果たして「自由」は「幸せ」なのか。

コロナ禍で経済的にも苦しい状況を強いられている昨今、「FIRE」という言葉が認知され始めている。

Financial Independence, Retire Earlyの略であり、「お金に不自由のない状態で、早期退職する生活スタイル」のことだ。

一般的には、1億超えの資産を年利4〜5%で運用することで、年に400-500万の収入が得られる状態を作ることで、働かずとも生活に困らない状態となることを意味する。
私も含めて嫌々仕事をしている人にとって、仕事をしなくてといい状況というのは、想像以上に魅力的に映る。

そんな欲望を刺激するようなインフルエンサーが増え、「自由な生活に変える方法を教えます！僅か30万で夢のような人生に！」みたく煽って売るようなビジネスが横行しているので、賢い読者のみなさまには注意してもらいたい。

さて、かつて私もFIREを夢見ていたのだが、最近はこんな風にも思うようになってきた。

「お金が沸いてきて、自由な時間を持て余した生活って、本当に幸せなのだろうか？」

「いやいや、仕事しないで遊んでいられるなんて、最高に幸せやろ！」というツッコミを浴びせられそうな思考であるが、果たして本当にそうであろうか。

朝好きな時間に起きて、コーヒーでも飲んで、本を読んで、少し散歩をして、気になっていたお洒落な店でランチをして、帰ったら猫と昼寝をして、季節の野菜をスーパーで買ってきて自炊をして、少し早い時間に晩酌をして、0時には寝る…。
お金に悩まなくなれば、おおよそそんな生活であろう。

（…書いていたらめちゃくちゃ幸せに思えてきた…記事の本質とズレそう…）

…まぁ、そんな生活は確かに幸せであろう。嫌な仕事をせずに、不条理なことに振り回されず、上司から怒られることもない。理想的な環境だと思う。

しかし、そんな「理想的な環境」は果たして幸せなのだろうか。

例えば、超人気ゲームのドラクエを考えてみて欲しい。
ドラクエにおいての最終目標は「魔王を倒すこと」である。そのために多くの時間をかけてレベルを上げて、素材を集めて、冒険を進めるのである。

目標達成のために、何百時間も要してしまう。熱中して徹夜してしまった人も多いのではないだろうか。
そうした研鑽を経て、武器やスキル振りをこだわって、ようやく最終目標である魔王を倒すことができるのだ。

さて、ドラクエで楽しいのは、魔王を倒す前と後、果たしてどちらだろうか。
ほとんどの人が、魔王を倒すまでの過程を楽しく思うのではないだろうか。

私は、現実世界でも同様だと思う。
お金に困らず悠々自適な状態になって、もしも「人生の目標を見失ってしまったのなら」、それほどの不幸は存在しないとすら思ってしまう。

つまり、生きるのに必要なお金を手にして、「自由」を手に入れただけでは、恐らく「幸せ」にはなれないのである。

では、幸せとはなんだろうか。
突き詰めて考えれば個人によって詳細は異なるだろうが、ほとんど全ての人に該当するのが、何かに「没頭」することであると私は考えている。

オードリー若林先生の名言に「ネガティブの反対は、ポジティブじゃなくて没頭」というものがあるように、没頭は状況に関わらずやりがいや楽しさを生み出す効果がある。
ドラクエにおいて魔王を倒すまでの過程が楽しいのは、目標をクリアするための研鑽に没頭できるからだ。

つまり、幸せになりたいと願うのであれば、成功を収めてお金持ちになれば良いという訳ではなく、
目標を設定して、その過程に没頭すればよいのだ。

目標は何でもいい。カラオケ大会で優勝したいでも、YouTubeで一山当てたいでも、小説を一人でも多くの人に読んでほしいでも、たくさん稼ぎたいでも、本当に何でもいいのだ。
大事なことは、本気でそれを達成したいと願い、そのためのプロセスにじっくりと集中することである。

そしてそれは、お金なんてなくても、今から実践することができる。
生きる意味を考え、悩んでしまった時は、意識的に没頭できる環境を作ってみてほしい。
没頭自体がやりがいとなり、定めた目標こそが生きる意味になってくれることと思う。

幸せになりたければ、お金持ちになる簡易的な方法を探したり、リソースを憂いたりするのではなく、目標を定めることから始めてみたら如何だろうか。
悩める人の手助けになることを願ったところで、本記事を終了とする。