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看護計画テーマ「薬物中毒患者の標準看護計画」

今回のテーマは「薬物中毒」になります。
様々な要因が重なって薬物中毒になってしまう患者様は多くいらっしゃいます。時には命を落としてしまうこともあります。
治療には多くの時間が要す場合あるため、看護師は長い時間担当することになります。
中枢神経に対する後遺症が発生することも多いため、しっかりした看護計画を立てることが大切になります。


薬物中毒患者の標準看護計画
 
 
薬物中毒とは
 中毒とは、医薬品や化粧品以外の化学物質によって起きた有害作用や、医薬品や化粧品の場合で、正しい使用方法以外の方法で(薬用量をはるかに上回る量を飲んだとか、消毒薬を飲んでしまったというような)使われたときに起きた有害作用のことをいう。すべての化学物質は毒性や毒作用をもっていて、それが有害作用となって現れた場合を中毒という。
 一般的に言って全身中毒の際、毒作用がいちばん現れやすいのは中枢神経、次いで心・循環系、血液や骨髄などの造血器、肝、腎、肺、皮膚の順である。筋肉と骨は比較的障害を受けにくい。肝臓は比較的再生機能がよいので、肝障害は回復の可能性があるが、中枢神経に対する障害は後遺症として残ることが多い。
 毒作用には局所作用と全身作用とがある。全身作用は、吸収されてはじめて症状として現れるもので、化学物質にさらされたあと比較的短時間で症状が現れる。
 
アセスメントの視点
 中毒反応の強さは、毒物の種類・量、吸収の経路、ならびに個体側の条件によって影響される。したがって、中毒患者には、原因物質の体内動態、それに影響を及ぼす個体側種々の条件を知って対応する必要がある。中毒患者には、①原因は予期しない不慮の事故、または意図的な自損行為による、②自損行為のときは患者が本当のことを言わないことが多い、③意識障害をともなっていることが多い、④原因毒物がわからないことが多く、また複数の物質による中毒が多い、⑤来院時は歩行できていても薬物の吸収、分布により急激に悪化することがあり、現症と重症度が一致しないことがある、という特徴があるため、原因物質の確認ができないままに、診断・処置、治療が並行して進められる。しかし、毒物による生体の反応として少なくとも、嘔気・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状、毒物そのものによる中枢神経抑制と組織の呼吸が障害されることによる意識障害・呼吸障害、徐脈・頻脈などの不整脈、血圧変動、瞳孔変化、毒性物質による急性肝・腎不全などを念頭において観察ならびに対応しなければならない。
 
症状
 中毒起因物質の種類・量などにより症状も異なる
 
 1.意識障害

 2.換気障害
 1)低酸素・高炭酸ガス
 2)呼吸抑制
 3)気道閉塞
 4)組織の呼吸障害
 
 3.循環障害(ショック)
 1)薬物による心筋抑制
 2)血管壁の緊張低下
 3)脱水によるhypovolemia
 
 4.体液障害
 ・脱水によるhypovolemia
 
 5.低体温が多い
 
診断に必要な項目
 1.現場から得る情報と処置
1)服用した経緯(薬物、毒物名、量、時期等)
2)使用中の薬物(種類、期間等)
3)残置された薬物、器具などの保存
4)薬袋記載事項等で不明な点の確認、問い合わせ
 
 2.患者の身体観察(特に自律神経系の異常)
1)一般状態: 血圧、脈拍、ECG
2)瞳孔
3)消化器症状: 特に腹部を中心に
4)皮膚症状: 発汗、発疹、皮膚の色調変化
5)臭気: 呼気、吐瀉物他
 
 3.臨床検査項目中特に関連する項目
1)血清浸透圧
2)血糖値
3)腎機能: BUN、Cr
4)肝機能: GOT、GPT、CPK等
5)尿分析: 薬毒物の同定にも有用
6)薬物血中濃度測定
7)ECG: 血圧,脈拍と関連して起因物質の推定と処置に有用
 
治療方針
 1.救命救急処置
中毒患者は意識障害を伴うことが多く、舌根沈下による気道閉塞をきたしたり、その毒性により心肺機能が抑制されて心肺停止に陥ることもある
 
 2.維持療法
呼吸、循環、体液・電解質、体温管理
急性腎不全の対策 (血液浄化療法等)
中枢神経系の障害に対する治療
 
 3.中毒症に対する治療
1)体内にまだ吸収されていない毒物の排除
水洗、催吐、下剤、胃洗浄、腸洗浄、吸着剤
2)体内にすでに吸収されてしまった毒物・薬物の対外排泄の促進
強制利尿、血液浄化法、交換輸血、純酸素投与、高圧酸素療法
3)特殊な拮抗薬、解毒剤の使用

中毒患者の治療のポイント
1.中毒症に対する治療
 1)水洗
対表面積からの吸収を抑制する
中毒物質を希釈・除去する
局所での化学反応をおさえる
消炎効果により組織の代謝を抑制する
組織のPHを正常に保つ
吸湿作用がある場合にはこれを抑制する
 
