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末寺の末事 59

 努力は好きだ。特に報われるヤツ。見込みだけでもあると良い。しかし、ない。

 誰かが代表して字を書かなければならないとする。誰かが言う。「彼はお坊さんだから、字が上手いよ。彼に頼もう。」と、みんなが同意する。僕は申し訳ないほど字が下手くそなことを伝えて、自信がないと正直に断る。それでも「そんなはずはない。」と突っぱねられる。みんなも「そうだ、そうだ。」と同調する。とうとう断りきれずに渋々ながら字を書く。当然とても残念な仕上りになる。それを全員で眺めて失言する。「だから嫌だと言ったじゃないか。」僕は心の中でそう呟いて顔を伏せる。

 こういう気持ち悪さも、慣れる。何とも感じなくなる。「あ、またか。」みたいになってゆく。痛みは初めのうちだけ、慣れてしまえば大丈夫。ヒットラーみたいになってしまうのかもしれない。

 『かわいそう』な自分を認めるだけ、何かが歪んでゆく気がした。

to be continued



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