見出し画像

未来はこの手の中に #02


 こういった社会現象にまで成っ
た、我が社のアプデパンツは、売
れに売れて、生産が間に合わなかっ
た。
 良いことは長く続かない。

 過去の時代に、未来の技術を使
用したことがばれた場合、刑法で
罰せられる。

 未来の技術を使っていることが、
時間旅行管理局に知れてしまった。

 時間旅行は何処でも好きな時代
に勝手に行ける訳ではなく、ある
程度、年代と場所が決まっている。

 各年代には、時間旅行管理局の
取締管『通称:時取り(じとり)』
が駐在していて、その時代の時間
旅行者を監視しているのだ。

 時取りは、その年代の住民に溶け
こんでいる。テレビで歴史物の番組
などの解説者には、見て来たように
解説する歴史研究家などがいるが、
こういった人のほとんどは、未来人
であり、時取りの可能性が高い。

 時取りに目を付けられた者は、
ほぼ、逃げることが出来なかった。
逮捕される確率は99.99%と言われ
ていた。

 ある日、原口 タケシが未来から
突如、我が社へやって来た。
 原口は、応接室に通され、ソファー
に、くつろいだ様子で座り、出さ
れたコーヒーを飲んでいた。

 僕は原口の対面のソファーに座っ
た。
「待たせたな。久しぶりだな。急
にどうしたんだ?」

 原口は部屋の中を見廻して言っ
た。
「だいぶ、景気が良さそうじゃな
いか」

「まあな。おかげ様で、あれから、
こっちの世界で成功してね。近々
上場する予定なんだ」

「そうか。まずは、おめでとう。
俺が今日来たのは他でもない。
 時取りが、お前の事で動きだし
たらしい」

 とうとう、その時がきた。
 ある程度、織り込み済みの事態
なので、慌てはしなかった。

「とうとう、来たか」

「俺が、そのことを揉み消して、
やっても、いいぜ。ただし、これ
が掛かるがな」
 原口は右手の親指と人差し指で
丸を作った。

「いいだろう。僕が成功したのも
君のおかげだ。恩返しと、今回の
件も含めて、それ相応の金を出す
よ」

 原口は驚いた様子で、ヒューっと
口笛を吹いた。
「えらい話が早いな。そしたら、
その金で、叔父さんに話を通して
もらうよ」

 彼の叔父さんは政界の大物だ。
その叔父さんの名は「須賀 吉秀」
 内閣官房長官も経験したことの
ある超大物だ。

 その叔父さんへ、賄賂を贈り、
事態の揉み消しをして貰うこと
に成った。

「じゃ、早速、俺は未来へ戻って、
根回しをしないとな。結果は間違
いなく、うまくいく。安心して待っ
ていてくれ」
 そう言うと、原口は応接室を出
て行った。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?