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腰痛の意外な原因

腰痛は「腰椎や骨盤が原因」とは限らない

 腰痛の原因は80以上あると言われており、私もそのすべてを把握しているわけではありませんが、治すためには「原因を考える」ことが大事です。腰痛の原因が、腰椎や骨盤にあるとは限りません。
 30年以上前のことですが、開業する前に勤務していた店で、よく私を指名して下さっていた70歳くらいの男性が腰痛を訴えていました。開業して1年後に店に挨拶に行って、その男性がすい臓ガンで亡くなったことを聞きました。その男性の腰痛はすい臓ガンによるものだった、と分かりました。
 それ以後、腰痛でも「内臓は異常ないか?」考える癖がつきました。ですから、できるだけ血液検査のデータを持参していただくようにお願いして、血液検査のデータと問診から原因を考えます。原因が必ずわかるわけではありませんが、もし原因がわかれば、治し方も予防法もわかります。
 今まで30年以上、腰痛でいらした方々のなかで、とくに印象に残っている例を3つあげてみましょう。

10ヶ月寝たきりだった男性

 右の腰が痛くて右脚がしびれて力が入らないため、1日中寝たきりになって、食事もベッドで寝ながらしていた65歳の男性が、タクシーで来院されました。
 待合室に入って、すぐに長椅子に横になりました。症状と経緯は予めFAXで伺っていて、「おそらく食事に原因があるのだろう」と予想していたので、待合室で「隠れ糖尿病」のビデオを観ていただきました。すると「俺の腰痛はコレだ!」と言いながら、真剣に観ていました。
 初回の問診で「どんな食生活をしてきたのか?」お聞きしところ、朝、目が覚めるとすぐに人形焼や饅頭を食べながらお茶を飲んでから洗面を済ませて、それから朝食。食後に砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲んで出勤。職場では、お客様と茶菓子を食べながら打合せして、仕事が終わると毎晩、銀座に出かけて遅くまで飲み歩く。そんな生活を何十年か続けて、50代の半ばに心筋梗塞になりステント(冠動脈の金網)を入れることになったということでした。それ以来、お酒は飲まなくなりました。
 その後、腰痛が慢性化して色々な療術を受けてきましたが、臀部を肘でグリグリ揉まれてどんどん悪化していき、ついには脚がしびれて力が入らなくなり、10ヶ月も寝たままになってしまったということでした。
 明らかに糖分(砂糖)の摂りすぎに思えますが、「肥満にも糖尿病にもならないので、自分はいくら甘いものを摂っても大丈夫だと思っていた」と言います。そこで、まず『甘いもの断ち』をお勧めしました。偉いことに、その日から食事を180度ガラリと変えました。
 また、肘鉄でグリグリ揉まれると、筋肉内の微細な血管が破れて「内出血」をおこします。そのため揉まれて数時間たつと、痛みと腫れが増大します。いわゆる『もみ返し』ですが、私は『もみ壊し』と呼んでいます。さらに、内出血を止めるために血小板が凝固して「血栓」ができます。血管が修復されたら血栓がはがれて、血液とともに流れていきます。その血栓が脳や心臓の細い血管に詰まれば、脳梗塞や心筋梗塞がおきます。ですから臀部を肘鉄でグリグリ揉むのは、腰痛を悪化させるだけでなく、心筋梗塞を再発させる恐れもあります。
 オイルマッサージと開節法による施術を続けて、およそ半年でいくらか歩けるようになりました。ところが、ある日突然、右脚のしびれがひどくなって歩けなくなってしまいました。
 私は「コレステロール降下剤(スタチン剤)のせいだろう」と思っていましたが、「止めなさい」とは言えないので、コレステロール降下剤の副作用を解説している本を何冊かお教えして読むようにお勧めしました。彼は熱心に読んで、スタチン剤を飲むのを止めました。すると、すぐに脚のしびれが取れて、歩けるようになりました。しかし、1ヶ月ほどして再びスタチン剤を飲み始めると、たちまち脚がしびれて歩けなくなってしまいました。そこでまた飲むのを止めたら、すぐに脚のしびれが取れて、歩けるようになりました。そして、もう一度スタチン剤を飲んでみたら、やはりまた脚がしびれて歩けなくなってしまいました。こうして何度か飲んだり止めたりをくり返して、ようやく『スタチン剤が原因』と確信しました。そこで、主治医に「スタチン剤を止めたい」と申し出ましたが、頑として認めてもらえませんでした。
 どうしようかと2ヶ月ほど悩んでいましたが、ついに「何があっても自己責任で、先生のせいにはしませんから止めさせてもらいます」と宣言して、主治医と決別したのです。もちろん、心筋梗塞を再発させないための食事の注意を徹底して守ったうえで、です。
 10ヶ月も寝たままでいたため、足腰の筋肉もかなり萎縮してしまっていたので、毎日リハビリ運動を、かなり時間をかけて行ないました。その努力によって、少しずつ回復していきました。
 12年たった現在、腰痛も脚のしびれもまったくなく普通に歩けていますし、心筋梗塞を再発することもなく暮らしています。

