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米国銀行危機のいま個人も追随したい生保の投資行動

5月30日付日経新聞によると、保険会社はプライベートアセットへの投資を増やす方針を持っている。

#日経COMEMO #NIKKEI

米国の銀行破綻で商業不動産などにローンがつかなくなり、それらの資産価格が大きく下落するだろうとの見通しがある。不動産に限らず銀行貸し出しが絞られることによる影響は大きい。そのような状況の中で、第一生命の重本和之常務執行役員は「価格が下がっているいまこそ、リスクに配慮しつつ今後数年はリターンが出ない覚悟で仕込むタイミングだ」とコメントしている。筆者はこれこそ、個人投資家もこれから取り入れるべき態度ではないかと思うのである。その背景を説明する。

プライベートアセットは、上場株式と違って常に売り買いされているものでもなければ、価格が毎日動くものでもない。また現在誰かが保有しているプライベートアセットは、会計上、現在の市場環境に照らして妥当な価格で値付けされているとは限らない。機関投資家は財務上本当に厳しくなりキャッシュ化する必要が生じて初めて妥当な価格で評価し直すか、実際に売却できる価格で売却することも多い。
従って、現在のような下落環境になると少しずつジワジワと売り物がでる状況が長いこと続くことになると予想される。
一方でこれから新規で創出されるプライベートアセットは、新たな好条件で創出されるため、良いパフォーマンスが期待できる。

ただし、上場株でも同じだが、プライベートアセットもどの時点が底値かというのは後になってみないとわからない。ジワジワと売りに出されるアセットや、好条件になった新規アセットも、それが底値であるのかどうかは分からず、更に環境が悪化して価格が下落していく可能性は常にあるのだ。従って上記生保幹部の「今後数年はリターンが出ない覚悟で仕込む」という態度が正しいのである。

さてアセットには「本源的価値」がある。ここではそれを、投資家が最終的にいくらキャッシュで回収できるか、と定義しよう。分配金にせよ元本償還や売却額にせよ、投資家がそのアセットから最終的に回収できるキャッシュの総額が「本源的価値」であるとしよう。

単純に「本源的価値」よりも安く投資できれば投資は最終的に成功する(金利やインフレなどの影響を度外視すればだが。)。プライベートアセットはこれから「本源的価値」よりも安い水準で投資できる環境が来るのではないか。なぜなら銀行の貸し出しが大幅に減る為、やむにやまれぬアセットの売却や、銀行が差し押さえた担保アセットの売却などが豊富に出回り、キャッシュ保有者による買い手市場が到来するだろうからだ。また新規のアセット(例えば新規で貸し出されるローンなど)も本来よりも好条件で創出される環境が続くだろう。
その時点ではそれが底値とは限らないが、今後数年の間に継続的に仕込めば、最終的に儲かる可能性は高まっていると考えられるのである。