いろんなことに挑戦すれば、本当に選択肢は広がるのか?
何か新しいことを始めたいなと思ったときに、まず小さく手を動かす人と、せっかくの熱意を無駄にしないよう慎重に検討する人がいます。
小さく手を動かす人は、取りかかりが早いので、それが自分に合っているかをすぐに見分けられます。一方で、最適な順序を立てて、効率よくスキルを習得するのは苦手です。
慎重に検討する人は、自分に合った方法論を丁寧に考えられるので、着手してから効率よくスキルを習得できます。一方で、なかなか手がつけられず、実践の機会が減ってしまいます。
なので、どちらが良くて、どちらが悪いということはありません。
ただ、どちらの方法で新しいことを始めるにせよ、「無意味に選択肢を広げようとすること」だけは避けたほうがいいと思っています。
たとえば、人に話を聞いてその気になって終わったり、なんとなく潰しがききそうなことに逃げてしまったりすることです。
こうした人たちは、社会に出ると負けます(人生に勝ち負けなんて存在しませんが、あえてこうした表現をしています)。
あるあるなのが、世間体のいい“就職偏差値”の高い企業に入社し、とくに何をするでもなく過ごしている間に、やりたいことを見つけて時間と労力を費やした人に追い越されてしまうこと。
前者は“なんでもできるようで、なんにもできない人”であり、後者は“なんでもできるわけではないけど、なにかができる人”です。
前者が選択肢を広げようと必死になっている間に、後者は選択肢を深めています。
キャリアの縮図としての『ウマ娘』
読者理解を狭めてしまいそうですが、話題の『ウマ娘』にたとえてお話しします。
『ウマ娘』のゴールは、主人公のサラブレッド(=ウマ娘)が、用意されたグランプリレースで優勝することです。
優勝するためには、自分の生まれ持った能力を見極め、自分の強みをひたすらに伸ばさなければいけません。
グランプリレースに出場するまでのレースは、ポテンシャルでも勝ち抜くことができます。
しかし、終盤になるにつれ、自分の強みを生かしたレースをするサラブレッドたちに勝てなくなってしまいます。
弱みを克服しようと必死になったり、どんなレースにも対応できるよう満遍なくスキルを伸ばしている間に、気づいた頃には「素質馬」から「平凡馬」になってしまうのです。
もちろん人生は“never too late”ですが、この考え方に気がつかないと、いつまでも選択肢を広げ続ける——つまり、最終的には選択肢を持たないキャリアを歩むことになってしまいます。
選択肢を広げようと思ったら、結局のところ、何か一つの選択肢に向き合う期間が必要なのです。
あれもこれもとつまみ食いをすること自体に問題はありませんが、その全てが中途半端だと、自分には何ができて、何ができないのかを見極められなくなってしまいます。
結果的に、選択肢を生かすだけの能力を持たないまま、年齢だけを重ねてしまうのです。
大人たちの「選択肢を狭めないように」の罠
Photo credit: Charles Deluvio on Unsplash
大学生くらいまでの年頃だと、何か新しいこと始めようとすると、周囲の大人たちから「選択肢を狭めない方がいい」と声をかけられる機会が少なくないと思います。
「YouTuberになりたい」「プロゲーマーになりたい」と言えば、「それでご飯が食べられなかったらどうするの?」と訝しい顔をされてしまうでしょう。
にもかかわらず、「総合商社に入りたい」と言えば、「選択肢が広がる仕事だ」「潰しが聞くね」と言います(あくまでたとえとして総合商社を例に出しています)。
しかし、はたして本当に、プロゲーマーを目指すより総合商社に入る方が、選択肢が広がるのでしょうか。
なんとなくその先がありそうな選択をすることが、マイナーでも自分が没頭できる選択をすることよりも、その先の選択肢を広げるのでしょうか。
僕は、そうは思いません。
つくられた自分の価値観を若い世代に押し付けているだけであり、「選択肢を狭めないように」という“丁寧なご指導”こそが、若者の選択肢と可能性を奪っているのではないかと感じます。
選択をする以前に慎重に検討することには価値がありますが、一般的に「選択肢が広がる」というイメージを持たれている選択肢に手を出してみたり、ものごとを理解できないくらいに浅く手をつけ続けていても、得られるリターンはたかが知れています。
選択肢を広げながら“なんでもできるようで、なんにもできない”状態でいるうちに、後ろ盾を失うことなんて、もはやザラです。
最近では、日本を代表する企業のパナソニックが「特別キャリアデザインプログラム」を導入していました。とてもカッコよく聞こえますが、早期退職制度です。
若い世代は特に、選択肢を広げるということが、本質的にはどういうことなのかを理解しなければいけないと思います。
選択肢を広げる手段としての、リーンスタートアップ
僕が考えるに、選択肢を広げるということは、いうなれば「自分ができることを通じて発揮できる価値の総量を増やしていくこと」です。
そもそも向いていないことを必死に頑張ったところで、実質的に選択肢は増えません。増えているように見えて、増えていないのです。
価値を提供できない行いには、少なくともビジネスシーンでは意味がないのですから。
もちろん、どんな経験でも、心がけ次第で自身の糧にすることはできます。
しかし、だからといって、重要度が低い経験でもいいということにはなりません。重要度の低い経験を積んでいる間に、より重要度の高い経験を積むチャンス(価値発揮できる手段を見つけるチャンス)を失ってしまうからです。
では、どうすればいいのか。
答えは、「なるべく早く、才能の仮説検証をする」ことです。
誰かの話を聞いたり、本を読んだりして、興味を持てることがあれば、その時点で小さくやってみるのです。すると、楽しいか楽しくないか、得意か不得意かがなんとなく見えてきます。
そうしたら、かけた時間に対してどれくらいの進捗があったのかを、誰かに聞くなりして客観的に判断してみてください。
楽しければそのまま続けてみればいいでしょうし、楽しくないのに成果も出ないなら、その場でやめればいい。要するに、価値提供ができる手段に時間と労力をかけていくのです。
やめることによって選択肢を失うように感じるかもしれませんが、待てども待てども実らない選択肢を捨てることは、果実が実る選択肢に移っていることでもあるので、むしろ選択肢が広がっています。
仮説検証のプロセスは、ビジネスシーンでいうところ「リーンスタートアップ」です。
『「ダメな自分」でも武器になる』より抜粋
リーンスタートアップのポイントは、なるべく「最小限のコスト」で顧客からのフィードバックを得つつ、その学びを「いかに早く繰り返して得るか」を重視しているところ。
構築 → 計測 → 学習 → 構築 → 計測 → 学習 →……のサイクル高速回転させれば、効率的かつ正確に自分の「得意なこと」と「苦手なこと」を見極めることができます。
できるかもしれない100の選択肢を持つよりも、できるであろう10の選択肢を持つことの方が、逆説的ですが選択肢が広いのです。
もしも、新しいことを始めたいと思っていたり、人生の選択肢を広めたいと考えているなら、ぜひ参考にしてみてください。
誰かに相談して的を得ないアドバイスをされたと感じたら、ぜひ『ウマ娘』をプレイしてみてください。
そして、僕と一緒に選択肢を広めたいと感じたら、ぜひ一緒に働きましょう。
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Misfitsの森泰輝です!誰もがSNSのパワーを享受できる未来に向けて事業を創っています。書いてほしい記事のリクエストがあれば教えてください!