スタチン剤で、腰痛・坐骨神経痛になるワケ

 なぜスタチン剤で、腰痛と脚のしびれが悪化するのでしょうか?
 LDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれていますが、実は「悪いもの」などではなく、「生命力のバロメーター」ともいえる元気の源なのです。
 痛みの多くは、炎症を伴います。炎症を鎮めるには、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が不可欠です。そのコルチゾールは、LDLコレステロールから作られますから、LDLコレステロールが足りなければ十分に分泌できません。その結果、痛みがなかなか治まらないということになります。
 また、神経痛の場合は、神経が損傷しています。神経を修復するには、神経の材料であるLDLコレステロールが必要です。LDLコレステロールが足りなければ、ダメージを受けた神経を修復できません。その結果、しびれが治らないことになります。
 筋肉の損傷を治すときは、筋肉細胞が新たに作られます。細胞を作るには、細胞膜の材料であるLDLコレステロールが必要です。LDLコレステロールが足りなければ、ダメージを受けた筋肉を修復できません。その結果、筋肉痛がいつまでも治りません。
 さらに、長い間痛みが続くと、精神的にも落ち込んで、やる気・意欲が失われていきます。やる気・意欲の源は、男性ホルモン・女性ホルモンです。男性ホルモンも女性ホルモンもLDLコレステロールから作られますから、LDLコレステロールが足りなければ十分に分泌されません。その結果、意欲がなくなり、うつ症状が現れるようになります。
 そしてさらに、男性ホルモンや女性ホルモンから「催眠物質」も作られます。ですから、LDLコレステロールが足りないことによって男性ホルモンや女性ホルモンが不足すれば、不眠にもなります
 このようにLDLコレステロールは、炎症を鎮めるために不可欠なコルチゾールをはじめ、ダメージを受けた神経の修復、やる気や催眠物質の源となる性ホルモンの合成などに不可欠な材料なのです。
 またLDLコレステロールは、血液のカリウムを保持するためにも不可欠です。カリウムは「筋力を司るミネラル」で、不足すると筋力が低下します。さらに低下すると手足が麻痺したり、胃腸が弛緩して便秘や腸閉塞になったり、低血圧になったりして、著しく低下すれば心停止してしまいます。これほど重要なミネラルを血液中に保持しているのも、LDLコレステロールなのです。ですから、スタチン剤を飲んでLDLコレステロールを減らしてしまうと筋力が低下して、腕や脚も胃腸も心臓も衰弱してしまうのです。
 つまり、LDLコレステロールを減らして良いことは何もなく、腰痛や坐骨神経痛を治すうえでもマイナスにしかならないのです。
 ちなみに動脈硬化の原因はコレステロールではなく、「血管の慢性炎症」であり、その原因は肉の脂ではなく、サラダ油に含まれている「リノール酸」と「高血糖」であることが明らかになっています。

