自己都合退職でも失業保険を受給するための知っておきたい情報を社労士が解説

自己都合退職とは

失業保険を受給する際には、離職理由によって、受給額などが大きく異なります。

しかし、離職理由を偽ると不正受給とみなされ、受給額の3倍もの額の納付命令が下されます。

解雇などで退職の場合は不正受給するまでもなく、自己都合と比べて早く受給でき、かつ、受給額も多いことから、起こりにくいともいえますが、自己都合退職の場合は、離職日の翌日から約3か月もの空白期間が生まれるなど、「誘惑」が多い点は否めません。

また、法律条文は以下のとおりです。

(返還命令等)
第十条の四 偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

引用:雇用保険法-電子政府の総合窓口(e-Gov)

つまり、不正に受けた額およびその額の2倍を返還することとなります。

よって、「3倍の額」を返還しなければならなくなります。

受給額がいくらになるか知りたい人は、前回の記事を参考にしてください。

具体例

具体的に自己都合退職とは、どの辺りまでが範囲に含まるのかは気になる部分でしょう。

自分では自己都合退職のつもりが、後で、自己都合退職ではなかったにも関わらず、受給し損ねたとなっても後の祭りです。

一般的に、自分が望む仕事内容・待遇などを求めて転職する場合や、特に体に不調をきたしているわけではないにも関わらず、退職する場合は、自己都合退職となります。

自己都合退職と似て非なるものとして、「特定理由離職者」という区分があります。

これは、正当な理由のある退職と定義されています。

例えば、体力の衰え、個人的な疾病や負傷による退職、父または母の死亡により、残された父または母を扶養するために離職を余儀なくされた場合、結婚に伴う住所の変更で通勤不可能または困難となったことにより離職した場合が該当します。

尚、特定理由離職者に該当する場合は、自己都合退職と異なり、約3か月間の給付制限期間はありません。

特定理由離職者に該当するか否かは、ハローワークにて判断されます。

余談ですが、最近は夫婦別財布のカップルが増えており、結婚により離職したものの生活費に困る人も多いようです。

財布を一緒にしたとしても、気後れして自由に使うことができず、今までの収入とのギャップがストレスになる場合も。

新しい職場に就くまでは、専業主婦でも借りれるカードローンを利用して上手にやりくりすると良いかもしれません。

自己都合退職と会社都合退職で意見が分かれる時

自己都合退職と会社都合退職の場合、離職者としては、当然、失業保険の受給額が多い会社都合が良いでしょう。

しかし、会社としては、微妙なケースの場合は、離職票には自己都合退職で書きたがります。

それは、解雇などの会社都合での離職者を出した場合、助成金が受給できなくなるというリスクを孕んでいるためです。

具体例

多くのケースでは、会社と離職者がもめる点は、自己都合退職か会社都合退職、どちらで離職票を発行するかです。

手続き上は、会社が離職票の中の離職理由欄に「会社としての見解」を記載します。

その時に離職者がその離職理由に異議があるか否かを記載する欄がありますが、人事担当者を前に書いてある内容に異議を唱えるのは難しいでしょう。

次に人事担当者が会社の最寄りのハローワークへ離職票を持っていきます。
そこで、ハローワークの職員が確認を行います。

その後、会社から離職者宛てに離職票が送付され、離職者は送付された離職票を持参し、自宅最寄りのハローワークへ手続きに行きます。

もし、離職理由に納得がいかなければ、ここで申し出をすることができます。

そして、内容によっては、ハローワーク担当者が会社へ問い合わせをします。

よって、離職理由は在職時に記載した離職票に納得がいかなくても、後から申し立てをすることができ、かつ変更できるという点をおさえておきましょう。

自己都合退職のメリット

前述のとおり、待機期間満了後約3か月間は給付制限期間となり、失業保険は全く受給できません。

しかし、この給付制限期間中は、失業の認定がありません。

よって、内職収入や就職の期間があっても、失業保険の減額調整や失業の認定が先送りにされるなどのデメリットもないということです。

この間に内職収入などで貯蓄を増やして置き、給付制限期間が明けた際には、失業保険を受給できるということです。

具体例

他の事例として、以下のようなケースがあります。失業中であっても国民皆保険の観点から、社会保険には加入しなければなりません。

そして、扶養に入るには年収130万円未満の要件が課されます。

よって基本手当の日額が(60歳未満の場合は)3,612円以上の場合は、受給開始後は扶養に入ることができません。

すなわち、給付制限期間中は扶養に入ることができる(社会保険料節約)ということです。

自己都合退職のデメリット

待機期間満了後約3か月間の給付制限期間があります。

これは、失業保険を全く受給できない期間ということです。

具体例

自己都合退職のメリットで記載した扶養に入ることができる条件で、自己都合退職の場合、最初は給付制限期間中のため、離職日の翌日から扶養の手続きをすることがほとんどです。

しかし、給付制限期間が明けるのは、3か月後であるため、扶養の取り消し申請を忘れていることが多く見受けられます。

この場合、後から指摘され、病院にかかっている場合などは、保険料の返還などの煩雑な手続きが待っているということです。

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