団地の遊び 大予言
大予言
ノストラダムスの大予言のことである。
ーーー1999年七の月、空から恐怖の大王が降りてくるーーー
これを知った時は、小学校何年の時か、多分、六年生のときと思う。驚いて軽いパニックに陥った。
恐怖の大王が、なんだかわからないが、要するに、1999年に人類は滅ぶのである。
だが、そのうち冷静になってきた。その時、1975年頃である。まだ、二十年以上ある。充分、生きられるではないか。果たして、その頃、自分は何をやっているのだろうか?だいたい生きてるか、どうかもわからない。
そんなことを友達と話した。みんな同じことを言った。なんといってもまだ小学生である。あと二十年以上ある、と考えると、気も遠くなるような歳月といえた。
すると、こんなことを言う奴がいた。ーーー銀行強盗して金盗もうぜ。
なるほど、どうせ死ぬのだから、いいかもしれない。結構、マジにみんな言っていた。
ところが、マジメな前期学級委員渡部(仮名)あたりが、「仕事して結婚して子供がいても、おかしくない年齢だよ」
コイツは何を言ってるんだ?人類が滅ぶというときに。そんな個人的な問題ではないだろう。本気て思ったーーーバカはコッチである。
学級委員高橋(仮名)が言った。ーーーこんなに早くノストラダムスの予言を警戒してる小学生は俺らぐらいだろう。
確かに、そう思った。もっとも自分たちだけで、思ったわけで、実際はどうなのかは、知らない。
この時代、世間ではそこそこ騒がれていたように思った。これが、1999年が近づくにつれ、マスコミなども、ますます騒ぎがエスカレートしていく。
これは、マジな話で、本気で予言を信じてる奴も結構いた。よってカード借金しまくったりしたヤツも、現実にいた。
ノストラダムスの大予言は、ほとんどが当たってると、当時は言われていたーーーたいがい後づけなのだが。
今の若い子たちは、ノストラダムスの名前も知らない人もいるし、予言を信じてバカなんじゃあないか?と思う者も、多いだろう。しかし、当時は、本当に、誰もが、百パーセント信じてなくても、気にはするものとして、警戒感を持ってることが多かった、と思う。
元サッカー選手の中田英寿氏が、ーーー2002年W杯はホーム開催ですね。という言葉に対してーーー1999年どうなるかわからないし。そう答えたがーーー冗談だろうけどーー全く違和感のない発言と、とられた。
ところで、最近は、まるでノストラダムスのことは聞かなくなった。この人は、確か、西暦3000年以後までも、予言してると言われている。すごいではないか?
やはり、1999年に人類が滅ばなかったことが、原因という気がする。もっとも、ノストラダムスの研究者が言うには、恐怖の大王が降りてくるだけで、人類が滅ぶとは一言も言っていない、ということらしい。ていうか、恐怖の大王って何?誰?ということになるのだが。
同じクラスで、トランプ予言をする女がいた。清川(仮名)は、ほかにも、いわゆるオカルト的なものをいろいろ知っていた。
トランプ占いではなく、トランプ予言だ、そう清川本人が言っていたのである。
机の上に、トランプを何枚か広げる。どうやって占ってる、いや予言してるのか、そのトランプの扱いは何度見てもわからなかった。
ところでコイツは、女子たちから嫌われていた。なぜなら、怪しげなトランプ予言なんぞというものをやっていたし、ほかにもなんか理由があったようだか、そのへんの事情は忘れた、ていうか知らなかったと思った。
女学級委員山岡も、やめときな、あんなわけわかんないの、そう言って、自分にはやらせなかった。
意外に当たる、そう言われていた。クラスでは、浮いていた存在でも、ほかのクラスのヤツとか来て、占って、いや予言していた。
コッソリ一回だけ、やってもらったことがある。すると清川は、驚くべきことを言った。「今日、交通事故に遭うから気をつけて」マジか?と一瞬思い、そして自分はものスゴくシラけた。ハッキリ言って、何言ってんだコイツ?と思った。自分のカンは、そんなことあるわけない、そう確実に告げていた。
実際事故はなかった。アホくさくて清川に文句言う気にもならなかった。ほかのクラスの奴らは、わざわざ来て予言してもらってるなんて、バカじゃあないか?と、何人かの友人と話した。
なんかトラブル系でも起きて、ほかのクラスの先生からクレームが来た。児童からも来た。担任先生から、かなり厳しく怒られ、禁止令が出た。
清川はますます孤立した。そしてMM2(仮名)が言った。
「占い師は自分は占えないって聞いていたが、本当なんだな」
#創作大賞2024
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