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私と上司。①

私が初めて今の上司・朝田さんに出会ったのは、約4年半前、入社して半年ほど経った時だった。

朝田さんはマネージャーの中で新卒の教育に唯一携わらず、ユニットで一番忙しい試験を担当していて、いつもピリッとした雰囲気を纏わせていた。仕事が出来ない人にはとにかく厳しく、怒鳴り声が聞こえることもあったので、同期の中ではとにかく恐れられていた。

しかし、私の印象は少し違った。新人研修に一度だけ、研修の最後の最後に少しだけ顔を出したことがあったのだが、そこで私たちに話をしてくれた。釘を刺すような内容だったので他のみんなは怖がっていたが、私はその話を聞いて、”この人頭いいな”と感じたのだ。
簡潔に、私たちでも理解できるように、背筋がピンと立つように、そんな意図を言葉の節々から感じた。

さらに1ヶ月ほどが経過すると、研修が終わり、自分の”上司”が発表された。各マネージャーの傘下として、実務をこなすフェーズに入ったのだ。そこでみなさまの予想通り、私は最も厳しいとされていた、朝田さんの傘下に入った。

同期の反応は心配するようなものであったが、私はラッキーだと思った。せっかく学ぶのであれば、自分がより成長できる環境の方がいいに決まっている。端的に分かりやすく物事を話されていたあの人からなら、多くのことを学べる、そのように思った。

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弊社には1on1という、月1回程度1時間ほど実施される上司との面談がある。仕事のことのみならず、プライベートのことや将来について、上司に相談する時間となることが一般的だ。

満を辞して、私も初めての1on1を迎えた。
上司が決まった時に嬉しく思った反面、朝田さんの厳しさに不安を覚えたのも事実だ。
いざ1on1を迎えると、胸の中には不安が大きく渦を巻いていた。

5〜6人用の小さな会議室。1on1ではこの部屋がよく使われる。例外なく私の1on1でもこの部屋を使うこととなった。
席に着くと、最初に朝田さんから、アイスブレイクのような軽い話題提供があった。厳しい指導を予想していた私は、ホッと安心して、雑談を始めた。

10分ほど経っただろうか。雑談を一通り終えると、ふっと雰囲気が変わり、朝田さんは肘を机につけて、少し私を睨んで言った。

「研修の時からずっと思ってた。お前は中身がなくて薄っぺらい。俺が面接官なら、お前は取らない」

今でこそとても理解できる言葉であるが、当時は言葉の意味が分からなかった。
こんなことを言うと性格が悪いかもしれないが、私は社内研修では抜きん出て出来ていたし、マネージャー陣からの評価もよかった。研修を通して、自分なら即戦力として活躍できる、そんなイメージも出来ていた。

けれど、目の前にいる私の上司は、私という人間を今真っ向から否定している。
私は中身がないと言われたことに内心腹を立てながらも、「なぜそのように思われるんですか?」と質問した。

「お前は自分のことを優秀だと思ってんだろ。だから自分に足りないものに気づいていないし、指摘しても言い訳をする。小手先ばかりで本質が見えてない。だから中身がないって言ってんだよ。」

ボロクソに言われた。某アニメのセリフではないが、こんなことは父にも言われたことはなかった。
言い返せずにいると、上司は続ける。

「人当たりのよさで初めは通用するかもしれない。でもお前、3年後に成長止まるぞ。」

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1on1を終えると、朝田さんは何事もなかったかのように自分の席に戻った。今までの人生で言われたことのないような酷評を食らった私は、ぐったりとした顔で席に戻った。

同期の一人がチャットで「大丈夫?朝田さんに何か言われたの?」と聞いてくる。それくらい、顔に出ていたのだろう。

少し話しただけなのに、なんでここまで言われないといけないんだ。
第一、私の何を知っていてあんな言い方をするんだろう。
今に見ていろ。すぐに結果を出して認めさせてやる。

私と上司の関係は、このような酷い始まり方をしたのだった。

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最後に書いておくが、これは日常的に起きているパワハラを告発する鬱憤バラシの記事ではない。
私が今の上司から教わったたくさんの考え方を伝えたいと思い、カタカタと書いている。

今日も仕事が山積みなのでこれから会社PCをカタカタするが、本業で潰れずに踏ん張れているのは、上司の存在が大きい。
最初にボコボコにされた私がどのように上司との関係を築いていったのか、次回以降を楽しみにしていただけると嬉しい。
(敬語に戻すタイミングが分からなくて、最後までこんな文体で書いている。また見てくれ。)

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