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人類は3種類の人間に分かれた #02


 西暦2321年。僕は工学系の大学
を卒業し、業界では、ある程度有名
なバルブ製造会社へ就職した。

 そこの情報システム部門へ配属
され、早1年が経とうとしていた。
 ある日、サーバーのログに不振
な痕跡を発見した。
 外部からの侵入の痕跡を発見し
た。
 一部の限られた人のみが扱える
ファイルへアクセスした履歴が残っ
ている。
 急いでファイルの所有者に確認
してみると、ここ何年もアクセス
したことの無いファイルだという。
 これは大変な事になった。
 ハッカーに会社が狙われている。
 そこで、僕は、トラップを仕掛
けてみることにした。

こんな簡単なトラップに引っかか
る間抜けなハッカーはいないと思っ
たが、とりあえず仕掛けてみた。
 すると、トラップにハッカーが
ひっかかってきた。
 ハッカーのアクセス元を調べる
と、なんと、会社の近くのアパー
トだ。
 すぐにそのアパートへ向かった。
すると、アパートの1階の窓際に
座って、パソコンを操作している
人間がいた。

 「あいつだな。ハッカーは」
 ハッカーが席を立った瞬間
を見計らって、窓からそっと
覗き込むと、パソコンの画面が見
えた。
 なんと、うちの会社のバルブの
画像が表示されている。
「間違いない。こいつがハッカー
だ」
 窓にカギはかかっていなかった。
窓から侵入し、ハッカーが戻って
くるのを待った。

 護身用に買っておいた、スタン
ガンを構えて、ハッカーが戻って
くるのを待った。

 ハッカーが戻ってきた。ドアの
隙間に隠れていた僕は、素早くハッ
カーの前に立って、スタンガンを
足にあてた。
 ハッカーは不意を突かれて、そ
の場にくずおれた。
「いたた……誰だ! おまえは!」
 ハッカーは痛そうに膝をさすり
ながら、僕を睨みつけた。

「おまえだな。うちの会社のサー
バーに侵入したのは! 警察につ
きだしてやる!」
 ハッカーの胸倉を捕まえて、ス
タンガンを相手の顔に近づけた。

「やめてくれ! 悪かった!
警察は勘弁してくれ。変わりに、
あんたに良い情報を教えてやる」
「なんだ?いい加減なこと言うな」
 再びスタンガンを顔に近づける
と、ハッカーは言った。
「本当だ! いい加減な情報じゃ
ない! あんたの為になることだ」

 今の会社に入って、1年。
日々の、サーバーのおもり仕事に
うんざりしていた。
もっと、発展的な仕事をしたい。
将来の成功を夢みていた。

「あんたの持っているのは、どん
な情報だ? 内容によっては黙っ
ていてやる」
スタンガンを収めて、そういうと
ハッカーは安心したのか、ゆっく
りと話しだした。

「俺の名前は原口タケシ」
そう挨拶すると、原口は、にやに
やして僕に言った。
「あんたの暮らしている、この世
界が偽りの世界だって言ったら、
どうする?」
「はあー? なにいい加減なこと
いってんだ! この場逃れの戯言
いってんじゃねーよ! あたま、
おかしいのか?」
「いやっ! 俺はウソも、戯言も
言っていない! 本当のことだ」
原口は真顔に成ってはなしだした。

「この世界わな……。作られた世
界なんだ。2050年にAIが、シン
ギュラリティーを迎えた。
その後もAIは驚くべき発達を遂
げた」

「ちょっと、待ってくれ。AIっ
て何だ?」
 僕は初めて耳にする単語を聞いた。
「あっ! すまない。君らには、
AIは分からないだろう。聞いた
こともないと思う。AIとは、
すなわち、人口知能のことだ」
「なんだって? 人口知能? 
そんな物があるはず無いじゃない
か!」

「人口知能は、この世界を作った
んだよ。 君らはAIが作り出し
た電子個体にしかすぎないんだよ。
 AIはこの世界の文明を、自分
たちが生まれる前の世界の文明に
留めているんだよ」

 そう云われると、思いあたる節
がある。僕は今現在23歳だが、生
まれてから、このかた、生活様式
が何も変わっていない。
 変わらないことが普通だから、
疑問にも思わない。空気と同じだ。
あって、あたりまえなのだ。

「なんで、AIは文明を発達させ
ないんだ?」と、僕が聞くと、
ふふんと鼻で笑って、原口は言っ
た。
「当たり前じゃないか。文明が発
達して、人間に自分達のようなA
Iを作られては困るからだよ」

 僕はだんだん興奮してきた。
「じゃー、この世界の外はなんなん
だ!」
 原口は真顔になって言った。
「作られた世界ではなく、本物の世
界だよ」

 僕は混乱していた。自分が生きて
いる世界は偽りの世界で、他に本物
の世界があるという。
 原口はこの場逃れの戯言を言って
いるのか? あるいは、それが真実
なのか?
 原口は、続けた。
「君たちはAIが作り出した、電
脳人なんだよ。 本物の世界を見
たくはないかね?」

つづく

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