陽はまた昇るから/緑黄色社会 を聴くまでの80分。

「今回のご応募を心より感謝いたしますとともに、今後のご活躍を祈念いたします。失礼いたします。」

お祈り電話に慣れ過ぎた樹(いつき)は、もう何も感じなかった。

大学の友達が皆就活を終えているという中で、樹はまだ一社からも内々定が貰えていない。就活を始めるのが遅すぎたのだと、樹は考えている。

電話を切りそのまま「○○ナビ2025」を開く。しかし入社したいと思える会社は、見つからない。

スマートフォンを置きお湯を沸かす。有名な激辛ラーメン店のインスタント商品を食べるのだ。

お湯を入れて3分待ち、口を震わせながら3分で食べる。沢山の汗が流れる。

「痛い。」

疲れた樹は、リビングで寝てしまった。

1時間後に目覚めて、ゆっくり走ってトイレへ向かった。樹は辛い物を食べると毎回お腹を痛めているのだ。

寝起きで必要な力が入らない。

「痛い。」

涙が流れる。

「苦しい。無理。しんどい。」

力いっぱい叫んでしまった。

「もう何も感じない、訳がない。面接で実家に帰る度に、気を遣われているのが苦しい。入りたい会社全部落ちたのに、『志望理由』考えるなんて無理。てか、もう生きるのがしんどい。」

一人で思いっきり叫んだ。

いつの間にかトイレは済んでしまっていた。顔を洗い、ベッドでスマホを握る。

Spotifyを開く。普段再生しない『元気Booster』というプレイリストを再生する。

[陽はまた昇るから/緑黄色社会]

涙を流しながら、この曲が終わるまでに2社プレエントリーしてしまった。

※このお話はフィクションのつもりです。

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