Tailor Works事例#5(後編)静岡銀行|
株式会社テイラーワークスが運営するコミュニティプラットフォーム「Tailor Works」。地域ビジネスユーザーのネットワークを広げ、地域サステナビリティの実現を目指しています。
このマガジンでは、すでにご活用いただいているコミュニティオーナーへ、導入のきっかけや使ってみた感想などについてお話を伺います。
▼前編はこちら
──前編に引き続き、Tailor Worksの具体的な活用方法に伺います。
井出さん(以下、敬称略):”課題・相談”という機能を使って、県内企業には抱えているお悩みや地域課題をシェアしていただき、スタートアップ企業には県内企業の課題を各々が持つ技術やサービスで解決していただくのがメインの使い方です。
ほかの機能ですと、イベントの告知のために”マガジン”という機能を使っています。どのように告知すると、イベントに参加してもらいやすいかを試しながら使っています。
県内企業の課題を噛みくだくことが、コミュニティオーナーの役割
──実際にコミュニティを覗いてみると、課題や相談の投稿が非常に多く、利用頻度の高さが分かります。よく見ると、運営側の方々も多く投稿されていますね。
井出:実は、定期的に県内企業にアンケートを取ってヒアリングしたお悩みや課題を、県内企業の代わりに私たち運営側が投稿しているんです。
本来であれば、県内企業に投稿いただく形式を取りたいのですが、企業によってはどこまで情報を出して良いのか分からないこともあります。それだけではなく、お悩みや課題を文章化することが難しい場合もありますね。
課題を認識する力や発信する力がまだ足りない場合は、課題の解像度を高めたり、言語化したりするお手伝いが必要となります。
きっと、ほかのコミュニティでも同様のことが起こるのではないかと思うので、コミュニティオーナーの方々には「参加者が問題から課題を導き出すためのお手伝いをすることも、オーナーの役割」というアドバイスをお伝えしたいです。
──なるほど、それは必要かもしれないですね。県内企業の当たり前が、ほかの立場から見ると当たり前じゃないこともたくさんありそうな気がします。
井出:そうなんです。「そのやり方って変えられるよね、スタートアップ企業と連携すればうまくいくかも」といった気づきを県内企業が自力で得るのは大変なので、気づくためのきっかけづくりが必要と考えています。
県内企業とスタートアップ企業では仕事の進め方や言語が違うことも多いので、丁寧なサポートを心がけていますね。実際にやってみて、このサポートが、ビジネスマッチングへの第一歩になると感じています。”マガジン”や”ディスカッション”機能を使うときもそうですが、お互いが分かる言葉でコンテンツを作ることを意識しています。
オンラインとオフラインの融合を実現させたい
──前編にて、TECH BEAT Shizuokaでは定期的にイベントを開催されているように感じました。イベントごとにテーマを設けているのでしょうか?
井出:大きなテーマ設定としては「特定の産業に特化したイベント」と「全産業向けのイベント」の2つです。
イベントの構成はそれぞれで特に変わりはなく、基本的には①先端技術に精通した有識者による基調講演、②スタートアップ企業のピッチで構成。並行して、県内企業とスタートアップ企業の商談が進むという流れになっています。
──イベントに参加される県内企業の数は多いですか?
井出:TECH BEAT Shizuokaは、静岡県と静岡銀行が主体となって運営していることもあり、多くの企業にご参加いただいています。当行としては、お取引先の企業の方へ直接ご案内しています。
最近は、参加してくださる企業が毎回同じメンバーになってしまい、なかなか裾野が広がっていかないことが課題です。
地方と地方の結びつきで新たな化学反応
──今後は、まだあまり参加できていない企業の方にどう届けていくのかということがポイントとなりそうですね。
井出:届けていく上では、可能な限り、オンラインでの商談に対するハードルを下げる必要があると考えています。情報感度が高い企業は、オンラインイベントになっても毎回参加してくださる方が多いですが、そうでない場合ももちろんある。やはりオフラインイベントも開催してほしいというお声もいただきます。
──すべてのイベントをオンラインにするのではなく、オフラインも挟みながら運営していくことが大事なのでしょうか?
