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ドミノ・ピザの「中の人」に運用のコツを聞いたら、世の中のSNSマーケターが知らない本質が見えてきた

VAZ代表の森泰輝が、識者との対談を通じて「SNSマーケティングの真髄」を探っていく連載ブログ「森泰輝のSNS道場」。今回の対談相手は、ドミノ・ピザ公式Twitterの「中の人」、小山魁理さんです。

ドミノ・ピザのTwitterは、フォロワー数40万人超のモンスターアカウント。小山さんはフォロワー数10万人の時点からSNS運用を担当し、アカウントを急成長させています。一つのツイートがメディアにが取り上げられるなど、話題が尽きません。

小山さんに運用のコツを尋ねたところ、「組織への“啓蒙運動”が大切」という、興味深いお話を聞くことができました。その真相や、いかに……。

SNSは「見えにくいものが、見える場所」

森:SNS運用がうまい企業アカウントの研究をしていたところ、ドミノ・ピザさんのツイッターアカウントを発見しました。

フォロワー数は40万人を超えていて、アカウントの知名度は、もはや芸能人級です。今日は、運用のノウハウを聞かせていただきたいと思っています。小山さんはもともと、SNS運用を長く手がけていらっしゃったのでしょうか。

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小山 魁理(こやま かいり)/ 株式会社ドミノ・ピザ ジャパン DigitalMarketing Department, Social Media Manager
1992年埼玉県生まれ。2015年web広告代理店に入社。年間8億円以上の広告予算を管理するWebコンサルタント兼最年少営業課長として会社を約10倍の規模に成長させる。同社でGoogle Adwords Premier Partner Awards受賞の立役者。2018年株式会社ドミノ・ピザ ジャパン入社。Social media managerとして全てのSNSを統括。

小山:それが、ほとんど未経験だったのです。

前職はダイレクトマーケティングの会社に勤めていて、主にリスティング広告やSNS広告のコンサルタントをしていました。SNS広告のコンサルをしていたとはいえ、いわゆる“中の人”とは、業務の仕方も考え方も異なりますから、ほぼ未経験と言っても過言ではなかったと思います。

森:そうなんですね。では、SNSの「中の人」になった経緯について教えてください。

小山:まず、転職の経緯からお話しします。ダイレクトマーケティングの仕事をしているときに、お客さまの行動が「見えているようで、なにかが見えにくい」と感じたことが、ドミノ・ピザに入社するきっかけになりました。

森:どういうことでしょう……?

小山:ダイレクトマーケティングとは、たとえば「CPA」や「CVR」など、数字が明確に見える仕事です。つまり、お客さまがどのような購買行動をとっているのかが、データで可視化できます。

ただ、そのときにどんなことに興味を持って、どんな理由で商品を購入してくれたかまでは、正確に把握することができません。あくまで、憶測に過ぎないのです。

森:たしかに、数字だけでは、顧客が何を求めていたのかを正確に知ることはできないですよね。

小山:おっしゃる通りです。私が感じていた「見えにくいもの」の正体は、数字には現れない「ユーザーインサイト」でした。

じゃあ、どうすればインサイトを掴めるのかを考えていた矢先、プライベートで利用していたSNSに可能性を感じたのです。

SNSユーザーには、ビジネスライクな投稿が多い人がいれば、奥様やお子さんの写真をよくアップする人もいます。もしくは、同一人物でも、投稿するSNSによって内容が変わる人もいる。タイムラインを眺めながら、「SNSは、ユーザーのインサイトが見やすい場所だな」と思いました

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森 泰輝(もり たいき)/ 株式会社VAZ代表取締役社長
1990年和歌山県生まれ。2015年VAZを設立、数年で国内最大級のインフルエンサープロダクションとなる。 2019年に「Forbes 30 Under 30 Asia 」Media, Marketing & Advertising部門選出。

森:ダイレクトマーケティングの仕事をするなかで得た興味や疑問は、SNSを研究することで解明できると。

小山:はい。私にとってSNSは、その日以来「見えにくいものが、見える場所」になりました。

そこでSNSに興味を持ち、SNSマーケティングを仕事にできる会社を探していたところ、たまたまドミノ・ピザに出会ったのです。あの瞬間、一人のビジネスマンとして「ものすごくラッキーだったな」と今でも思っています。

小手先のテクニックではなく、“生の声”に頼る

森:ドミノ・ピザさんのツイートは、いつも高いエンゲージメントがあり、アクティブなフォロワーが付いている印象があります。新商品を紹介すると、あっという間に広がっていきますよね。

小山さんは、どのような方針でツイッターを運用されているのでしょうか。運用のコツについて、教えてください。

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小山:具体的なテクニックではありませんが、「お客さまにきっかけを与えること」を常々意識しています。

たとえば、ピザ一枚にしても、食べ方や食べるシチュエーションは無数にあります。日頃からピザの魅力を伝える方法を考えている“ピザのプロフェッショナル”として、お客さまに提案をおこない、「こんなこともできるんだ!」という楽しみを提供したいのです。

ただ、あくまで押し付けるのではなく、「お客様が今この瞬間どんなことを求めているか」を考え、きちんと寄り添って考えるようにしています。

森:「提案」でいうと、ニューヨーカー1キロウルトラチーズ(以下、ウルトラチーズ)の投稿が印象に残っています。公式アカウントが味変を提案していて、実践しているユーザーがたくさんいましたよね。

小山:ウルトラチーズの味変ツイートはまさに、私たちが考えるSNS運用のあり方を体現するものでした。実は、味変ツイートをするきっかけは、私のエゴサーチなんですよ。

森:そうなんですか!つまり元々は、味変する予定はなかった……?