 2)催吐
以下の場合に経口摂取した毒物を排除する場合に行う
 中毒物質を服用して4時間以内のもの(4時間以上たっていても、胃内に残存していると推察される場合はこの限りではない)
 意識が清明で、嚥下反射や咳嗽反射が十分にある場合
 中毒物質が腐食性物質、揮発性物質以外の場合
 
 3)下剤
中毒物質の腸管内の滞留時間を短くし、腸管からの吸収を阻止するために使用する
単独に用いるかまたは吸着剤を併用する
 
 4)胃洗浄
催吐が不可能な場合薬物の吸収阻止として行う
循環不全、呼吸不全がある場合は禁忌である
 
 5)腸洗浄
腸内の未吸収薬物を除去する方法
 
 6)拮抗薬、吸着剤
解毒剤には消化管内などで中毒物質を中和あるいは沈殿させ、吸収されなくするもの、薬理学的に中毒症状に拮抗するもの、生体内で化学的に反応して毒性のない物質として排泄させるもの、抗原抗体反応で結合し毒性のない物質とするものなどがある
 
 7)強制利尿法
強制利尿とは外因性に大量の輸液を行うことで尿量の増加を図り中毒物質をできるだけ多く尿から排泄させる治療法であり、原則的には大量の利尿を行いうる腎機能をもった患者が対象となる
 
 8)血液浄化法
中毒を含むさまざまな代謝異常に対し、血液を体外に取り出し、有毒成分を除去したり、不足分を補うなど何らかの操作を加えてその性状を正常化し、体内に戻す方法である
 
2.全身管理
 1)呼吸管理
・気道閉塞、呼吸抑制による換気障害が起こり低酸素・高炭酸ガス状態になる
・嘔吐時の誤嚥により肺炎を併発することがある
・状態によっては人工呼吸管理を行う
 
 2)循環管理
・薬物による心筋抑制及び血管壁の緊張低下がおこりショック状態になる
・輸液ル−トの確保(CVル−ト)、昇圧剤(ドパミン、ドブタミン)の使用
・重症時はS−Gカテ−テル、動脈圧モニタ−を挿入する
 
 3)体液の管理
・脱水による循環血液量の低下がおこり体液障害がおこる
・適正な輸液の投与をおこない循環を保つ
・電解質(Na、K、Cl)のチエック、体重測定、尿量、比重測定と浮腫の程度を観察する
 
 4)体温の管理
・薬物による低体温がおこることがある
・衣服の汚染、循環障害、大量の輸液、強制利尿、血液浄化法による体温の喪失が生じるため、表面体温、深部体温をチエックし補液の加温、全身の保温をおこない体温を保つ
 
 5)精神面のサポ−ト
・中毒患者は精神が障害されていることが多く、不安定な精神状態に陥っている
・自殺企図であるか確認をおこなうことは、精神面のケアのためにとても大切である
・身体的・精神的苦痛が軽減され安定した精神状態が得られるようなケアが必要である
 
 6)栄養の管理
・薬物により消化器の機能が障害され、栄養の吸収ができず輸液療法、高カロリ−輸液が行われる
 
 7)ドレ−ンの管理
・薬物を体内に吸収させないため、胃管、腸ドレ−ンが留置され胃洗浄、腸洗浄が行われる
・薬物が除去され腸蠕動が出現し排便・排ガスが良好になれば抜去される
 
看護計画(一酸化炭素中毒)
・アセスメントの視点(一酸化炭素中毒)
 一酸化炭素中毒患者の看護は重症度により、その症状・対応もさまざまである。  急性期の中毒症状としては精神神経症状、酸素代謝障害、循環障害などがあり直ちに全身状態・重症度把握、処置が必要となる。  若い女性で自殺目的の患者が多い傾向にある。
 
・問題リスト(一酸化炭素中毒)
#1.意識障害
   〔要因〕・CO−Hb値上昇による酸素代謝障害、組織低酸素状態は血管透過性を亢進し、脳浮腫をひきおこす
       ・CO−Hbにより中枢神経がおかされると、脳の不可逆的な障害がおこる
 
#2.呼吸状態の悪化
   〔要因〕・CO−Hbによる酸素代謝障害
       ・呼吸中枢抑制
       ・血管透過性亢進、大量輸液による肺水腫
       ・気管内挿管に伴う合併症
 
#3.循環不全
   〔要因〕・血管透過性亢進による循環血液量減少、血圧低下
       ・Ht値上昇による脳梗塞、肺梗塞の合併
       ・心筋障害
       ・不整脈、ST低下、T波平坦化
 
#4.多臓器障害の合併
   〔要因〕・組織循環量低下、尿量減少
       ・組織低酸素症
 
#5.身体的・精神的ストレスの増強、不穏状態
   〔要因〕・身体的、精神的苦痛、抑制
       ・予後に対する不安
       ・社会的立場
       ・生活環境の変化
       ・精神科疾患の既往
 
#6.家族の不安
   〔要因〕・予後、経過
       ・社会復帰、経済面
       ・患者−家族関係
 
#7.急性期の意識障害回復後、失外套症候群、健忘症候群などの神経症状
   〔要因〕・発生機序不明、予測困難
 
・看護目標(一酸化炭素中毒)

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