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3億円の資金調達の際にサイバーエージェント藤田社長に送った恥ずかしすぎるメール

こんにちは。タイミーの小川です。

前回の記事では、サービスローンチしてからの大きな壁にぶつかり、乗り越えてきた話をしました。

そして今日は予告通り、タイミーが一気に成長するきっかけとなった3億円の資金調達(シリーズA)の裏側と、その時に非常に影響を受けた、2人の大先輩起業家について触れたいと思います。

祖父の影響で起業家を目指し始めましたが、これまでにお世話になった起業家の方を挙げたらキリがありません。それぐらい多くの方から刺激をいただいて、今日までやってこれました。

時には厳しく歩むべき方向を示してくれ、時には一緒にワクワクするような夢を語り合える。年齢や経歴関係なく僕と接してくださる起業家のみなさんのことを尊敬してやまないし、最大の恩返しとしていつか追い越したい——と思っています。

シリーズAの資金調達秘話

調達先は、株式会社サイバーエージェント、エン・ジャパン株式会社、株式会社オリエントコーポレーションなど。サービスリリースから半年足らずの学生ベンチャー企業が、3億円の資金調達を実施するケースはそうそうあるわけではありません。

また、このときにタイミーは、サイバーエージェントの藤田晋さんが立ち上げた「藤田ファンド」の出資第1号案件に選んでいただきました。これがその後の大きな分岐点となったのは間違いありません。

これ以来、タイミーは「あの藤田晋氏が認めたスタートアップ」として注目いただくことになりました。


「シリーズAで3億円調達ということは、よっぽど事業も好調だったんですね?」とよく言われるのですが、実のところまったくそんなことはありませんでした。

調達に向けて動いていた2018年10月の売上額はたったの「11万8770円」

いまのタイミーの規模からすれば、文字どおり「吹けば飛ぶような数字」だったのです。

そんな企業が時価総額13億円もの企業価値を認められて、大きな調達に成功できたことには驚くほかありません。当時のピッチ資料を振り返ると、それまでとはかなり様変わりしているのが見て取れます。ただ勢いだけで夢を語るのではなく、明確なビジョンやミッションをはっきり掲げたうえで、ビジネスとしてのポテンシャルを伝えようという姿勢が現れ始めていました。

サイバーエージェント藤田晋さんに送った、恥ずかしすぎるメール

シリーズA調達を語るには、サイバーエージェントの藤田晋社長との出会いについても、触れないわけにはいきません。

当時の僕は、次なる資金調達に向けて、出資先を探し回っていました。このときに掲げていたポストバリュエーション(出資金額も含めた企業価値評価額)は15億円。複数社を駆けずり回ったのですが、そのすべてから断られていました。

無理もありません。前述したとおり、当時の月売上は10万円ちょっと。さすがに周りからも「無茶すぎるのでは……」と言われながらのチャレンジでした。

藤田さんにお会いしたのは、そんな八方塞がりの状況でのこと。

実は、2度目の資金調達(2018年8月のプレシリーズA調達)のときに、CAC(サイバーエージェント・キャピタル)に出資いただいていたことで、サイバーエージェントとのご縁は生まれていたんです。

直接のきっかけになったのは、当時サイバーエージェント社長室投資事業本部に在籍されていた、坡山里帆(通称「はやまり」)さんが開催した「はやまりナイト」。「はやまりナイト」とは、藤田さんと若手起業家たちとの交流を目的にしたもので、僕は2018年の11月1日に参加していました。日にちがわかるのは、このイベントの一次会が終わったあと、藤田さんに送ったメールが残っているからです。送信時間は22時46分になっているので、おそらく帰宅直後に送ったのでしょう。

ところがこのときの僕は、藤田さんに初めてお会いした興奮も重なって、かなり酔っていたようです。間違いだらけの伝説的にひどいメールなのですが、恥を忍んでメール本文を公開します。お会いしてすぐに送ったリアルの熱量が少しは伝わるかもしれませんから(笑)。以下原文のままです。

藤田さま

今すぐ働ける最後にお話しさせていただいたタイミーの小川です。
本日は大変貴重な機会をありがとうございました。

現在資金調達中で是非1億円を出資いただきたいと思っています。
この市場は藤田さんのおっしゃる通りくる部分があり、いかに認知させるかというアベマのような戦い方になると思っています。

3月から始めて広告0円でユーザー数1万2000まで伸びた自分の事業を藤田さんの感覚とアドバイスを合わせて時価総額1000億を超える会社に育ててください。自分もこの市場では負ける気がしません。

大変長いご連絡をさせていただき恐縮ですがサイバーエージェントベンチャーズからも出資をいただいているので藤田ファンドでも検討していただけると幸いです。
よろしくお願いいたします!
小川 嶺

藤田さんは、タイミーのどこに魅力を感じてくれたのか


いやぁ、何度読んでもひどいですね。。21歳だから許されたのか、許されていないのか..(苦笑)、それでも藤田さんは返信をくれました。

確か……、「昨日はありがとうございました。あんまり覚えていないけど、よかった気がするよ」といったシンプルな内容だったと思いますが、その数日後には本当に出資が決まったとの連絡をいただくことができました。こうしてタイミーは藤田ファンドの投資第1号案件に選ばれたのです。

——いったい何が藤田さんの目に留まったのか。

少し思いあたることがあります。「はやまりナイト」でピッチをしたときに、僕は藤田さんにAbemaTVの話をしたのです。同社は、サイバーエージェントとテレビ朝日が出資して2015年4月に設立されました。サッカーW杯を全試合放送するなど、いまでこそ注目のメディアになっていますが、藤田さんが先行出資を決めたばかりのころは、株主たちからも猛反発があったのは有名な話です。「無料のインターネットテレビ局? そんなもの、うまくいくはずがない!」という批判を浴びていたのです。

でもあのときからずっと、藤田さんには見えている景色があって、そこに〝全張り〟されていましたよね。

まわりの人になんと言われても、藤田さんには『みんながアベマを使っている世界』が見えていたし、だからこそ『絶対にこれはいける!』って走ってこられた。

同じように、僕にも『タイミーの世界』が見えてるんです! タイミーを使ってみんなが働いている世界が絶対来ると思っています。だから、ここに〝全張り〟したいんです。ぜひ出資してください!

