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金利のある世界になり起こること(投資の観点から)

日本ではもう随分のあいだ金利がほとんど無い世の中となっており、若い世代にとってはそれが当たり前であり、逆に金利がある世界がどのようなものなのかあまり想像することができない。その感覚で仕事や人生設計や投資を行っているのだが、もし金利がゼロではなくなったらどのような変化が起こりえるのかを、そろそろ考えてみるのは有意義だろう。ここでは特に投資や資産運用の観点での影響を説明したい。

金利が上がると何が変わるのか?それはお金を借りる側と貸す側との損得関係が変化することを意味する。世の中は多くのお金の貸し借りで成り立っている。例えば住宅の多くはお金を借りた人によって所有されており、銀行への預金は実質的に銀行にお金を貸していることになる。金利が上がると、直接的にはお金を貸す側が儲かり借りる側の負担が増えることになる。それがさらに間接的に様々な影響を及ぼす。

マクロ的にはお金を借りる人が減りお金の支出や投資が減ることで、ものの需要が減り値段が下がる(つまりインフレは抑えられる。これが金融政策として金利が上げられる主な目的だ。)。株式や不動産などの資産の価格も下げ方向と考えられる。その理由は一つに、銀行預金や債券投資などお金を貸して金利を得る種類の投資によるリターンが高まることで、株式や不動産などへのリスクの高い投資が相対的に見劣りし、債券系の投資に株式や不動産から資金が大きく振り分けられるからだ。また特に成長株(将来性を期待されて買われる会社の株)は一般的にお金を借りてビジネスの拡大を目指すことが多く、金利負担が増えることはマイナスに働く。同様に不動産も多くはお金を借りて保有される為、金利負担がネガティブとなる。(長期間固定金利で借りている場合は、直ちに影響を受けないが、満期を迎え借り換えるときに厳しくなる。)

つまり金利が上がると、お金を借りる側のエクイティ(株や不動産)に厳しく、お金を貸す側のデット(債券、貸付、預金)に有利と言える。ただし既存のデットの価値は、”固定金利の場合”下がってしまう。金利が上がったあと発行される債券は高い金利となる為、既存の低い金利の債券は価格が下がることで調整されるからだ。(変動金利の既存デットは金利が合わせて上がるので価格は下がらない。)
金利が上がってからのデットへの投資は高い利回りが得られる可能性が高まる。もちろん借り手側の負担が増えるということはデフォルトの可能性も増えるということであり、また全体的なボリュームも減ることにはなるが、金利が上がった後の世界では、総じてエクイティよりもデットへの投資の魅力が相対的に上がるのだ。

金利上昇は既に海外では起きており、日銀総裁が代わり金融政策が変化していく可能性がある中で、日本でも久々に金利のある世界が訪れるかもしれない。投資や資産運用についての今の議論やコンセンサスは金利がほぼない世の中で形成されてきたものであり、金利が上がった後には通用しなくなる可能性があることを念頭に置きたい。