小山:Twitterユーザーのみなさまからの声を聞き、どうすればその声に応えられるかを考えた結果そうなった、という感じです。

ウルトラチーズを2週間限定で発売していた際に、「美味しいけど、途中で味に飽きてしまう」というツイートを発見しました。そこで、フォロワーに味変の提案をしてみたのです。すると、たしかにニーズがあると分かりました。

その声を弊社のマーケティング責任者に報告したところ、「今度は味変を押し出して、ウルトラチーズを販売しよう」と戦略を決めたのです。

森:そんな背景があったのですね。まさに小山さんがおっしゃっていた、「見えないもの」が見え、それが施策につながっている。

小山:結果的に、ウルトラチーズは大ヒットし、お客さまの投稿も盛り上がっていました。

とにかくユーザーの“生の声”に真摯に向き合いたい、忌憚なきコメントをいただきたい、という気持ちを強く持っていたことが、フォロワーがついてくださったり、エンゲージメントをいただけた理由になっているのではないかと思います。

会社にメンバーに“SNS運用の価値”を理解してもらえたわけ

森:小山さんのお話を聞いていると、ドミノ・ピザの方はSNSに理解がありますよね。でも一般的には、SNSが持つパワーはまだまだ過小評価されています。「意味ないでしょ?」と、定常的なSNS運用について懐疑的な人も少なくありません。

小山:すごくよく分かります。ひょっとすると、私が入社以来おこなってきたアウトプットが役に立つかもしれません。ドミノ・ピザは以前よりSNSに理解のある会社ですが、現在は以前にも増してSNSの力を信じてくれるようになっているので。

森:そうなんですね。小山さんは、どうやってSNSが持つ価値を証明していったのでしょうか。

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小山:結論から申し上げると「売上をアップさせる」ことに尽きるのですが、どう売上に貢献したかを正確に測ることは難しいので、私はとにかくユーザーの反応を社内に説明していました。

リツイートやインプレッションの数などエンゲージメントの高さを報告することはもちろん、「こんなツイートをしたら、こういう反応が返ってきました」「ツイートを見る限り、こんなニーズがありそうです」と、SNSに詳しくない人でも興味を持ってもらえるアウトプットをし続けたのです。

森:まさに草の根運動で、SNS運用の価値を説明していたのですね。

小山:おっしゃる通りです。するといつしか、商品開発や全く違う部署のメンバーから「Twitterどんな感じ?」と話を聞きにきてくれるようになりました。これは本当に嬉しかったですね、ノリノリで報告してました(笑)。

地道に運用して、そこで得られた情報を社内にアウトプットをし続けたところ、「ユーザーインサイトが一番早く、一番多く集まっている場所」の認知を獲得することができたのです。

森:結果的に裁量権が大きくなり、予算も下りて、出せる価値の総量も増えていく。SNS運用の成功は、運用のテクニックだけでなく、組織への働きかけにもあるわけですね。……この話、めっちゃ面白いですね(笑)。

小山:Twitterの「中の人」には、アカウントの存在価値を会社に理解してもらうことを、諦めている人もいるのではないかと思っています。でも、草の根運動で変えていけることも少なくありません。実のところ、私がそうでしたから。

とても地道ですし、すぐに結果がでるとは限りませんが、動き続けることに価値はあります。私の場合、別部署とのコミュニケーションを取る機会になり、新しい視点を見つけるきっかけにもなりました。

プロモーション VS. 定常運用の結論

森:SNS運用に力を入れ始めてから、何か好影響はありましたか?

小山:ウルトラチーズがいい例ですが、「SNSが企業を大化けさせる」シーンを何度か目にすることができました

他にも、ユーザーとの接点が増え、商品開発のヒントが得られたり、メッセージを届けることができたり、いいことづくめだったなと思います。

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森:僕は誰もがSNSを利用する時代において、ペイド思考(テレビCMや新聞広告など有料媒体中心の宣伝広告)を脱さなければ、ユーザーを獲得できないと思っています。人々の可処分時間の使い道が分散しているので、テレビCMなど“打ち上げ花火”的な発想だけでは、マーケティングは成功しません。

その点ドミノ・ピザさんは、定常のコミュニケーションとプロモーションのバランスが絶妙だと感じています。小山さんはSNS時代のマーケティングについて、何か考えていることがありますか?

