スクガラス豆腐1つで頭が柔らかくなる話
「多様な視点を持てるようになりたい」
「頭が柔らかくなりたい」
誰しもが一度は「なんて自分は頭が固いんだ」と思ったことがあるだろう。最近、固い頭を柔らかくする方法を最近発見した。それは家族で食べたスクガラス豆腐にヒントがあった。
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先日、品川駅構内の駅ナカ物産展で沖縄特集が開催されていた。
ラフテーや沖縄そばといった加工食品から定番のちんすこう、サーターアンダギーのようなお菓子までバライティに富んでいて、数年前に家族でいった沖縄旅行を思い出すには十分すぎる食材が並んでいた。
その中でも私の目に入ったのはスクガラスだ。
「スク」とはアイゴという魚の稚魚のことであり、「カラス」は塩漬けのことである。
沖縄豆腐の上にスクガラスをのせた「スクガラス豆腐」は見た目のインパクトも相まって、視覚と味覚の双方で印象に残る沖縄料理の1つである。
私はスクガラスを購入した。
スクガラス豆腐を食べて少しでも沖縄気分に浸れば、コロナで鬱屈した気分が少しでも晴れるんじゃないかと考えた。
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スクガラス豆腐の調理は簡単だ。豆腐を切って上にスクガラスを盛り付ければそれで完成。家にあった豆腐を8等分にして、スクを8匹盛りつけた。
うん。美味しい。インパクトのある見た目で沖縄を思い出し、口に入れた瞬間に、沖縄にいるんじゃないかと錯覚する、、、というとさすがに言い過ぎだが、楽しい沖縄旅行を思い出すには十分であった。
その日以降、我が家の食卓にはスクガラス豆腐がよく並ぶ。
しかし、ある日のスクガラス豆腐はちょっと違った。豆腐が6等分でスクが6匹。
ちょっとした違和感を感じながら食べてみるとそこには沖縄はなく、スクガラスの塩味と豆腐の量のバランスが崩れた「うす塩豆腐」がいた。この違和感を起点に家族の他愛もない会話が進行する。
「6等分だとスクガラスに対して豆腐が勝っちゃって味気ない。」
「あっそう、、じゃぁ、豆腐を上下に切り分けて下の部分にもう1回スクガラスを盛りつけたらどう?」
それだと12等分になってスクガラスが勝ちそうだけど、まぁやってみるか。
ツルッとした豆腐の上にスクガラスが寝そべっていたが、上半分を箸で切った豆腐の表面は凸凹している。違和感がある。
「『なんだかいつもと違うぞ、ザラザラする。寝心地悪いなぁ。』ってスクが言ってるみたい。」と妻が言った。
「ザラザラする」なんてガンダムに登場するニュータイプが何かしらの敵意を感じた時に口にする表現みたいだなぁと思いつつも、ハッとした。
見えている世界がスク視点。主語がスクなのだ。
会話の主体が人間ではなく「スク(に憑依した人間)」なのである。何気ない会話の中で自然と主語変換、今風にカッコよく言うとSX(Subject Transformation)といったところか。
「多様な視点」とは主語を自由自在に変えられること
この会話の中でスク視点でスクの気持ちを語らなかったとしても何の問題もない。しかし、このように視点を自由に変えることは頭が固いとできない。
「やわらかい頭 作り方」「多角的 視点」とネット検索すればいくらでも頭の柔軟性を高める方法に関する記事は出てくる。しかし、そんなものを読んでいる人がとても頭の柔らかい人になれるとは思えない。
そんな記事を読む暇があるのであれば、スクガラス豆腐の上のスクの気持ちになってみて何か言ってみれば十分じゃないか。もちろん「ミミガー」の豚でも「山羊汁」のヤギでもいい。強制的に主語を変えることによって多様な視点はいくらでも鍛えることができる。
「固い頭をやわらかくする方法」は、日常生活の中にいくらでも転がっていたのであった。
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