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【観劇レポ】拍手止まぬ ミュージカル「ピピン」

ミュージカル観劇レポ。ブロードウェイミュージカル「ピピン」の大阪公演初日に行ってきました。

初演時は日程都合が合わず諦めた作品。再演が決まってすぐチケット取りに行きました。

そして僕はいつも前日か当日にチケットを発券するのですが、今回なんと…前から2列目!!ライヴ、ミュージカル、今まで色々観てきましたが、過去一番の最前列です。
オーケストラピットが目の前にあって、なるほど、こんな感じなんかあ・・・としみじみしながら開演を待っておりました。ついでに開演前・終演後の注意事項のアナウンスもピピン仕様で、粋な演出でしたね。

端の席なのでちょっと首が痛かったですが、それもまたよし。曲芸もある公演なので、間近で見られるのは本当に最高。表情、緊張感、すべてがよりダイレクトに伝わってきます。いやー、ステージに近いってすごい。

というわけで感動冷めやらぬうちにレポです。

公演内容に触れますので未観劇の方はご注意ください。

スリリング

開幕、クリスタル・ケイさん演じるリーディングプレーヤー(LP)の影がステージに大きく映り、どんどん小さくなりながら近づいてくる。べたやけどこういう演出好き~…と既にここからピピンの世界に引きずり込まれました。そこからの冒頭、「Magic To Do」は、オペラ座の怪人でいうマスカレードみたいな華やかさと一糸乱れぬパフォーマンスに虜になります。

この作品は、ピピンという王子のストーリーをサーカス団が演じるという劇中劇のような構成になっているので、ステージのあらゆるところでさりげなく凄技が連発されます。右、上、左、奥と、もうどこ観たらええの!と、あちこちに見せ場があるのである意味大変。
人間縄跳び、逆立ち、空中ブランコ、投げ輪くぐりと、技が決まるたびに拍手喝采。2幕冒頭の缶乗りは、ステージ上も観客も、全員が固唾を飲んで見守ってました。2列目の席ということもあって、緊張感や呼吸、震えや汗まで見えて、観ているこっちもドキドキ感が増しました。

プロのパフォーマーはもちろんのこと、舞台俳優として活躍されている方も、体が柔らかい人が多い。サーカス団を「演じる」って大変でしょうね・・・。

プリンシパルキャストもそれぞれ芸を仕込んでいて、見せ場がありました。チャールズ(今井清隆さん)のナイフ投げ、ファストラーダ(霧矢大夢さん)の早着替え、そしてバーサ(前田美波里さん)のアクロバット。
たぶん、美波里さんのアクロバットが一番拍手が鳴りやまなかったんじゃないか。「NINE」の時も重たい羽をつけて圧巻のダンスを披露されてましたが、70歳を超えて空中ブランコに坂さまにぶら下がりながら歌えますか?圧巻でした・・・。そもそも空中であんなまっすぐな姿勢取れませんよ。俳優・パフォーマーとしてのそのお姿に元気をもらいました

そしてメインのLPと、森崎ウィンさん演じるピピン。お二人も本職は歌手・俳優なわけで、サーカス芸はこの公演のために習得されたのだと思うと筆舌しがたい感動があります。LPとピピンの二人だけでのダンスシーン(たしか「On the Right Track」)は特にかっこよかった。

LPは出ずっぱりの役。ショーを導く立場でありながら、自らもプレイヤーとなるこの役を演じられる人は限られるのでしょうね。クリスタル・ケイさんに拍手
そして主人公・ピピンもまたずっと動きっぱなしの役。フラフープから突き抜けて出てくる登場シーンに始まり、他の演者と息を合わせてダンスに宙返りに縦横無尽。座長としてカンパニーを引っ張りつつ、歌にパフォーマンスにと完璧にこなす森崎ウィンくんに拍手

コメディ

劇中劇というのもあって、観客へのファンサービスやメタ的セリフが多く出てきます。

愛妃あゆさん演じるキャサリンは、もちろん歌も聞き惚れるのですが、コメディ色が強くて面白い。LPに怒られるシーンは多分何回見ても笑う。愛妃さんが言われているのか、キャサリンが言われているのか、キャサリンを演じるサーカス団員として言われているのか。
キャサリンがピピンにすり寄る場面も、ブリっこに振り切ってて、愛妃さん凄いなと思いながら爆笑してました。あと拗ねて枕を「ふん!」と被るピピンもかわいいし、それを後々真似するキャサリンの息子・テオもかわいい。