はやまりナイトでのピッチ内容(一部)

今、こうやって振り返ってみると、月売上10万円ちょっとの経営者が、なんと偉そうなことを言っているのだろうと思います(苦笑)。

僕のプレゼンはあまりにも根拠に乏しかったはずです。

それにもかかわらず、最終的に出資を決めてくれたのは、24歳で起業した藤田さんも、かつては年上世代に囲まれながら「自分だけに見えている景色、他人からは何も根拠がないように思える景色」のなかで、孤独な戦いを続けてきたからかもしれません。だからこそ、僕という人間にも少しばかり面白みを感じていただけたのではないかと思っています。

ちなみに、このときすでに藤田さんは「大手企業がタイミーとまったく同じことをやってきたらどうするの?」という質問を僕に問いかけてくれました。ビジネスを立ち上げたばかりの僕には重たすぎる問いでしたが、答えはシンプルでした。

「相手が来る前に駆け抜けます!」

僕には昔から根拠のない自信だけはあったし、だからこそ今起業家をやっているんだなぁと思っています。

「起業家は自然体が一番」もう一人の尊敬する人物

「今までで一番影響を受けた人物は?」と聞かれれば、僕は間違いなく藤田晋さんと並んで、南場智子さんの名前をあげることでしょう。

いわずと知れたDeNAの創業者です。

南場さんに初めてコンタクトを取ったのは、2019年4月のこと。僕は大学4年生でした。大学1年生のころ僕に「生き急いでいる」などと言っていた同級生たちも、すっかり就活モードの時期に入っていました。

当時タイミーは、シリーズAでの3億円調達を追い風に、会社は圧倒的なスピードで成長していました。ですが、僕が思い描いていたタイミーはこんなものではなかった。事業を爆発的に成長させるためには、一般の認知度を高める必要がありました。その手段としての最有力候補が「テレビCM」でした。

だとすると、資金がまったく足りません。

かくして、次なる資金調達(シリーズB)に向けて僕は動きはじめました。シリーズAを振り返ったとき、あのラウンドがまとまったのは、間違いなく藤田ファンドの参加があったからです。

「次のラウンドでは、DeNAの南場さんに目玉になっていただきたい!」

それが僕の勝手な願いでした。

僕は起業した時から南場さんのファンで『不格好経営』(日本経済新聞出版社)は、迷った時に必ず手を取る、僕の愛読書でもあります。

結局、自然体のリーダーがいちばん強い

実際に南場さんにお会いしたのは、2019年4月です。結論から言えば、出資は断られてしまいました。こちらが提示したバリュエーションがさすがに高すぎると言われて、どうにも条件が合わなかったのです。

でも、南場さんは帰り際に「応援してるよ!また話を聞かせて」と言ってくれました。

僕はその言葉をてっきり社交辞令だと思い込んでいました。

でも、そうではなかったのです。出資の相談から3ヶ月ほど経った2019年7月、今度は南場さんから僕に連絡をしてきてくださりました。


「よかったら、一緒に野球観戦に行かない?」


僕は二つ返事で「行きます!」と答えました。もちろん横浜DeNAベイスターズの試合です。とはいえ、僕はこのときも出資のことで頭がいっぱいでした。

どうすれば南場さんにタイミーの魅力をわかってもらえるだろうか? どうすれば資金を出してもいいと言ってくれるだろうか?そんなことばかりを考えながら、横浜スタジアムに向かいました。

……ですが、いざ球場に到着してみると、そんな自分がちょっと恥ずかしくなりました。

ビジネスのことで頭のなかがいっぱいの僕とは反対に、南場さんがベイスターズのことを全力で応援していたのです。選手がヒットを打てば、自分のことのように全身で喜びを表現していました。

このときの南場さんの様子が、僕には強烈な印象として残っています。

そこにいたのは「社会的に成功した上場企業の経営者」ではなかったのです。ちょっと憚られますが、率直な印象を言ってしまえば近所のおば様のようでした(ごめんなさい!)。だからといって「幻滅した」という話ではありません。むしろその真逆です。

この瞬間、僕はなぜ南場さんがつくったDeNAという会社が、あれほどまでの成長の軌跡を描けたのかがわかった気がしたのです。

南場さんはいつも、その場にいる誰よりも自然体です。そして、誰よりも目の前のことに夢中になれる。そんな南場さんの姿に、僕は経営者としての本質を垣間見ました。

僕も南場さんのように、心の底からピュアに「世の中のために何かをしたい」と言える人でありたい。南場さんのような経営者でありたいと思います。

改めて振り返ってみると、当時の僕は、本当に失礼なこともたくさんしていたんだと恥ずかしくなりますね(笑)。でも、偉大なる起業家の皆さんが温かく見守ってくれていたからこそ、タイミーはここまで大きくなったのだと本当に感謝しています。

それから、タイミーでは随時メンバーを募集しています。25卒のインターンも募集開始しました。気になる方は募集のページをチェックしてくださいね!タイミーのオウンドメディアの応援もよろしくお願いします。


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