井出:そうだと思います。ほかのコミュニティーオーナーの方にとっても、オンラインとオフラインをどのように融合させていくのかという点は、共通の悩みではないでしょうか。
Tailor Worksの機能を活用することで、コミュニティオーナー同士で意見交換をしたり、コミュニティの枠を越えたコミュニケーションができたりと、さまざまな可能性を模索できます。特に地方と地方の結びつきによって生まれる、新たな化学反応が楽しみですね。
自前主義を脱してオープンイノベーションを
──今後の展望についてもお聞かせください。Tailor Worksを活用して、どのようなコミュニティを目指していきたいですか?
井出:毎日新しい発見や気づきを得られるコミュニティにしたいと考えています。そのために、県内企業やスタートアップ企業の方々には、出勤後はまず最初にTailor Worksへアクセスすることを習慣にしてもらえるように運用していきたいです。
また、運営側では、新しいものとの結びつきを続けていき、既存の価値観を打破して、パラダイムシフト(※)を起こす活動をしていきたいと考えています。
具体的には、自前主義を脱してオープンイノベーションを当たり前にするために、自社の課題を積極的に外部と共有する風土作りにつながるような活動や、問題から課題を認識する力を養うようなコンテンツを増やしていきたいです。
そして長期的には、このコミュニティから教科書に載るような斬新な製品・サービスを作り出していきたいという話もしています。
ただ、この活動を我々だけで実現するのは難しいので、外部の方々の新しい視点や知見もあってこそ、実現できるものだと考えています。そのために、イノベーションに関心のある県内企業のオープンコミュニティとつながりをつくったり、創業支援に取り組む機関との連携をしたりと、いろいろな方々と協力させていただきたいです。
※パラダイムシフト:これまで当たり前と考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること。
スタートアップ企業の活発な活動で、さらなるコミュニティ活性化へ
──今回のようにイベントをオフラインからオンラインへ切り替えて、イベントそのものの考え方が変わったことも、パラダイムシフトのひとつとも言えそうです。今後、Tailor Worksに期待することがあれば教えていただけますか?
井出:TECH BEAT Shizuokaは、県内企業とスタートアップ企業とのビジネスマッチングを創出する場なので、スタートアップ企業の方々が「Tailor Worksに登録したら、自分たちの技術を生かして新たな価値を生み出せる」と感じられるような仕組みづくりをしていきたいです。
スタートアップ企業がTailor Works上で活発にコミュニケーションする様子が県内企業にも伝われば、TECH BEAT Shizuokaコミュニティがさらに盛り上がり、関わりやすくなってくると思います。
──スタートアップ企業の活動が県内企業にも伝わることで、TECH BEAT Shizuoka全体を盛り上げていくようなイメージですね。コミュニティに所属する皆さんに、もっとTailor Worksの価値を感じていただけるよう、サービス改善を進めていきます。
井出:特に、地方はオンラインに慣れていない方も多いので、少しでもオンラインに対するハードルを下げて、現状はオンライン化されていないコミュニティとも、いずれは連携できるようなサービスになったら良いなと思っています。
──最後に、より良い地域を目指して取り組んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。
井出:人と人との出会いによって新しいものを生み出すことは、とてもインパクトがあって力強く感じます。
特に、地方では地元の人や企業との結びつきが強いからこそ、外部の方々との連携によって大きなイノベーションを起こせるはず。そうした取り組みの積み重ねがコミュニティを変えていく大きな力になると思っています。
私はこのような可能性をやり甲斐に感じて取り組んでいるので、静岡県の方はもちろん、県外の方々ともつながりをつくって、一緒に地方を盛り上げていきたいです。
──井出さん、お話しいただきありがとうございました。TECH BEAT Shizuokaに興味のある方は、こちらからぜひご参加ください。
※Tailor Works公式サイト内にある、上記2つの事例記事を再編集のうえ、掲載しています。