3年以上治らなかった30歳女性の腰痛

 彼女はパチンコ店で働いていたとき、玉がいっぱいに詰まった箱を何段も重ねて持ち運んでいたことで腰を痛めて、3年以上たっても治らないでいました。
 腰の痛みは「くしゃみをするのも命がけ」というほど強烈で、腰に触れることすらできない状態でした。両脚は痛みとしびれで「とろけそう!」というほどで、腰かけるのも脚を組んで腰を丸めていないといられないほどでした。
 「重いパチンコ玉ケースを運んで腰を痛めた」だけだと思いましたが、ほかにも様々な症状を持っていて、食生活にもかなり問題がありました。
 便秘と生理痛もひどく、さらに花粉症と喘息とアトピーもあり、検査したすべての花粉とソバとキノコにアレルギーがあり、医師からは「先天性自閉症」「統合失調症」「うつ病」「自律神経失調症」と4つも病名が付けられていました。そして、お腹はまるで妊婦のように膨脹していて、とても苦しそうでした。
 食事をお聞きしたら、小麦(お好み焼・たこ焼き・麺類)が好きで、おやつにゼリーやアイスクリーム、クッキーやカステラなどをよく食べていると言いました。つまり、リーキーガットの原因となる食品や腸内ガスを多く出す食品をかなり食べていたのです。
 そこで、「食べて良いもの」と「食べてはいけないもの」を、具体的に指導しました。彼女は、半年後にお嫁に行くことになっていたので、「できることは何でもやります!」と意欲的に食事の改善に取り組みました。
 施術は通常、まずうつ伏せになって背筋のオイルマッサージから始めるのですが、彼女はお腹がガスでパンパンに膨れていて、うつ伏せになれませんでした。ですから、あお向けで首とお腹を、まるで腫れ物に触るかのようにごく軽くマッサージしました。それでも、首とお腹のマッサージを終えて起き上がると「かなり楽になった!」と言い、とても驚いていました。
 その後、毎月1回のペースで施術を続けました。2回目と3回目も、まだお腹のガスが多くてうつ伏せにはなれず、あお向けで首とお腹のマッサージだけで終えました。
 4回目は、あお向けで首とお腹のマッサージをした後、座位で首と腰の施術ができるようになりましたので、下頚部と腰椎の後弯を矯正しました。
 5回目にようやくうつ伏せになれるようになり、背中を軽くマッサージできました。
 6回目には、通常の強さの圧で背中のマッサージができるようになって、首も背中も腰も完全にゆるめることができました。
 こうして半年間で、劇的に身体全体が変わりました。食事の改善と定期的な施術の結果、腸内ガスが激減して、とろけそうだった両脚の痛みとしびれがなくなり、良い姿勢で腰かけられるようになり、腰が痛くて動けなくなることもなくなりました。
 このように、「ただ施術さえ受ければ治る」というものではなく、食生活を変えて胃腸を改善していくことが腰痛を治すために必要なのです。とくに「腸内ガスを減らす」ことが、腰痛を軽減させるためにきわめて大事です。

なぜ「腸内ガス」が、腰痛を引きおこすのか?

 足腰の筋肉が体重を支えるためには、血液が必要です。血液が栄養と酸素を筋肉に届けるから、筋力を発揮して体重を支えられるのです。また腰椎の椎間板や、股関節や膝の軟骨の弾力性を保つためにも、血液が必要です。軟骨のコラーゲンは、血液が運んでくる栄養と酸素からヒアルロン酸やコンドロイチンなどといった物質が作られて弾力性を保てるのです。
 筋肉や軟骨に血液を運ぶ血管は、腹部を通って腰や脚に行きます。
 心臓から出て降りてきた腹大動脈は、お臍の高さで左右に分かれて、さらにいくつにも枝分かれして、内臓や腰の筋肉に血液を届けています。さらに鼡径部から太ももに出て、股関節や膝やふくらはぎ、そして足先まで血液を送ります。
 このように、足腰に血液を送る血管は「腹部を通っている」のです。
 では、腸がガスでパンパンに膨脹したら、血管はどうなるでしょうか?
 つぶされますよね! つぶされれば、足腰に届く血液は少なくなります。すると、筋力が弱くなって体重を支えられなくなり、軟骨は弾力性を保てなくなります。その結果、腰が痛くなったり、脚がしびれたり、股関節や膝が痛くなったりするのです。
 ですから、腰痛や坐骨神経痛を治すには、腸内ガスを減らすことが大事なのです。
 しかし、「腸もみ」は危険ですから、絶対にしてはいけません! 揉むと内出血して「もみ壊し」がおきるのは、腸も同じです。
 腸内ガスはオイルマッサージで抜くことができますが、決して体重を乗せてマッサージしてはいけません!

