間氏から親離れし、15周年を迎えるあたりまで。様々なアレンジャーとタッグすることで、今までのポルノになかったようなサウンドやアレンジを積極的に取り入れ、曲の幅、世界観の幅がグッと広がりを見せる。「新たなポルノ」を追い求める時期。

デビュー曲「アポロ」に代表されるように、ポルノの詞には「何かを探している」というニュアンスのフレーズがよく出てきますが、この時期はポルノがポルノを探しています。

<代表曲>
ワンモアタイム、2012spark、カゲボウシ、俺たちのセレブレーション、オー!リバル
<リリース>
シングル:33rd「ワンモアタイム」~42nd「オー!リバル」
アルバム:「PANORAMA PORNO」「RHINOCEROS」の2枚+シングルベスト「ALL TIME SINGLES」を出している。

33rd「ワンモアタイム」は、デビュー曲「アポロ」に通ずるデジロックの雰囲気を醸しつつ、2011年の東日本大震災という世間的な転換とポルノの転換とが重なったことによって生まれた、この時期のスタートを飾る曲であり、象徴的な曲です。この曲を筆頭に、昭仁・晴一・本間氏のチームでは生まれなかったであろうサウンドを、様々なアレンジャーとのタッグを通して創り出していきます。

この時期には15周年を盛大に迎えました。ちょうどメンバーが40歳を迎えるタイミングとも重なり、「四十にして惑わず」の言葉の通り、模索の森から少しずつ抜け出そうとする姿が楽曲の背景に浮かびます。

その一方で、アメリカや台湾、韓国など海外でのライヴも経験し、久々の「アウェー」感を味わう。アニメタイアップの曲では盛り上がるが、日本で本間氏の後ろ盾のもとで創ってきた「世間のポルノ」が通用しない世界でのライヴ経験。これもまた大きな転換点だったと思います。

様々な挑戦と転換を経て生まれたこの時期の終盤を飾るシングル、「俺たちのセレブレーション」「ワン・ウーマン・ショー~甘い幻~」「オー!リバル」
この3曲は”3さいシリーズ”とも言われ、それぞれ、自身のヒット曲「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」を彷彿とさせる楽曲でもあります。様々なアレンジャーとのタッグや海外ライヴの経験など、挑戦を通して今までとこれからの「ポルノグラフィティ」を見直し、次のステップへと踏み出したことを感じさせます。

この3曲のシングルを収録したアルバム「RHINOCEROS」はこの時期の集大成とも言え、ファンの中でもかなり高い人気を誇るアルバムになっています。明らかにこのあたりから、ポルノの「覚醒」が始まります。

第4期「覚醒編」

2015年~2020年頃。第1期・2期で築いた土台と、第3期での挑戦が花開いた時期とも言え、「今までのポルノにありそうで、今までなかった曲」が多数リリースされます。

<代表曲>
THE DAY、カメレオン・レンズ、ブレス、Zombies are standing out、VS
<リリース>
シングル:43rd「THE DAY」~50th「VS」
アルバム:「BUTTERFLY EFFECT」

第3期から続き様々なアレンジャーとタッグする中で、ファンをして「こういうのを待ってた」と言わしめる楽曲も多数登場。世界的に流行していたEDMの雰囲気や洋楽風の雰囲気を思わせる「カメレオン・レンズ」や「Zombies are standing out」はその代表であり、自他ともに認める新機軸となる曲。

ラテンやポップといった「今までのポルノ」の雰囲気に加え、同時にバンドサウンドへのこだわりも垣間見えます。「THE DAY」や「真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ」などは、バンドサウンドがより際立ちつつ、今までのポルノらしさも感じる曲に仕上がっています。このあたりから、ライヴでもギターが二人(晴一とtasukuさん)構成になることが多くなりました。

もともと楽曲のレパートリーの豊富さに定評のあるポルノですが、歌唱面でのレベルアップも果たしており、昭仁の歌唱力が覚醒したのもこの時期。どうやら第3期ごろからボイトレに通い、自身の声と改めて向き合ったようでそれが功を奏したのか、もともと化け物級にうまい歌が、よりのびやかに、より豊かに、より色とりどりな表現を獲得しています。

2019年に20周年を迎えるにあたり、2018年の「しまなみロマンスポルノ」、同年から開始の16thツアー「UNFADED」、そして2019年の東京ドーム2DAYS「神VS神」と大きなライヴが連続で行われました。そこで披露された曲はまさに色褪せない、ポルノの歴史そのものと言える楽曲ばかりで、そのパフォーマンスを見れば、ポルノがいかに進化し続けてきたか、ポルノの進化がいかに驚くべきものであるかを実感することができます。

「神VS神」のライヴはこの時期の集大成でもあり、ポルノの20年(インディーズや高校時代を含めるともっと)の集大成でした。あの東京ドームでの光景は、ファンにも、そしてポルノ自身にも、深く刻まれた最高の夢の景色です。

第5期「新始動編」

2020年~現在。今、ポルノの第5章が始まっています

<リリース>
シングル:51st「テーマソング」~
アルバム:(リリース待ってます)

20周年を迎えた「神VS神」のライヴ以降、昭仁・晴一がおのおのに自らのやりたいことや勉強したいことに取り組む「寄り道」期間に入りました。ポルノの歩みを「夢」と喩えるならば、「仮眠」とも言えるかもしれません。世界中を襲った未曾有の病も、もちろん影響しています。

2020年にはオンラインと会場のハイブリッドライヴ「REUNION」を開催しましたが、ポルノとしての活動はそれ以外に目立った動きはなく、実に約2年新曲・新アルバムのリリースなしの状態でした。

そんな「寄り道」は嵐の前の静けさ。仮眠から目覚め、ポルノは再び動き出す

2021年9月、51st「テーマソング」リリース、17回目のライヴツアー「続・ポルノグラフィティ」が開催。YouTubeでの人気企画「THE FIRST TAKE」にも出演し、進化し続ける歌声と色褪せない名曲を再び世間に知らしめました。

「REUNION」のMCでも語られたように、第5章はまさにこれからであり、「ポルノの全盛期はこれから」です。

ポルノが少し寄り道していた期間中、世界も大きく変わりました。だからこそ、ポルノができることは何なのか。20年のすべての経験と音楽を背負って、これからも「ポルノグラフィティ」という大きな夢を描いていく二人がどんな音楽を創っていくのか。その答えは、二人の姿にある。

ポルノグラフィティの夢は続く

ポルノグラフィティは、昭仁が、晴一が、ファンが、そして今までとこれからポルノにかかわる全ての人たちによって創られる「夢」です。そんなポルノの歴史、夢の足跡を5年ごとに区切って語ってみました。改めてポルノの活動の幅に驚きます。

きっとまたこれからの5年で、新しい夢を共に見てくれるような気がします。これからも、自分たちのやりたい音楽をやっていってほしいです。

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