最新刊発売直前なので「ブルーピリオド」への愛を語る
今、発売を心待ちにしている漫画がある。
2月22日発売。この記事を書いているので、19日だから明々後日が発売日。我慢できずに今日、もう何度目かわからない読み返しをしてしまった。
その漫画の名前は「ブルーピリオド」。
端的に言えば、美大合格を目指す受験生の主人公が、日々悩みながら絵画に向き合う受験物語だ。
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!(Amazonのあらすじより)
改めて読んで、何だか熱い気持ちになってしまって、気がついたら久しぶりにブログを書きはじめていた。とにかくむちゃくちゃに良い漫画なので、ぜひ一人でも多くの人に読んでもらいたい。
ちょうどもうすぐ最新刊が出るということで、少しでも読者が増えるように、「なにが面白いのか」を自分なりにまとめてみたい。
あなたは「自分の好きなこと」を信じられるか
「ブルーピリオド」が取り扱っているのは藝大受験。あらすじと内容がかぶるが、この漫画は成績優秀だが、ヤンキーでタバコも酒もやる主人公、矢口八虎が、あるときから絵画にのめり込み、日々迷いながらも前進していく受験物語だ。
主人公が絵画にのめり込むのは高校2年生のとき。それまで美術をバカにしていた矢口とともに、読者も美術の基礎を学びながら漫画を読んでいくことができる。
例えば、1巻では遠近法にも種類があることを知るし、2巻では構図の取り方を予備校で習う。他にもデッサンの描き方や、作品の見方、画材の使い方なんかも矢口は貪欲に吸収しながら、絵画を学んでいく。
でも当たり前だけれど、それはこの漫画の本質ではない。作品内でも繰り返し記述されるように、技術や知識は「手段」であり本質ではない。
この漫画では、常に「好きなことを信じられるか」が問われている。
これまで学校教育の中で、正解を狙い撃つように生きてきた矢口は、正解のない表現の世界で、自分の絵を信じる難しさに悩み続ける。自分が見た世界、自分が出した答えを、絵に落とし込む過程で、その答えを信じられるかが問われている。
このテーマを軸に、徐々に自分の世界を見つけ、そこにのめり込んでいく矢口に読者は確実に引き込まれていく。そして自分自身の世界について、間違いなく考え始める。
徹夜明けの渋谷の雰囲気を「青い」と思った矢口。
これまで自分が出会った人々や自分にきっかけをくれた出来事との縁を、「金属」のようなものだと考えた矢口。
美術部の先輩、森先輩は言う。
「あなたが青く見えるなら、りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」
自分にとっての渋谷は、りんごは、うさぎは、何色に見えるだろうか。
この感動は誰のものだ?
ブルーピリオド1巻。矢口が初めて美術に惹かれたとき、惹かれた事実に反発しながらも、サッカーの日本代表戦を見ながら、自分の在り方に疑問を持つ。
「意味がわかんねえ。自分に素直なやつなんかこの文明社会で生きていけないってわかってねーのかな。まあ美術なんて才能の世界で遊んでるだけの変人の固まりだもんな。そんなちゃらんぽらんに俺のこととやかく言われたくねーよ。勝手にズケズケ言ってきやがって。」
「俺の問題。そう俺の問題だ。」
「なら一体、この感動は誰のものだ?なんでこんなに大声出してんの?他人の努力の結果で酒を飲むなよ。お前のことじゃないだろ。俺も、これは俺の感動じゃない。」
こういうエグい内省がどんどん放り込まれてくるのが「ブルーピリオド」のもう一つの魅力だ。最高にエモい、熱い。
誰かの頑張りに感動する。それは非常に楽な感動だ。
後輩の成長に、友人の成功に、母校の活躍に、日本代表の勝利に。
ぼくらは別段自分は何もしていなくても、自分が関係しているものが成功すれば感動できる。何なら関係なんて本当はしていなくても、関係すら偽造できる。
でもそれは「自分の感動」だろうか。なぜ自分が感動しているのかを説明できるだろうか。
矢口は自分の人生を、自分の問題として捉えていなかった。うまいことやるゲームと同じ感覚でこなすような日々を送っていた。そんな中で美術と出会ってしまう矢口。でも、好きなだけなら趣味でいいんじゃないか。そんな悩みを打ち明けた矢口に、美術部の先生は言う。
「好きなことは趣味でいい」これは大人の発想だと思いますよ。誰に教わったのか知りませんが、頑張れない子は、好きなことがない子でしたよ。
好きなことに人生の一番大きなウエイトを置くのって普通のことじゃないでしょうか?
ここから矢口の藝大受験が始まる。自分の感動を手に入れるためには、自分の努力で結果を出すしかない。そしてその中でひたすら模索していく矢口を見て、ぼくがこのブログを突発的に書き始めたように、「なんでもいいから何かしたい」と動き出される人は少なくないだろう。
ブルーピリオド4巻、明々後日発売!
さてというわけで本題に戻ると、ブルーピリオドの最新刊、4巻がもうすぐ発売される。ワンピースのように今から追いかけるには長い漫画が多い中で、ブルーピリオドはまだ4巻。追いかけやすい。
そしてここまで描いてきた中で少しでも伝わったと信じているが、最高に面白い。というか熱くなる。何度も繰り返し読んでしまう。
最新刊が出る前に、今こそ1巻からぜひ読んでみてほしい。