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インフレ対策の基本的な考え方

 国内の物価上昇には様々な要因があります。例えば、需要の増加、供給能力の低下、輸入物価の上昇、増税などです。
 これらの要因もさらに詳しく見ていけばさらに細かく分けられます。例えば輸入物価の上昇といっても、具体的にはエネルギーなのか食料なのか鉱物資源なのかなど。そしてこれらもさらに細かく分けられます。またこの物価上昇は一時的なものなのか長期にわたるものなのか、といった見方から分けることもできます。
 要するに物価上昇の要因は千差万別なので、それへの対策も様々にならざるをえません。

 ただしどのようなインフレであっても、インフレ対策を考える時に注意すべき点は「物価上昇=悪」と単純に考えて物価を抑えることを最優先にしないことだと思います。高すぎるインフレは当然抑制する必要がありますが、それでも物価抑制を最優先に考えるべきではないということです。

 たとえば輸入物価上昇によるインフレの場合、国民に給付金を配るのは正しい対策だと思います。「そんなことをすればもっとインフレになってしまうじゃないか」と考える人がいるかもしれません。確かにその通りで、給付金を配ると消費者の所得が増えるので企業は価格転嫁しやすくなり、さらに物価は上がると思います。しかし、何もしないより遥かにましだと思います。

 輸入物価上昇によるインフレというのは、そもそも国内の供給能力が逼迫したことが原因で起きているわけではありません。しかも物価上昇によって人々は消費を減らすので、デフレギャップ(供給能力の余力)が拡大することになります(但し円安が原因であれば内需が減る代わりに外需が増えることでデフレギャップがあまり変わらない場合も考えられます)。
 要するに「生産しようと思えばこれまで通り生産できるのに生産されない」、というすごくもったいない状況になります。

 もし給付金を配れば国民(消費者)は物価高騰で苦しむことなくこれまでの消費生活を維持できます。一方で企業は輸入物価上昇分を価格転嫁してもこれまで通りにものが売れるので、これまで通りの生産が行えます。
 つまり給付金は国民と企業の両方を救い、これまで通りの生産と分配を維持するのに役立ちます。
 もし配らなければ国民は物価高騰で苦しみ、企業はなかなか価格転嫁できずに苦しみ、そして生産と分配が減るので人々の生活は貧しくなります。

 またこの給付金は結局外国企業の儲けになりますので、円安圧力を高めるなどして外需が増えることに繋がります。
 外需が増えた結果供給能力が逼迫すれば生産性向上の投資が活発になったり、実質賃金が上昇したりと色々と良い効果が期待できます。

 次に、輸入物価上昇が原因ではなく需要が拡大して供給が追いつかずに物価が上がっている場合はどうでしょうか。
 元々供給が追い付いてないわけですから、給付金を配ってさらに需要が増えたところでそれに合わせて財の生産と分配が増えることはなく、さらに値上げされるだけになる可能性が高いので、こういうときに給付金を配るのは間違った対策になります。

 このように、インフレ対策を考える時も需要と供給と潜在需要と供給能力を中心に考え、物価を抑えることよりも財の生産と分配の方を優先して考えるのが良いと思います。
 輸入物価上昇によるインフレのときに物価を抑えることを優先すれば、お金を配らないことで企業や国民を見殺しにしたり、金利を引き上げたり、歳出削減したりしてさらに消費を冷え込ませて国民を苦しめるような対策がとられる恐れがあります。

 ちなみに、輸入物価上昇によるインフレの場合は給付金を配るよりもまずは消費税を減税するなどして、物価を抑えつつ消費を冷え込ませないことを優先する方が良いと思います。

 今の日本は減税もせず、お金も十分には配らず、金利を上げ、毎年歳出を減らすなど、財の生産と分配よりも物価を抑える方を優先しているように見えます。
 というか、「単に国民を助ける気がないだけ」というのが本当のところなのかもしれません。


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