残弾数28
〔 28 〕
僕は命綱を噛んでいる。何せ命綱だから、それこそ命がけで噛んでいる。
歯に、そしてママンに感謝。あなたがくれた贈り物、合計28本。飯も食わない全身サイボーグの僕が、それでも口を必要としたのは、子供のころから自慢のこいつらとサヨナラしたくなかったからだ。で、おかげで僕は星屑にならずに済んでいる。
よし、落ち着いたかい僕。じゃあ状況の把握といこう。まず、発端はこうだ。
☆
danger! warning! explosion!
そしてブラック・アウト――
――しそうになる意識を、鋼の意志と拡張神経ブーストで何とか引き戻す。何が起こった? 答え:居住船が突然大爆発、虚無の宇宙に放り出された。マジ? サイボーグじゃなきゃ死んでたよ? ニューロンをさらに加速。シェイクされていた視界が、徐々にスローモーションと化していく。オーケイ。ミリセコンドで現状把握しろ。診断プログラム実行。ボディ:軽微な損傷、動作に支障なし。グッド。四肢:未接続。未接続? 僕は思い出す。100日に一度のフルメンテナンス……メンテナンスセルに横たわり……四肢が取り外され……直後にKABOOM! おお、神よ。ってことは何? 只今絶賛吹っ飛び中の僕はこの緊急事態に、文字通り手も足も出せませんってこと? はい、そのとおり。後は偉大なる物理の法則、慣性の神のご意志のままに――
目の前に、のたうち回る作業用ケーブル。
一瞬の判断。
☆
なるほど。死ぬよりマシって程度には最悪だ。だけど。
僕は顎のパーツを少しずつ、本当に少しずつ動かし始めた。いいか、決してあせるなよ。なんとかこのままケーブルをたどり、居住船(の残骸)までたどりつければ望みが――。
パキン。
真空中では聞こえないはずの音が、確かに聞こえた。顔の横を、白い小さな塊が漂っていく。おいおい僕、義体の出力調整、すげえ難しいってわかってるか?
〔 26 〕
【続く】
そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