小山:実は、森さんと全くの同意見です。森さんのおっしゃる“打ち上げ花火”は、一時期的な波をつくることができても、継続的に波を起こすことができません。つまり、認知はしてもらえても、ファンにはなってもらえないのです。これはSNSに限らず、マーケティングおいて非常に重要な視点の一つです。

しかし、定常的なコミュニケーションありきでの“打ち上げ花火”なら、状況が変わってきます。既にあるアカウント(資産)が、プロモーションの後押しや、フォローアップに効くからです

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小山:TikTokの運用に初めて着手したときに、インフルエンサーさんに力を借りてプロモーションを打ちました。

ただ、それだけで終わってしまっては、それこそ”打ち上げ花火”になると思い、オーガニックでの運用も同時並行していました。すると、プロモーションをみてくれた方がフォロワーになってくれたり、公式アカウントにも多くのいいねとコメントをくださるようになったのです。

プロモーションを毛嫌いする人も少なくないですが、ドミノ・ピザのTikTokアカウントに寄せられるコメントは、その多くがこちらも楽しくなってしまうほど、素敵なコメントばかりです。

「親近感がある」「神対応」「TikTokみてすぐに注文した」といったコメントもあり、定常運用の重要性をひしひしと感じています。

「中の人」に求められる素養は、クリティカルシンキングと熱量

森:小山さんのお話を聞いていて、これだけ本質的な部分に踏み込んでSNSを運用しているマーケターはほとんどいないだろうな、と感じました。小山さんは、SNSの「中の人」に、どのような人が向いていると思いますか。

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小山:恐縮です、ありがとうございます。

私が考える「中の人」に向いている人は、端的に言うと「クリティカルシンキングができる人」です。クリティカルシンキングとは、感情や意見に流されることなく、客観的に物事を判断しようとする思考プロセス。要するに、物事を批判的に捉える視点です。

言葉の意味をそのまま解釈するとネガティブにも感じますが、むしろポジティブなもの。一つのツイートに対しても、「もっと良くするためには、どうしたらいいんだろう?」と楽しんで考えられる力です。

私のツイートで「今日はピザにしようかな」「そんな食べ方があったんだ!」という、ピザを食べる「きっかけ」をたった一人にでも伝えることができれば、それが広がっていく可能性がありますよね。そうやって小さな火種をつくり、その連鎖を起こしていくための工夫をできるかが、とても大事だと思います。

森:とにかく自社のサービスについて考え抜く「熱量」も大切になりそうですね。

小山:おっしゃる通りだと思います。朝起きても、昼に仕事をしていても、夜家に帰ってもピザのことを考えているくらいピザが好きだからこそ、SNS運用に本気になれているんだと思います。

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森:いやー、本当に面白いです。「テクニックはもちろん大切ですが、それよりも熱量が大事だし、組織にも目を向ける必要がある」という話は、世の中のSNSマーケターが知らない本質だなと思いました。

小山さんは今後、SNSの「中の人」として、どのような価値を発揮していきたいと考えていますか?

小山:まずはフォロワーの方に、投稿を楽しんでもらうことが第一です。そして、ピザをもっと身近な存在にしていきたいなと思っています。

ピザってイベントで食べる“機会食”のイメージがありますよね。友達を家に招いたときや、特別な日にデリバリーしていただいていると思います。

一方ピザが人気のアメリカでは、一人のユーザーが週に何度も注文しています。日本とは違い、日常食なのです。

日本でも、もっとピザが日常的なものになってくれたら嬉しいなと思っています。ピザを食べる回数が少し増えるだけでも、日本全体がそうなれば、ピザ市場に対して凄まじいインパクトがあります。そのきっかけを、SNSでつくりたいのです。

たとえばドミノ・ピザでは、毎週水曜日はMサイズのピザ3枚が2,400円で食べられます。お得な情報をTwitterで届け続ければ、ピザを気軽に食べてくれる人が増えるかもしれないですよね。

森:既存市場のパイを奪い合うのではなく、市場そのものを大きくすることを考えているのですね。そしてそのためには、人々の習慣を変える必要があり、習慣を変えるきっかけづくりは、SNSの得意領域であると。

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小山:その通りです。SNSに限らず、ドミノ・ピザで働くメンバーは全員「Hungry To Be Better(よくすることにハングリー)」の精神を持っています。

私もその一員として、SNSから、ピザのある暮らしを提案していきたいなと思っています。ピザを通して、皆さんの毎日がハッピーになってくれたら嬉しいです。

ドミノ・ピザ:公式TikTok
ドミノ・ピザ:公式ツイッター
TEXT BY オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース)

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エンターテイメントとインフルエンサーマーケティングの未来を創る株式会社VAZ代表取締役社長。アジアを代表する30歳以下のリーダー「Forbes Asia Under30」Media, Marketing & Advertising 部門選出。

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VAZ代表・森泰輝が、SNSマーケティングのプロフェッショナルとの対談を通じ、SNS時代のマーケティングについて考える連載です。

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