選挙、という映画。
「選挙」 というシンプルなワードに目を引かれ、
なんとなく一気に見てしまいました。
映っていたのは、まぎれもないリアルな現場。
政策より名前を連呼する街頭演説。
知り合いは誰もいないけど応援議員に同行する地域イベント。
大量の名簿に片っ端から電話する支援者。
クオリティの高いウグイス嬢。
握手を求めて歩き回る候補者。
開票を待ちながらも他人事の現職議員。
選挙の現実をこれでもかと詰め込んだ作品でした。
想田和弘監督の「選挙」は、
2005年の川崎市議会議員補欠選挙において、自民党公認候補であり、想田監督の大学時代の同級生である山内和彦氏の戦いを追ったドキュメンタリー映画です。
選挙特番や新聞記事からは知ることができない、
密着したからこそ撮影できた組織選挙の裏側は、
選挙の本質は何か、考えさせられます。
当時、自民党と民主党は市議会において同議席であり、
市政与党をかけて絶対に負けられない選挙でした。
しかし、公認候補として公募で選ばれた山内氏は、地元出身者でもなく秘書経験もない完全な素人。
小泉改革のような改革を市政でも実現するのだ、という想いはありますが、
有権者に抱負を聞かれてもうまく答えられなかったり、
演説会場に予定より30分はやく入って自民党の事務所職員に怒られたり・・
まさに神輿の如く、まわりの国会議員や地方議員のいわれるがままです。
自民党という強大な力があれば候補者の人物や考えなど全く関係ない、
誰も明言はしませんが、そんな空気が事務所に溢れていました。
僕がこの映画をみて感じたことは、
「15年経っても選挙は変わっていない」
ということです。
選挙には学生時代から何度も携わってきましたが、
誰も政策を見ていないから、町のビジョンなんて考えなくていい。
誰も聞いてないから名前の連呼だけしておいたらいい。
知り合いの国会議員が応援しているから、よく知らないけど票をいれる。
このような感覚がいまだに受け継がれていることを肌で感じます。
さらに今は無関心な世代が増えているため、
ますます選挙や政治家と密接な関わりを持つ人だけで政治が進んでいます。
多くの人が権利を投げ出してしまっているがゆえに、
政治家の質が落ちていくという悪循環を、
令和の時代にはなんとか変えたいですね。
ちなみに、この作品の主人公である山内氏は、
数年後、原発事故から義憤に駆られ、「脱原発」を強く訴えて無所属で立候補しており、
最強の組織選挙とは真逆の、草の根選挙を展開する続編があるということなので、改めて拝見したいと思います・・
さて、少し昔の映画ではありますが、
選挙を知るという点において、「選挙」よりリアルな作品はありません。
ぜひステイホーム中に見てはいかがでしょうか。
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