咳が原因だった腰痛

 70歳の女性は、20年以上も続いていた「咳」が原因でした。咳は体力を消耗しますし、腰を痛める原因にもなります。咳のエネルギーは案外大きくて、細い人はあばら骨を折ってしまうこともありますし、骨粗鬆症の人は圧迫骨折をおこすこともあります。
 彼女は、数年前に胸椎12番の圧迫骨折をしていましたから、腰が少し曲がっていました。その圧迫骨折も、「咳」をしてなりました。
 ですから腰痛を治すためにも、次の圧迫骨折を防ぐためにも、なんとか咳を治したいと思っていました。そのため毎日「咳止め」と「痰きり剤」を飲んでいて、「のど飴」もよく舐めていました。しかし、それで治るはずがないのです。
 なぜ、風邪を引いてもいないのに毎日、咳や痰が出るのでしょうか?
 それは、「腸内ガス」が原因なのです。
 慢性的に咳や痰が出ている人は、みんな腸内ガスが過剰に溜まっています。とくに、大腸の「横行結腸」に多く溜まっています。横行結腸がガスで膨脹すると、横隔膜が下がりにくくなって息が吸いにくくなります。そのため、呼吸が浅くなります。
 また、小腸で発生したガスは胃に流入してきます。そして胃のガスが、食道から抜けるときに、胃酸が逆流します。すると食道の粘膜がただれて、「空咳」が出るようになります。
 さらに、小腸のガスが胃→食道と抜ける際に、腸内細菌も一緒に食道に移動します。その細菌が食道から気管支に入り込むと、咳や痰がしょっちゅう出るようになります
 つまり、腸内細菌が気管支に移行すると、咳や痰が毎日出るようになるのです。
 咳止めは、脳の咳中枢に働いて、咳を止めてしまう薬です。しかし咳は、何か「出したいもの」があるから出るのですから、咳止めで止めてしまうと出すべきものが出ないままになります。
 痰は、白血球(好中球)が細菌を貪食して死滅した残骸です。痰きり剤は粘り気を減らして排出しやすくしているだけで、痰が減るわけではありません。痰を減らすには、気管支の細菌を減らせばよいのです。
 気管支の細菌は、腸内ガスによって腸から移動してくるのですから、腸内ガスを減らせば咳や痰も減るのです。
 また、歯周の細菌も気管支に移行しやすいので、口腔内の衛生を保つことも重要です。ところが「のど飴」は、歯周の細菌を増やしてしまうので逆効果になります。のど飴の成分はほとんど砂糖であって、喉の薬ではないのです。
 彼女は、豆や野菜の摂取を大幅に減らしました。そうしたら腸内ガスが減って、2ヶ月ほどで咳も痰も出なくなりました。その結果、腰の痛みも劇的に減りました。

「原因を考える」ことが大事

 腰が痛いと、とにかく「痛みさえ取れればいい」と考える人が多いですが、まず「なぜ痛くなったのだろう?」と考えることが大事です。
 今回あげた3例をまとめると、次のようになります。
①    「スタチン剤」によって腰痛・坐骨神経痛になり、「もみ壊し」によって悪化した。
②    「過剰な腸内ガス」によって足腰への血流が悪くなって、腰痛・坐骨神経痛になった。
③    「腸内ガス」によって「胃酸が逆流」して、「咳と痰」が続いて圧迫骨折と腰痛になった。

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