岡田亮輔さん演じるルイスの「愛されるアホ」もかわいかったし、今井清隆さんのお茶目も素のような感じでかわいい(?)し、序盤のピピンの「アホな優等生感」もかわいい。

ピピンが大人の階段を上っていく(意訳)シーンも、まあまあダイレクトに描写されてますが、ポップな音楽とLPの「大したことはしていません(けろっ)」で中和されてました。観客には小さなお友達もいましたが、その部分は魔法で記憶を消してもらおうね。

ちなみに脈絡がないですが、森崎ウィンくんの体が素晴らしく仕上がっていらしたので、当面僕の筋トレの目標は森崎ウィンとします。以上解散!

「一生忘れられないフィナーレ」

冒頭でほのめかされる「一生忘れられないフィナーレ」
素晴らしい曲芸やパフォーマンス、そして織り交ぜられるコメディとほんの少しのロマンスを経て迎えるフィナーレは、想像以上でした。

LPが考えるフィナーレは、ピピンが火に飛び込むこと。本当にステージに火が燃え、空中ブランコに乗せられるピピン。しっかりと滑り止めの粉も手に塗り込み、本当に飛び込むのかとドキドキしました。

結果的にピピンは飛び込まず、あんなに欲しがっていた「確かな充実感」よりも「普通のありきたりの人生」を選び、LPを失望させる。ファンタジーな世界から一転、終盤で不穏な空気が流れます。観ているこちらも一気に緊張を感じました。
LPをはじめアクターたちが、僕たち観客席に向かってピピンの代わりに火へ飛び込める人を探し訴えるシーンは鬼気迫るものがあったし、失望したLPが怒り、ピピン(とキャサリンとテオ)から衣装や化粧を剝いで、ステージを撤収させていく様は見ていて苦しかった。

このフィナーレ、役としてのピピンがそういう結末に持っていくという筋書きなのか、それともピピンを演じた若者が選び取った結末なのか。劇中劇というギミックによってどちらでも解釈できるのが深いなと思います。

最後、子役のテオが舞台装置に興味を示し、サーカス団のキャストたちに見守られながら空中ブランコに乗るシーンに、新たな「第二のピピン」の誕生をイメージさせる幕引きでした。

何気ない日常が素晴らしいんだ、というメッセージを訴えるわけではなく、人はないものねだりな生き物であること、誰もが通る若人が陥る悩み、そういったものを感じ取れるのかなあと思いました。・・・が、色んな解釈ができそうなフィナーレ。客に投げかけ、考えさせてくれるという意味で、確かに「忘れられない」。
LPの言うフィナーレは、火に飛び込むフィナーレでなく、初めからこっちのフィナーレを示していたのでしょうか・・・。

全体を通じて楽しい舞台の中に、ピピンはもちろん、バーサやキャサリン、ファストラーダなど、それぞれから「自分らしい生き方とは何か」という命題を感じるミュージカルでした。

カーテンコール

余韻が残るフィナーレからカーテンコールへ。過去何度も言っててしつこいですが、僕はカーテンコールだけでお米が食べられる人間。大阪初日を無事迎えられ、フィナーレまで演じ切った幸せをカーテンコールから直に感じました。

ピピンは流行り病の影響で、大阪の直前までやっていた東京公演が、後半中止となっていました。もしかして、大阪で無事幕が開くかどうかも怪しいか、と思うくらいだったので、カンパニーの方々はこの大阪初日に強い想いを持っていたんだろうと思います。
カーテンコールでは森崎ウィンくんをはじめ、複数のキャストが涙を浮かべていました。ええいーああ、ウィンからもらい泣き

幕が開き、幕が降りるまでの奇跡。それを創り出すためにどれだけの想いが詰まっているか、その涙を見ればわかります。ブラボー。


大阪公演は9月末まで。このままピピン一座が公演を完走できるように祈って。

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